炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

そのに/しーん3

 ―――翌日。

「…ゆか、伊賀野君。おはよう」
 いつもどおり3人で登校する康助たちに、瑞樹が声をかけた

「あら、瑞樹じゃない。珍しいわね。いつもならもう教室に居る時間じゃない?」
「ふふ。ちょっとお寝坊さんしちゃって」
 舌をちろりと出してくすっと笑う。

 うわ、可愛いなぁ…と、瑞樹の一挙手一投足に見とれてしまう康助。

「ところで…そちらの可愛い子はどちらさま?」
「ふぇ?」
 急に視線を向けられ、すずりがきょとんとなる。
「あぁ、そーいや初めてだっけ」
 そう言って、縁が肘で康助を小突いて促す。
「あ、ああ…」
 こほん、と咳払いひとつ。
「俺たちの新しい友達の、綾瀬すずり」
「はじめまして。綾瀬すずりですですっ」
 大きく振りかぶってお辞儀する少女に、瑞樹は笑顔で右手を
差し出した。
「…ええと、初めまして。私は杠葉瑞樹。よろしくね、すずりちゃん」
「は…はいっ、よろしくですです!」
 柔らかな二つの手がしっかりと握られ、ふたりに友情を結びつける。
「それにしても、伊賀野君も隅に置けないなぁ」
「…へ?」
 瑞樹の言葉に康助の目が点になる。
「あんな可愛い子と仲良くなるなんて。ゆかってコがいながら~」
「ちょっ、そんな! 縁はただの幼なじみだし、それに…」

  俺が好きなのは…君だし…

 その言葉は声に乗ることなく、康助は口をぱくぱくと動かすだけだ。


「…すずっち」
 康助と瑞樹の様子を見ていたすずりに、縁が声をかける。
「…あの人が、康助さんの好きな人なんですね…」
「ん、そう」
 縁がそう言うと、すずりは手をきゅっと握り締めた。
「もうひとりのライバルってことですね。まけないですっ」
「…は? もうひとりって…」
 首をかしげる縁に、すずりは、
「縁ちゃんですですよ?」
「…おいおい」
 何を言い出すのかと呆れ顔ですずりを見やる。当のすずりはいたって本気のようだ。
「あのねぇ。あたしと康助はただの幼なじみよ? それ以上でも以下でもないっての」
「そーですかぁ…?」
「そーなの」
 きっぱりと言い切って、ちらりと康助に視線を向ける。瑞樹との会話は弾む…とまでは行かないが、それなりに進行はしているようだ。
「…でも、縁ちゃんが康助さんを見てる目、良く似てるんですよ」
「何に?」
「今…瑞樹さんを見てる康助さんの目に」
「―――!!!」
 不意に顔が熱くなった。
「そ、そんなわけないじゃないの! 何言ってるのよすずっちったらもーっ」
 わざと大きな声を上げる。その声に驚いた康助が縁に近づいた。
「どうしたんだよ。朝っぱらから大きな声出して」
「ど、どうしたって。誰のせいで―――!」


 そうだ。
 すずりがこんなことを言ったのは康助のせいだ。
 本当に好きな人には一歩踏み出せないくせに、無闇に人に優しくて。
 そんなだからすずりにも好かれて。
 ったく…あたしの苦労も知らないで。


「…康助」
「なんだよ」
 急に声のトーンを落とす縁に、康助がたじろいだ。
「放課後、体育倉庫に来なさい」
「は?」
「いいわねっ!」
 話をそこで打ち切って、縁は足早に昇降口へと向かっていった。


「なんだってんだよ、縁のヤツ…?」


  -つづく-


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 一度恋愛対象として異性を認識してしまうと、得てして会話すらままならなくなってしまうものです。

 俺自身経験あると言うかなんというか。
 主人公自身のモデルには事欠かんでいいわ(笑

 …いや笑うトコじゃないから。



 一番最初の読者ちゃんから、「正しい日本語って感じで見てて気持ちいい」とのお言葉。
 もちろん褒められて悪い気はしないのだが…つか嬉しいのだが。


 …もうちょいと作品に関する感想が欲しいところです(トオイメ


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