炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編】げっとざ☆ふゅーちゃー【こなた】

「…進路?」

 放課後。
 なんとはなしにダベってた俺たちのところに、小早川さんたちがやってきた。
「はい。週末までに希望を提出しなさいって」
 手にした洋半紙には、希望進路を幾つか書くような欄が描かれている。アンケートみたいな感じだろう。
 あ、そういう季節か。
「……でも、まだピンと来なくて…」
「それデ、コナタたちにソーダンしよっテ!」
 なるほどね。



   げっとざ☆ふゅーちゃー




「そんなわけで、まずは参考までに先輩方の進路を聞きたいっス」
 俺たちの進路か…
 えーと、確かみゆきさんは…
「私は医学部で進学を…」
「で、つかささんは料理学校だっけ」
「うん。お料理もっと勉強したくて」
 うーむ、二人ともしっくりくるなぁ。
 …でもみゆきさん、医者って苦手だった気が。特に歯医者とか。
「私は、一応法学部で進学よ」
「…マジで?」
「なによ、らしくないっての?」
 かがみさんににらまれた。
「や、そーゆーわけじゃないけど」
 意外としっかりした進路でびっくりしたくらいで。

「そーいえば、ゆーくんって進路決めてたっけ?」
 背後からこなたの声。
 正確には、俺の背中に寄りかかってぺたぺたとくっついてるんだけど。
「ん、まぁね」
 本当はつい最近まで漠然としか決めてなかったんだけど。
「文芸学部で進学希望」
 へー、と周囲から声。
「もともとなにかしら書くのは嫌いじゃなかったんだけど、そうじろうさんと話するようになってから、結構興味持っちゃってさ。折角だから本格的に勉強してみようかなって」
「先輩、小説家目指すんスか?」
「どうかな。まずは知ってみたいって好奇心みたいなもんだし、どうなるかはまだわからないよ」
 っと、仮にも彼女たちは俺たちに相談しに来たんだ。テキトーなことは言えないな。

「なんてゆーか、さ」
 こほん、と咳払いひとつ。
「まずはなにをやりたいか、それを決めるのも難しいと思うんだ」
 俺だって、いまのいままでかかったわけだしな。
「就職するにしろ、進学するにしろ。進学するなら、どのジャンルってのもあるし」
 それこそ選択肢は鬼のようにある。
「だから、今は…何に興味があるか、くらいでいいと思うよ」
 好きこそ物の…ってのもある。
 それを伸ばせるチャンスがあるんだ。乗っからない手はない。
「大丈夫。キミらはまだ2年猶予があるんだから」
 でも、それにあぐらかいてちゃだめだけどね。
 そう言って締めくくる。

「おぉ~」
 ぱちぱちと拍手。なんか恥ずかしいな。

「いやー、さすがゆーくん。カッコいいことゆーねぇ♪」
 なでなで。
「ちょ、頭なでるなって」

「そういえば、お姉ちゃんは進路決めたの?」
 小早川さんが問いかける。
 ふむ、俺も聞いたことないな。
「うーん、正直全然なんだよねぇ~」
「おいおい」
 呆れ顔のかがみさん。
「まぁ、あてがないわけでもないというか」
「なぁに?」
 首をかしげるつかささん。こなたはにんまりと笑って、改めて俺に抱きつく。

「ゆーくんとこに永久就職☆」



 …………世界が凍りついた。



「ちょ、こ、こなた!?」
 焦る。嬉しいけど、めっちゃ焦る。
「……ヤなの?」
 上目遣いに俺を見る。寂しげな目で。
 こら、そんな目で俺を見るな。
「…………ヤじゃ、ないです」
 照れる。そりゃもうこの上なく照れる。

「コナタ、“エーキューシューショク”ってなんですカ?」
「んー、簡単に言っちゃうと。お嫁さんってことかな?」
 きゃっ、言っちゃった♪ なんて。
 …キャラ違くない、こなた?

「ナルホドです! …じゃァ、ワタシの進路はこれでケッテーですヨ!」
 さらさらと進路希望のプリンタにペンを走らせる。
 なになに…
 第1希望の欄に書かれたのは…


  【ユーキのアイジン】


「こーゆーコトですネ! ワカリマス!」
 ……って待てぃ。
「それは進路じゃねえ!」
「そーだよ、ダメだよパティ!」
 助け舟を出してくれるこなた。
「ゆーくんの愛人枠はもうかがみんの予約が入ってるんだからっ」

 ……はい?

「ちょっ、なにバカ言ってんのよこなたっ!!?」
 耳まで真っ赤になって、かがみさんが怒鳴る。
「えー、違うの?」
「ったりまえだ!」

 ……やれやれ。

「なんか、あれだな」
「はい?」
 俺の呟きに、みゆきさんが首をかしげる
「どれだけ時間がたっても、万一みんなバラバラになっても…この空気…ってか、雰囲気?……変わらない気がしてきたよ」
 きゃいきゃいとかしましく騒ぐこなたたちを見てると、そう思う。
「……ですね」
 くすくす笑いながら、みゆきさんが頷いた。

「あ、でも変わるものもあるよ?」
「え?」
 いつの間にか俺の傍らに戻ってきていたこなたが囁く。

「……たとえば、私の名字とか♪」
 小悪魔ちっくに微笑んで、俺の腕にしがみつく。
 まったく、こなたってヤツは。
 
「…それも、いいかもな」
 ただ、そうじろうさんは大泣きしそうだけど。
「婿養子って手もあるよ?」
「…選択肢には入れとくよ」

 …でも、ま。

「その“未来”は楽しみだけど…」
「?」
「“今”、こーやっているときを大事にしたいかな」
 何度も同じ“時”を繰り返した身としては、今のこの何気ない時間が、なにものにも変えがたいものだって、知っているから。

「……そだね」
 こなたが頷いて、そっと寄りそう。その肩を、抱き寄せる。


 放課後の喧騒が、遠くに聞こえた。




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 つーわけで、こなたde掌編ですた。
 主人公が本当に文芸学部希望になるかは知ったこっちゃありませんが(ぉぃ)ギャルゲの主人公ってわりと詩人的なところがあるので意外とそーゆー方向へ進むやつ多いのかもしれませんw

 つか、俺自身大学進学してもいーかなーとか今更思った。
 もちろん文芸学部で。
 …在籍してたのが工業高校だからハードルは高そうですが(滝汗

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