炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ディケイドSS】密林から来た凄い奴【アマゾン編】

  カキ―――――――――――――ンンンンン……


 高い、高い空。

 澄み切った秋の青空に、はじかれた白球が吸い込まれていく。


「やったあ!」

 バッターボックスでガッツポーズを決める弟が、監督から「早く走れー!」と怒声を浴びせられ、あわてて走り出す。

「…ふふ」

 その様子を見て、傍らに立つユニフォーム姿の青年が穏やかな笑みを浮かべる。

 彼の名は、アマゾン。


 この“世界”の、<仮面ライダー>だ。




   仮面ライダーディケイド/A.R.WORLD STORYS
   EPISODE:AMAZON-密林から来た凄い奴-




「マサヒコ!」
「アマゾン!」

 声をかけられたマサヒコが、ぱあっと明るい表情をみせて駆け寄る。

「さっきのホームラン、すごかった。マサヒコ、つよい!」
「えへへ…」

 手放しでマサヒコをほめるアマゾンに、マサヒコは照れ笑いを浮かべて鼻の頭を擦る。
 その表情は、かつて大ショッカースクールにいたときのものではなく、年相応の男の子のものだ。

「来てくれたんだね」
「もちろん。アマゾン、ヤクソクした」

 そう言って、手の指を組み合わせて、マサヒコに向ける。

「アマゾン、マサヒコ、トモダチ」
「うん、トモダチ!」

 マサヒコもまねして、「トモダチ」のサインが二つになる。

「私も混ぜてよ」

 そして、私もまねして、三つになった。

「ウン、アマゾン、マサヒコ、リツコサン、トモダチ」


 ・
 ・
 ・


 通りすがりの仮面ライダー…そう名乗ったあの人と、ともに戦ったアマゾンの活躍で、十面鬼ユム・キミルは倒れ、彼が率いるゲドンは壊滅。
 同時に、大ショッカーもいつしかいなくなり、この世界には平和が戻った。

 しかし、大ショッカーによって、人の心に根付いた疑いの心は未だ晴れていない。

 だから最初は、いくらマサヒコとの約束だからといって、アマゾンにうかつに外に出るのはどうかと苦言を呈したのだが……

 それでもと言い張るアマゾンに、私は以前父が着ていたユニフォームと野球帽を貸し、帽子を目深にかぶせて、その顔を隠させたのだ。


「……あ、スリーチェンジアウトね。次は守備よ、いってらっしゃい、マサヒコ」
「うん」

 バットからグローブに持ち替え、マサヒコがグラウンドに走る。


   きゃあああああっ!!!


 と、観戦者たちの中から悲鳴が響いた。

「な、何?」

 私が気づくよりも早く、アマゾンが飛び出す。

 逃げ惑う人々をかきわけ、現れたのは……

「怪人!?」

 そんな…ゲドンも大ショッカーもいなくなったはずなのに……


「我らは、<ガランダー帝国>! 十面鬼は斃れた! これからは、我々がこの世界を制するのだ!!!」

 高らかと宣言する怪人。人々の間に戦慄が走る。


「そんなこと、させない!」


 そんな中、マウンドに立ったアマゾンが叫んだ。
 野球帽とユニフォームを脱ぎ捨て、いつものスタイルに戻る。


「あ…あれ……」

「ライダーだ…仮面ライダーだ…」


 ざわざわと周囲が喧しくなる。今でも、この世界のほとんどの住人にとって、<仮面ライダー>は畏怖の対象なのだ。


「ガランダー帝国! アマゾンいる限り、この<世界>、好きにさせないっ!!!」

 かっ、と見開かれた瞳が、真紅に染まる。




「アァァァ…マァァァァ…ゾォォォォォォォンン!!!」





 その“身”が―――“変”わる。


 <強くてハダカで強い奴>仮面ライダーアマゾンへと。



 アマゾンは、戦う。


 たとえ、誰も彼を支持しなくとも。


 いや、たった二人…私たち姉弟だけでも。

 彼を思う人がいる限り、彼は、きっと戦い続けるだろう。

 <トモダチ>を。

 <トモダチ>がいる、この“世界”を……守るために。


「ケケ――――――ッ!」


 雄叫びが響き、アマゾンが怪人に飛び掛った。




   -fin-



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 ディケイドSSシリーズ。今回はアマゾン編。
 見直すと、演じるエンリケ氏のたどたどしい台詞回しも、なんか「らしく」感じてしまうから不思議だw

 タイトルは、オリジンのアマゾンの1話サブタイから。キャッチコピーはディケイド29話サブタイからそれぞれ拝借。

 ちなみに、後者も元ネタがあって、オリジンの3話「強くてハダカで速い奴!」からの模様。

 さて、ガランダーとの戦いが始まってしまった<アマゾンの世界>はどうなるのか……

 きっと大丈夫! ぼくらのトモダチ、アマゾンがいるからね!