炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

File:0 あるいは 1.5【予告編】

「退屈…」
 溜息交じりの声が宙を舞う。
「退屈退屈退屈タイクツたいくつ~っ」
 背後で言葉のトゲが跳ね、俺の後頭部に突き刺さる。

「ええいっ、やかましい!」
 机をばんっと叩き、振り返る。
 狭い部屋には似つかわしくない大きめのソファに、制服姿の少女がふくれっ面で寝転んでいる。
「だって退屈なんですもの」
 美少女…と言っても差し支えのない少女は、すまし顔でしれっと答えた。
「…じゃあなんでここに居るんだよ」
「少なくとも家よりマシですもの」
「…あっそ」

 この慇懃無礼な小娘は【雪白小姫(ゆきしろ・さき)】。雪白グループって言えば知らない人間は居ないってくらいの大財閥の娘だ。
 そのお嬢様が、なんでしがないラノベ作家である俺…【七尾郁人(ななお・いくと)】の部屋にいるのかと言うと…

 本人曰く、俺が昔戯れで書いた推理小説に惚れこんで…ってことらしいんだが、何処まで本気なんだかな。
 まぁ、その縁で知り合ったのは確かだが。
 その後、彼女(と俺)が巻き込まれた殺人事件にかかわり、二人でそいつを解決したのだが…

「…それはまた別のお話、ってヤツかな?」
「何がですの?」
「さぁな」
 首をかしげるチビ姫(俺がつけたあだ名)に、俺は曖昧な返事で答える。
「あ、もしかして…書く気になりました? 推理小説!」
 …またか。
「書かない。俺はもう推理小説からは足洗ったって何度言えば…」
 そう。こいつが俺の部屋に入り浸る要因の一つが、これなのだ。
 俺に推理小説を書けとやたらせがんでくる。
「いいじゃありませんの。この間の名推理、腕は衰えていないものと思いますが?」
「あんたも存外しつこいな。書かないったら書かないの」
 言い切って、俺は再び机に向かう。アニメのノベライズの仕事がまだ残っているのだ。これ以上時間はムダに出来ない。
「そんなクズアニメのノベライズを書くより、よほど建設的だと思いますのに」
「…クズアニメ言うな。たとえクズでも俺には飯のあてだ。」
 無視して執筆を再開する。チビ姫は再びふくれっ面をしたが、諦めたのかケータイをいじりだした。

 ・
 ・
 ・

 …静かだな。

「あぁ~っ!!!」
「うおっ!?」
 と、静寂が一瞬にして破られた。
「なんだ?」
 いいところで中断されて、イラつく俺の目の前にケータイの画面が突きつけられる。
「事件ですわ! じ・け・ん!」
 画面から少し顔を離す。見慣れないニュースサイトのような画面に、速報として様々な事件が飛び込んでいる。中にはこの近くで発生しているものもあるようだ。
「と、言うわけで…行きますわよ!」
「はぁ?」
 言うが早いか、チビ姫が俺の手を引っ掴んで玄関へ飛び出す。
「事件が私たちを呼んでますわよ~っ!」
「ってこら待て! 誰が行くと言った…つか、人の話を聞けチビ姫!!」




 ―――(自称)美少女名探偵の雪白小姫と、(元)推理小説家の七尾郁人の凸凹コンビが、難事件を華麗に(?)解決するライト・ミステリー。


   『白雪姫の事件ノート』…まもなく開演!



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例の「一番最初の読者ちゃん」からのリクエスト。
対に俺の鬼門とも言えるミステリものに手を出してみましたw(笑い事か
想像以上の大絶賛をもらって軽く狂喜乱舞。
ちなみに、当人には既に説明済みですが…

トリックとか考えるのメンドイので既存のを軽くアレンジした程度のを使わせてください(爆


…似てるのどっかで見た(読んだ)とか言われても全力でスルーします。つかスルーさせて(ぉ