炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

EP:01/シーン03

 ―――国際救急軍・IRFは各国に支部を設けているが、一部を除き、原則としてその支部施設は一国につき一つきりとなっている。

 しかし、日本には超例外的にもうひとつ、支部が存在し、その支部が擁するチームがあった。


 ユウキがキャンプ場へ向かうことを決意する、少し前。
 その“もうひとつの”国際救急軍日本支部では、ちょっとした騒動が持ち上がっていた…。


「…ヒマねぇ」
 ブリーフィングルームの指令席で、茶髪の女性が溜息混じりに呟いた。
「ヒマってコトは平和ってことだからいいじゃないですかぁ?」
 はい、とお茶の入った湯のみを指令席に置き、長い前髪つきのボブカットの女性が朗らかに言う。
 その目元は前髪に隠れて性格には読み取りがたいが、緩やかに結ばれた口元からは柔和な印象が伺える。
「そりゃ、そーだけど。仮に仕事あってもこっちに回ってこないんじゃ結局ヒマじゃない。お陰であたし達税金ドロボー呼ばわりよ?」
 そんなに給料もらってないっつーの!
 大いにボヤいたのち、指令席の女性は入れてもらったお茶をすする。
「んー、おいし☆ やっぱチアキちゃんの入れてくれる梅昆布茶は格別だわね~」
 ブーたれた表情をほわんと崩す彼女に、チアキと呼ばれた女性は口元を押さえて奥ゆかしく笑いながら自身の仕事場であるオペレーター席に戻る。

「チーフ、緊急事態です!」
 ほのぼのした空気が、凛とした声に切り裂かれた。
「どうしたの、サヨちゃん?」
「ちゃんづけで呼ばないで下さいっ。…って、そんなことより!」
 サヨと呼ばれた黒髪の女性は、手に握ったハンディリモコンをセンターモニターに向けた。

「な…なにこれ!?」
 それは数分前の、隕石落着の瞬間の映像であった。
「見たまま、です。1402時、超高々度からの高質量物体…すなわち、隕石がI市のキャンプ場に激突。現在、キャンプ場利用客及び近隣住民の避難が行われているわ」
「ちょっ、サヨちゃん! そんな淡々と言ってる場合じゃないでしょうがっ。…うん、人手が要るわね。私達も出ましょう!」

『その必要はない』

 ブリーフィングルームを飛び出そうとした女性…チーフと呼ばれた…は突然流れた声に足を止める。

「…どういう意味でしょうか、総監?」
 いつの間にかセンターモニターは、小太りの中年男性の姿を映していた。
『既に日本支部専属の特捜救急部隊・D.R.A.G.O.N.が出動済みだ。君たちが出る必要などないのだよ』
「ご冗談でしょう? D.R.A.G.O.N.のメンバーだけでまかなえるほどの災害規模じゃないのは誰の目から見ても明らかですよ!?」
『充分事足りるよ。君は彼らを過小評価しているようだね、オウカ・サクラコ君』
 チーフ…サクラコはバンッ、と机を叩く。
「私だってプロフェッショナルの端くれです。彼らがエキスパートだと言うのは重々承知の上です。だからこそ、その彼らだけでもカバーしきれない事態だと―――」
『決定事項だ。兎に角、君達を出動させることは出来ない。大人しくそこで待機していたまえ』
 総監と呼ばれた男は溜息混じりにそう言うと、
『ああ、そうそう。悪いが総監権限でブリーフィングルームのロックをかけさせてもらったよ。君たちが変な動きをしないようにね』
 と言い残し、通信を切った。

「…とても組織の上に立つ人間とは思えませんね」
 サヨが呆れたように呟く。
「あ…ンのタヌキオヤジぃ……」
 怒り心頭とばかりに拳を握り締めるサクラコ。
「…どうします、サクラコさん?」
 チアキの問いに、サクラコは憮然としながら答えた。
「どーするもこーするも、動けないんじゃしょーがないわ。待機よ待機っ」
 湯飲みに残っていた梅昆布茶を一気に飲み干す。幾分高ぶったテンションを押さえ込むように、どっかと椅子に腰掛けた。
「…どーなったって、知らないからね……!」




 -つづく-


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まだこの時点で全員じゃないですが、こちらが本作のメインとなる防衛チームですよ。
何度も言ってますが、全員女性です。ソレなんてギャルゲ?(ぉ

このシーンはちょっと難産だったなァ…
要精進、だなや。