生い茂った無数の植物が大地を埋め尽くす。
空は青く青く澄んで、どこまでも高く。
さわやかな風と溶け合うように流れ進む川原で、小さく回る水の音。
「……ふぅっ、これで終わりっと」
ぐっと絞った布をぱっと開くと、それを背中のかごに放り込む。
「さぁ、早く干して帰らないと」
すっくと立ち上がり、青空を仰ぐ。
天下泰平、世はこともなし。
ここは“もうひとつの地球”ダイノアース。
洗濯をしていた“彼”の名は……アスカ。
かつて<エヴォリアン>の侵略から、異次元の地球・アナザーアースを、仲間たちとともに守った、黒き竜人の戦士である。
BEGINNING to REGENDWAR
Episode:ABARANGER/アバレ次元を突破せよ!
「……どうしたんだい、ミコト?」
帰宅したアスカが、様子のおかしい愛娘に声をかける。
妻・マホロとの間に生まれた第1子は、ともに戦い、散った<仲間>から名前をもらい、すくすくと成長していた。
「変なの。何か変なの。次元の向こうで、何かが起こってる気がするのに、身体がぞわぞわってなって、うまく“ちから”が使えないの」
ミコトは、以前その身体を、エヴォリアンに利用され、次元を超える能力を持つ<黎明の使途>となっていた。その時の力はまだ残っており、アナザーアースの危機に発動したこともあった。
「そうか……。あの時から随分時が経ってしまっているからな。ミコトも、普通の女の子に戻ろうとしているんだよ」
邪命因子に冒された娘が元に戻ろうとしているのは父としては嬉しいことだが、彼女の口から語られた、次元の向こう……つまりアナザーアースの動向が気になる。エヴォリアンが滅びても、なおアナザーアースを狙う悪が居るのか。
憤りが、知らずアスカの拳を握らせる。
「私も彼らの力になりたい……!」
「でもどうするの? ミコトが力を使えないんじゃ、アナザーアースには……」
マホロのもっともな発言に、うぅ……と言葉を濁す。もどかしさが身体を巡り、アスカはどうしたものかと頭をかいた。
と、その時だ。
大きな音とともに強烈な揺れが、アスカの家を震わせた。
「!?」
よろけたミコトを寸ででかばい、アスカはコマンダー越しに相棒を呼ぶ。
「どうした、何があったブラキオ!?」
『むぅ……なにやら妙な奴が出てきたブラ』
アスカ家の裏山から、ぬっと首を出す爆竜ブラキオサウルス。その身体に跳び乗り目を凝らしたアスカは、立ち込める砂煙の奥から光るものを見た。
「なんだアレは、爆竜!?」
『いや違う。似ているが、あれは爆流ではないブラ』
空気を震わせる咆哮と、吹き上がる水蒸気。いつか、アナザーアースにあると聞いた、機関車によく似た音だ。
轟音とともに現れたのは、3両連結の機関車……ではなく。
アスカは知る由も無かったが、アナザーアースともダイノアースとも違う<異次元>に生きる、<炎神>と呼ばれる生き物であった。
『ふむ……』
炎神の吼え声に耳を傾け、ブラキオが深く頷く。
「なんだって、ブラキオ?」
『自分たちは<古代炎神>のキシャモス、ティライン、ケラインだと名乗っているブラ』
ブラキオの言葉に、そうだ、と頷く……ようにみえる3体の古代炎神。
「その古代炎神がダイノアースに何の用ですか?」
言葉こそ介さないものの、爆竜とおなじく悪しくないものだと察したアスカが、キシャモスたちに問う。
『ヒューマンワールド……? ああ、アナザーアースのことブラか。……むっ!?』
「どうした?」
『アスカ、ミコトの懸念が当たっていたようだ』
ブラキオの翻訳によると、アナザーアース……キシャモスたちは<ヒューマンワールド>と呼称していた……が、<ザンギャック>なる宇宙帝国の侵略を受けているとのことであった。
アスカの戦友であるアバレンジャーや、その先輩、後輩らが一同に介し、戦いを繰り広げているという。
「なるほど……私や、爆竜たちの力も必要なのですね?」
大きく頷くアスカ。
「そうみたいだな……まさか三途の川の底から俺まで引っ張り出すとは思わなかったが」
不意に、キシャモスから人の声がした。その“聞き覚えのある”声に、アスカの眼が驚愕に三平刈られる。
「その声……あなたは!」
キシャモスの頭の上で、「よう」と不敵な笑みを見せたのは……
「壬琴さんっ!?」
「こいつらの言ってることは本当だ。アスカ、俺たちも行くぞ」
俺はどうでもいいんだが……と嘯きながらも、その眼は力強く光る。
あの時――最初で最後の<5人のアバレンジャー>として揃ったときの、ギラギラと熱いダイノガッツは、未だ健在であった。
『アスカ!』
「ええ、行きましょう! ブラキオ、他の爆竜たちを!」
『もうとっくに揃ってるッテラ!!』
ブラキオの腹から、爆竜ティラノサウルスの赤い咆哮が響く。超ハンガー進化したブラキオの体内で、彼を含む8体の爆竜が、思い思いに叫び、ブラキオの身体を駆け回る。
『落ち着くブラ!』
久しぶりに大所帯になった体内に向けて一喝するブラキオ。戦場となっているであろうアナザーアースへ向け、爆竜たちは闘志を、ダイノガッツを高めていた。
『キシャモス、こちらの準備は整ったブラ。いつでも行ける……アナザーアースへ!!!』
アナザーアースへ!
仲間たちのもとへ!!
アスカの、壬琴の、爆竜たちのダイノガッツが光を帯びる。その力をキシャモスが鼻いっぱいに吸い込むと、連結した古代炎神の身体もダイノガッツの燐光に包まれた。
「おとうさーん!」
キシャモスに乗り移るアスカに、精一杯の大声を張り上げて娘が声をかける。
「いってらっしゃーい! きをつけてねーっ!!!」
「ああ、行ってくるよ、ミコト!!!」
娘の名を聞いて、壬琴が目を丸くする。
「お、お前、俺の名前を……」
アスカが照れくさそうに笑う。キシャモスの汽笛がダイノアース中に響き渡り――
次元の壁を一気に突きぬけ、アスカたちはアナザーアースへと旅立った。
「……負けないで、アスカ」
見えなくなった父を、目を凝らして見送る娘の肩をそっと抱き寄せて、マホロが小さく呟いた。
-It continues to the LEGEND WAR-
メインはアバレなのでこのタイトルです。
ゴーオンジャー原典において、すでに11全てのプレーンワールドが出揃ってしまってるので、その中の一部、というわけにはいかなかったのですが、たぶんこいつらなら問答無用で突っ込んできてくれると信じてキシャモス達を出張らせてきましたw ゴーオン組はノリで無理を通して道理を蹴飛ばせる奴らだと思いますのでw
それゆえの壬琴先生の登場というのもあります。
レジェンド大戦において、戦死したメンバーがしれっと登場していることへの、ひとつの回答案、ということにしておいてください(何
ホントはネタで「エンジェルワールドからつれてきた」ってやりたかったんですが、アレはあくまで走輔の妄想なので却下(ちなみに、もちろん11のプレーンワールドには入ってませんw)
さて、脳内に残るレジェンド大戦ネタは、マジレンとカーレン。
昨日2本つったじゃねーかって? カーレン案をすっかり忘れてましたすんませんw
ともあれ、おたのしみに~