「―――そして、件の怪獣についてですが、破片を回収したところ、調査班の目の前ではじけるようにして消えてしまったとのことです」
「…消えた、だって?」
ブリーフィングルームでは、先刻の怪獣の一件をまとめたレポートの確認が行われていた。
「はい。また、消失の際に強烈な気圧の変化を観測したとの報告も来ています。このことから調査班は、怪獣は、台風のエネルギーが実体を持ったものではないか、という推測を立てています。
イズミが朗読する報告書の内容に、ロバートが腕組みをして唸る。
「なんとも荒唐無稽な話だな……」
「そうですね。ですが、嘘は書かれていません」
「だから余計にリアクションに困るのさ」
オーバーアクションで肩をすくめてみせ、ロバートが呟いた。その姿にクス、と笑みをこぼすイズミ。
「そうですね。ですが、嘘は書かれていません」
「だから余計にリアクションに困るのさ」
オーバーアクションで肩をすくめてみせ、ロバートが呟いた。その姿にクス、と笑みをこぼすイズミ。
「セガワ・コウイチ、入ります!」
と、自動ドアーが開き、敬礼をしたコウイチが姿をみせる。
「やぁ。体は大丈夫かい?
ロバートの問いかけに、コウイチはええ、とうなづく。
「ドクターのお墨付きですよ。心身ともに異常なしだそうです」
「そうか、それはなによりだ。…まぁ、念のために、今日一日君はオフだ。ゆっくり休むといい」
はい、と再び敬礼するコウイチ。と、その視線がブリーフィングルームのメインモニターに移る。
ロバートの問いかけに、コウイチはええ、とうなづく。
「ドクターのお墨付きですよ。心身ともに異常なしだそうです」
「そうか、それはなによりだ。…まぁ、念のために、今日一日君はオフだ。ゆっくり休むといい」
はい、と再び敬礼するコウイチ。と、その視線がブリーフィングルームのメインモニターに移る。
「…あ、もう資料ができたんですね」
「ああ。今後、似たような事態が起きないとも限らんからな。このデータを上層部に送って、こちらの設備強化を頼むところさ」
「ああ。今後、似たような事態が起きないとも限らんからな。このデータを上層部に送って、こちらの設備強化を頼むところさ」
イズミの席のコンソールを借り、いくつか画面を切り替える。と、その中に怪獣と巨人が対峙している画像データがあった。
「ところで、怪獣と巨人が戦っている間、君は行方不明だったんだが…その間のことは、何か憶えていないか?」
「ええと…」
コウイチが、思わず言葉に詰まる。
憶えているかと問われれば、それはYESだ。しかし、「自分がその巨人になって、怪獣と戦っていた」なんて言ったところで夢物語扱いされるのがオチだろう。
「ええと…」
コウイチが、思わず言葉に詰まる。
憶えているかと問われれば、それはYESだ。しかし、「自分がその巨人になって、怪獣と戦っていた」なんて言ったところで夢物語扱いされるのがオチだろう。
「…そうですね。シルエットフォースが飛べなくなって、ヤバイ!って時に…たぶん、ちゃくすいするかしないかくらいの時だと思うんですけど…」
「目の前がぱぁっと明るくなって。…そう、こんな感じで」
コンソールのキィを叩く。巨人が、今まさに怪獣にとどめの一撃を叩き込もうとしている画像データだ。
「これくらい眩しい光…っていうか、閃光?…に包まれて…気が付いたら、海にぷかぷか浮かんでました」
巨人になっていたところは端折ったものの、大体において嘘ではない。
コウイチ本人、あれはただの夢だったのかもしれない、と思ってもいた。
だが、それにしては残っている記憶は生々しすぎるし、いつの間にか身に着けていたブレスレットや指輪はなんなのだろうか。
コウイチ本人、あれはただの夢だったのかもしれない、と思ってもいた。
だが、それにしては残っている記憶は生々しすぎるし、いつの間にか身に着けていたブレスレットや指輪はなんなのだろうか。
「…どうした、コウイチ?」
と、思考に沈んでいるのをロバートが怪訝そうに見つめていた」
「あぁ、いや別に……あ、そういえば、この怪獣と巨人…名前とかつけたんですか?」
咄嗟に話題を変えてみる。
「名前?」
「ええ。いつまでも“怪獣”とか“巨人”とか呼ぶわけにも行かないんじゃないです?」
コウイチの指摘に、そういえばそうだな、とロバート。
「ああ、怪獣についてはすでにアーカイブコードは決まっていますよ」
イズミがデータを呼び出す。怪獣の3DCGモデルが浮かび上がり、名前と簡単な説明がウィンドウ表示された。
と、思考に沈んでいるのをロバートが怪訝そうに見つめていた」
「あぁ、いや別に……あ、そういえば、この怪獣と巨人…名前とかつけたんですか?」
咄嗟に話題を変えてみる。
「名前?」
「ええ。いつまでも“怪獣”とか“巨人”とか呼ぶわけにも行かないんじゃないです?」
コウイチの指摘に、そういえばそうだな、とロバート。
「ああ、怪獣についてはすでにアーカイブコードは決まっていますよ」
イズミがデータを呼び出す。怪獣の3DCGモデルが浮かび上がり、名前と簡単な説明がウィンドウ表示された。
「<デュポーン>…なるほど。ギリシア神話の魔神の名前からか」
感心したようにロバートが何度もうなづいた。
「巨人のほうは?」
「それがまだ決まってないのよね。やれ<レッドマン>だの<ベムラー>だのって意見が飛び交ってて」
ため息をつきながらイズミがそう言った。
「それなら…」
「<ウルトラマン>ってなどーだ?」
感心したようにロバートが何度もうなづいた。
「巨人のほうは?」
「それがまだ決まってないのよね。やれ<レッドマン>だの<ベムラー>だのって意見が飛び交ってて」
ため息をつきながらイズミがそう言った。
「それなら…」
「<ウルトラマン>ってなどーだ?」
と、口を開こうとしたコウイチをさえぎるように野太い声がした。
「あ、シンジロウさん」
「よう。もう体はいいのかよ?」
両腕で力こぶをつくり、健康をアピールしてみせる。そのコウイチの様子にそうか、と笑い、再びロバートの方へと向き直った。
「<ウルトラマン>?」
「ああ。俺がガキの時分にテレビでやってた特撮モンでな。銀色の巨人…そいつは宇宙人で、地球人の体を借りてるって設定なんだが…まぁそいつが、怪獣やら悪の宇宙人を倒していく、ってな内容だ」
コウイチもそれは知っていた。馴染みは薄いが、再放送かなにかで1、2度見たような記憶がある。
「そのウルトラマンに、その巨人がそっくりでよ。思わずテレビから出てきたのかと思っちまったぜ」
微苦笑するシンジロウ。ロバートがふむ、と腕組みした。
「<ウルトラマン>…か、悪くないが……なんかこう、物足りないな」
「…あ、だったら」
口を開くコウイチが、再び先ほどの、巨人の攻撃の瞬間を捉えた画像を呼び出す。
「<スパーク>…なんてどうですか?」
巨人の手に集まる煌々とした光。観測の結果、太陽光と同等か、それ以上の照度であるとされているらしい。
「<スパーク>…閃光、か」
「はい。巨人が現れたときとか、この、怪獣を倒すときにぱぁって光ってるじゃないですか。だから…<スパーク>。<ウルトラマンスパーク>」
「よう。もう体はいいのかよ?」
両腕で力こぶをつくり、健康をアピールしてみせる。そのコウイチの様子にそうか、と笑い、再びロバートの方へと向き直った。
「<ウルトラマン>?」
「ああ。俺がガキの時分にテレビでやってた特撮モンでな。銀色の巨人…そいつは宇宙人で、地球人の体を借りてるって設定なんだが…まぁそいつが、怪獣やら悪の宇宙人を倒していく、ってな内容だ」
コウイチもそれは知っていた。馴染みは薄いが、再放送かなにかで1、2度見たような記憶がある。
「そのウルトラマンに、その巨人がそっくりでよ。思わずテレビから出てきたのかと思っちまったぜ」
微苦笑するシンジロウ。ロバートがふむ、と腕組みした。
「<ウルトラマン>…か、悪くないが……なんかこう、物足りないな」
「…あ、だったら」
口を開くコウイチが、再び先ほどの、巨人の攻撃の瞬間を捉えた画像を呼び出す。
「<スパーク>…なんてどうですか?」
巨人の手に集まる煌々とした光。観測の結果、太陽光と同等か、それ以上の照度であるとされているらしい。
「<スパーク>…閃光、か」
「はい。巨人が現れたときとか、この、怪獣を倒すときにぱぁって光ってるじゃないですか。だから…<スパーク>。<ウルトラマンスパーク>」
「<ウルトラマンスパーク>……」
口に出してみたシンジロウが、にんまりと笑って大きくうなづいた。
「へへ、悪かねえな。いや、かっこいい。これで決まりにしようぜ、隊長!」
「そうだな。実際に現場で見たお前たちの意見だ。採用したっていいだろう」
ロバートがイズミを促すと、彼女は笑顔でうなづき、巨人のデータベースに、アーカイブコード<ウルトラマンスパーク>を登録した。
「そうだな。実際に現場で見たお前たちの意見だ。採用したっていいだろう」
ロバートがイズミを促すと、彼女は笑顔でうなづき、巨人のデータベースに、アーカイブコード<ウルトラマンスパーク>を登録した。
-つづく-
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ようやく命名。
こちらの世界では、ウルトラシリーズは「Q」と「マン」までの放映にとどまっている、という裏設定があったり。まぁわりかしどうでもいいんですが。
フィクションでしかなかったはずの存在が現実に登場する、というシチュエーションは結構好きなのです。
…好きすぎてBLOODでも似たようなことをw(ぉぃ