炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1話/シーン12

「攻撃が阻まれた…何が起きている?」
 鋭い目つきでモニターを凝視し、ロバートは刻一刻と変化する状況を捉えようとしている。
「これ…圧縮空気を膜状にして自分を包み込んでる…?」
 解析画面の答えを引き出したイオリが唇をかんだ。
『ってことはアレか。空気のバリアを張ってるってことかよ?』
 エドワードが尋ねる。
「さっき、圧縮空気の弾を撃ってたでしょ。それのバリア版ってところね。堅さは折り紙つきよ」
 その言葉は、巨人の攻撃を阻んだという事実が証明していた。
『どうする…そのバリアをどうにかしない限り、こっちは無駄弾を撃つだけになるぞ』
『まいったぜ。あとは攻撃をブチ込みさえすりゃあ倒せそうなのによ…』
 冷静に分析するアルベルト。エドワードは舌打ちをして怪獣を睨んだ。

   * * *

(どうすればいい…?)
 考えをめぐらせていたのは、巨人と化したコウイチも同様だった。
(怪獣を倒せるだけの力を得たはずなのに…!)
 決め手を欠いた巨人は怪獣と対峙するのみである。

   ドクン…!

(!?)
 突然、コウイチは自分の心臓が不安定な動きをしているような感覚を憶えた。
(な、なん…だ…!?)
「デュゥ…」
 胸を押さえ込み、巨人がうずくまる。胸の中央に光る青い球体が、警告のような音とともに赤く点滅を始めた。

「どうしたんだ、ありゃあ…」
 コウイチの姿を探していたシンジロウも、その様子を見て動きを止める。
「苦しんでる…のか…?」

(くっ…はぁ、はぁ…)
 体中がバラバラになりそうな苦痛がコウイチの中を駆け巡る。
 胸の光球が点滅を始めてからは、その感覚がさらに強くなった。
(まさか…この姿を維持しきれないのか…?)
 全身が悲鳴を上げるのが聞こえるような気がした。

(早く…あの怪獣を倒さないと…!)
「デュアァッ!」
 気合を叩き込み、コウイチは自身を蝕む痛みを押さえ込む。怪獣を見据え、静かに右拳を握り締めた。

(…ん?)
 その右拳に、暖かさを感じた。視線を向けると、右拳を中心に光が集まってきていた。
(これは…)
 その輝きはまだ仄かなものだったが…その内に秘められた力強さを、コウイチは感じ取った。
(これなら…)
 力を込める。光が更に集まり、拳をさらに輝かせる。周囲の輝きが、地球そのものの輝きが、自らに力を与えてくれるようだった。
(この力なら…)

(いけるっ!)
「ダァッ!!」
 拳を構え、全力を振り絞り…

 至高の輝きを怪獣に叩き込む!!!


   バァァァァァン!!!


 空気の壁を一瞬で打ち抜き、強烈なエネルギーと閃光が、怪獣を貫く。
 衝撃で吹き飛ばされた怪獣の体は、次の瞬間、轟音とともに爆裂した。




「す、げぇ…」
『怪獣の…反応の消失を、確認…』
 呆然としたイズミの声が通信機越しに届く。シンジロウは口をあんぐりと空けたまま立ち尽くしていた。



(た、倒し…たぁ…)
 コウイチが安堵の息を漏らす。次の瞬間、強烈な睡魔と激痛と安らぎに襲われ…

 彼は意識を手放した。



  -つづく-



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 詰め込みすぎたなぁ…(超汗
 いよいよ第1話、エンドマークが近づいてまいりました~