カキ―――――――――――――ンンンンン……
高い、高い空。
澄み切った秋の青空に、はじかれた白球が吸い込まれていく。
「やったあ!」
バッターボックスでガッツポーズを決める弟が、監督から「早く走れー!」と怒声を浴びせられ、あわてて走り出す。
「…ふふ」
その様子を見て、傍らに立つユニフォーム姿の青年が穏やかな笑みを浮かべる。
彼の名は、アマゾン。
この“世界”の、<仮面ライダー>だ。
「マサヒコ!」
「アマゾン!」
「アマゾン!」
声をかけられたマサヒコが、ぱあっと明るい表情をみせて駆け寄る。
「さっきのホームラン、すごかった。マサヒコ、つよい!」
「えへへ…」
「えへへ…」
手放しでマサヒコをほめるアマゾンに、マサヒコは照れ笑いを浮かべて鼻の頭を擦る。
その表情は、かつて大ショッカースクールにいたときのものではなく、年相応の男の子のものだ。
その表情は、かつて大ショッカースクールにいたときのものではなく、年相応の男の子のものだ。
「来てくれたんだね」
「もちろん。アマゾン、ヤクソクした」
「もちろん。アマゾン、ヤクソクした」
そう言って、手の指を組み合わせて、マサヒコに向ける。
「アマゾン、マサヒコ、トモダチ」
「うん、トモダチ!」
「うん、トモダチ!」
マサヒコもまねして、「トモダチ」のサインが二つになる。
「私も混ぜてよ」
そして、私もまねして、三つになった。
「ウン、アマゾン、マサヒコ、リツコサン、トモダチ」
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しかし、大ショッカーによって、人の心に根付いた疑いの心は未だ晴れていない。
だから最初は、いくらマサヒコとの約束だからといって、アマゾンにうかつに外に出るのはどうかと苦言を呈したのだが……
それでもと言い張るアマゾンに、私は以前父が着ていたユニフォームと野球帽を貸し、帽子を目深にかぶせて、その顔を隠させたのだ。
「……あ、スリーチェンジアウトね。次は守備よ、いってらっしゃい、マサヒコ」
「うん」
「うん」
バットからグローブに持ち替え、マサヒコがグラウンドに走る。
きゃあああああっ!!!
と、観戦者たちの中から悲鳴が響いた。
「な、何?」
私が気づくよりも早く、アマゾンが飛び出す。
逃げ惑う人々をかきわけ、現れたのは……
「怪人!?」
そんな…ゲドンも大ショッカーもいなくなったはずなのに……
「我らは、<ガランダー帝国>! 十面鬼は斃れた! これからは、我々がこの世界を制するのだ!!!」
高らかと宣言する怪人。人々の間に戦慄が走る。
「そんなこと、させない!」
そんな中、マウンドに立ったアマゾンが叫んだ。
野球帽とユニフォームを脱ぎ捨て、いつものスタイルに戻る。
野球帽とユニフォームを脱ぎ捨て、いつものスタイルに戻る。
「あ…あれ……」
「ライダーだ…仮面ライダーだ…」
ざわざわと周囲が喧しくなる。今でも、この世界のほとんどの住人にとって、<仮面ライダー>は畏怖の対象なのだ。
「ガランダー帝国! アマゾンいる限り、この<世界>、好きにさせないっ!!!」
かっ、と見開かれた瞳が、真紅に染まる。
「アァァァ…マァァァァ…ゾォォォォォォォンン!!!」
その“身”が―――“変”わる。
<強くてハダカで強い奴>仮面ライダーアマゾンへと。
アマゾンは、戦う。
たとえ、誰も彼を支持しなくとも。
いや、たった二人…私たち姉弟だけでも。
彼を思う人がいる限り、彼は、きっと戦い続けるだろう。
<トモダチ>を。
<トモダチ>がいる、この“世界”を……守るために。
「ケケ――――――ッ!」
雄叫びが響き、アマゾンが怪人に飛び掛った。
-fin-
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タイトルは、オリジンのアマゾンの1話サブタイから。キャッチコピーはディケイド29話サブタイからそれぞれ拝借。
ちなみに、後者も元ネタがあって、オリジンの3話「強くてハダカで速い奴!」からの模様。
さて、ガランダーとの戦いが始まってしまった<アマゾンの世界>はどうなるのか……
きっと大丈夫! ぼくらのトモダチ、アマゾンがいるからね!