炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1話/シーン10

「こちらエドワード。怪獣と巨人を肉眼で確認」
「こちらアルベルト。同じく」

 オーシャン・ベースでの補給を終え、2機のファイターフォースが現場に戻ってきた。
『いやぁ、しかし改めて目の当たりにするとトンでもないねぇ。シンジロウ、あの巨人いったいどこから湧いて出てきたのさ』
「オレが知るか」
 エドの呑気な問いかけにシンジロウはややぶっきらぼうに応えた。
『ちょっとシンジロウ隊員!』
 と、シンジロウのヘルメットスピーカーに伊織の声が響いた。
「な、なんだってんだよ?」
「なんだってんだよ、じゃないわよ! コウイチは? コウイチはいったいどうなっちゃったのっ!?」
 その叫び声には、悲痛なものが混じっていた。
『墜落してボサっと突っ立ってる暇があるなら、コウイチのこと捜しないさいよっ!』
「わ、わあったわあったっ」
 確かに悠長にもしていられなかった。あの怪獣の攻撃で、シルエットフォースにも多大なダメージがあったはずだ。
「脱出してれば…いいんだがなっ」
 シンジロウは周囲を見回す。と、波間に浮かぶシルエットフォースの機首を見つけた。

「…キャノピーが…開いてねぇ?」
 脱出装置を働かせていない。つまり、内部にまだ幸一がいる可能性がある。
「お…おいおいおいおいおいおいおいおい!」
 ジャケットとヘルメットを脱ぎ捨て、身軽になったシンジロウは海に飛び込む。数回のバタ足ののち、ぷかぷかと上下するシルエットフォースにしがみついた。
「おいコウイチ! コウイ…チ?」
 コックピットを覗き込んだシンジロウが絶句する。中はもぬけの空だった。
 念のためにシート脇の脱出装置を確認する。やはり作動はさせていない。だとすれば…?
「コウイチ…お前、一体何処に行っちまったんだよ…?」
 今まさに頭上で戦っている巨人がコウイチだと知る由もないシンジロウは、呆然と立ち尽くすだけだった…。


 -つづく-