ベルトに取り付けられた小型ツールボックスから、コアシューター用のカートリッジを取り出す。
金属端子が露出し、分かりやすく稲妻を模したアイコンがついたそれは、スタン・ガンカートリッジだ。
「アナライズ、ロックオンモード」
パイロットが装着しているヘルメットのバイザーはヘッドマウントディスプレイとしての機能も有している。シンジロウはロックオンスコープを呼び出し、射撃のサポートに回す。
「…距離算出、誤差修正……オールグリーン」
コアシューターを怪獣に向け、照準を合わせる。
「準備はいいな、コウイチ?」
『はい!』
はっきりと肯定を示すコウイチの声にシンジロウは小さく頷く。
「ターゲット・インサイト…喰らいやがれッ!!!」
トリガーを引いた瞬間、スタン・ガンカートリッジの端子から電撃特有の青白い光が迸る。と同時にその電光が吸い寄せられるように怪獣に向けて飛んで行った。
『嘘ぉっ!?』
イオリも予期していなかったのか目を丸くする。
光線銃としては少々力不足の上にスピードも遅い。が、怪獣に当てるだけなら充分だった。
パシィッ
乾いた音が響き、超高電圧から放たれた衝撃が怪獣の頬を打つ。
グルゥゥゥ…
衝撃を受けた怪獣の頭が、それを放ったシンジロウの方へ向けられる。
「今だ、コウイチぃぃぃぃぃ!!!」
あらん限りの大声で叫ぶシンジロウ。
「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
スラスターを吹かし、シルエットフォースが一気に怪獣に近づく。接近に気付いた怪獣が頭を向けなおしたとき、機体は既に射程エリアを外れていた。
「遅いッ!」
シルエットフォースのマニュピレーターが大きく振りかぶられ、持っていたロケットランチャーを高々と掲げる。
「おりゃあああああああっ!」
ガシャアアアアン!!!
ポカンと空いていた怪獣の口めがけ、ロケットランチャーを盛大に叩きつける。たちまち口の中でひしゃげ、むき出しになったフレームが突き刺さる。
「もう…いっちょおっ!」
とどめとばかりにミサイルを至近距離で放つ。口内で炸裂するミサイルとロケットランチャーに、怪獣は断末魔とも思えるほどの咆哮をあげた。
「よおっし、うまくいっ…おあっちゃ!」
ガッツポーズを決めかけたシンジロウの右手から炸裂音が響いた。ムリな運用がたたったのかコアシューターが破裂したのだ。
「…ふうっ、我ながら無茶したけど、シンジロウさんも相当なもんだよな。スタンユニットを攻撃用に改造するなんて…」
半分感心、半分呆れ混じりにコウイチが呟く。
「さて…」
その場を離脱しつつ、悶絶する怪獣の様子を見る。
「エドさん、アルさん。一旦オーシャン・ベースに戻って補給を受けてください」
『って、お前はどーすんだよ?』
エドワードの問いに、コウイチは一呼吸置いて答えた。
「ここで怪獣の足止めをします」
『なんだってぇ?』
『危険だ。真空刃の脅威はなくなったとはいえ、1機だけで囮など…』
エドワードとアルベルト、二人がかりで止められるコウイチだが、首を振ってそれらを拒否する。
「どっちにしたって、攻撃できなきゃ怪獣は倒せません。そして今、一番ヤツに効果的な攻撃を加えられるとすれば、それはエドさんとアルさんなんです」
『しかし…』
「大丈夫。こちとらGCSの扱いなら誰にも負けないつもりです。むざむざ落とされはしませんよ」
お願いします、戻ってください!
コウイチの説得に、やがてエドが折れる。
『オーケイ、わかったぜ』
『エドワード隊員…!』
『コウイチが…俺たちの仲間ができるっつってんだ。信じようぜ』
『…そうだな。了解した』
アルベルトも納得し、2機のファイターフォースは機体を反転させる。
『じゃ、ちょっくら行って来るぜ』
『くれぐれも、無茶はするな』
「了解ッ」
コウイチのくだけた敬礼ポーズを見届け、二人はオーシャン・ベースへと進路を向けた。
『コウイチくん、気をつけて! 怪獣から高エネルギー反応!』
「えっ!?」
イズミからの通信が飛び、コウイチの視線が怪獣に集中する。
ボシュウッ!
重く鈍い音がしたと同時に、薄暗い球形が、シルエットフォースめがけ飛んで来た。
-つづく-
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口を封じただけでイコール攻撃手段が封じれたなら、苦労はしませんってことです(何