炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1話/シーン11

 シンジロウが消えた自分を探していることなどつゆしらず、巨人と化したコウイチはその銀色の眼で怪獣を睨みつける。
(よし、やるっ!)

「デュアァッ!」
 自分の声の代わりに別の叫び声が響く。気にすることもなく、コウイチ…巨人は怪獣の懐に飛び込み、拳を叩き込んだ。

  ガァンッ!

 怪獣の頭部に拳が突き刺さり、大きく歪んだ次の瞬間、怪獣の体が吹っ飛ばされる。

(まだだっ!)
「ジュアッ!!」

 瞬時に空を走り、吹っ飛ばされる怪獣に先回りする。吹っ飛ばされた怪獣がコウイチの前に飛び込んだところを、思い切り振り上げた足を一気に下ろし、強烈なかかと落としを見舞う。
 怪獣は呼吸を強制的に遮断され、咆哮すらあげる余地すらない。

(もう…いっちょ!)
「ヘアァッ!!!」

 再び正拳突きが怪獣を捉える。重い一撃を下向きにぶつけることで、ダメージは分散することなく怪獣の体内で暴れまわった。

  グルゥゥゥゥ…

 蓄積されたダメージが、怪獣の生命力を確実に奪っていく。
(これで…とどめッ!)

 上空に飛び、必殺の跳び蹴りを放つ―――


   バシィィッ!!!

(なにっ!?)
 しかし、その攻撃は何かに阻まれてしまう。
 コウイチそのまま体を浮かせ、怪獣と間合いを取った。巨人の眼が、攻撃を阻んだ“何か”を視る。

(これは…!)

 重厚な空気の層が、バリアのように怪獣を覆っていた。


  -つづく-