月が変わったと同時に、急に暑くなってきた。
梅雨はとうに明けて、陽射しは容赦ない夏のそれになっている。
それは夕方になって、日が翳っても変わらずで、むしろ重く湿った熱気がまとわりついてきて、タチが悪い。
「おつかれ、ゆうきくん」
でも、今までほど憂鬱さは感じない。
多分それは…
「おつかれ、かがみ」
好きな人が、隣にいるから…かな。
―――7月7日。
今日は、私の誕生日。
らぶいず☆すぇあー
「はい、コレ」
さらりと、私の鼻先に小さなカートンボックス。
「え?」
「え? じゃないよ。今日、誕生日でしょ?」
そりゃそうだけど。
……もう少し、ムードとかそーゆうの、気を遣って欲しいな。
まぁ、彼にそれを望むべくも無いのかもしれないけれど。
それに、やっぱり……嬉しいし。
「ありがとう」
中身はなんだろう?
プレゼントを貰う人が抱く、至極真っ当な疑問が、頭をもたげる。
「開けてみて…いい?」
「……う、うん」
?
歯切れの悪い返事。
「なに? なんかマズイの?」
「いや、そういうわけじゃ」
言葉を濁すゆうきくん。
「じゃ、いいじゃない」
言うが早いか、包装を剥いで箱を開ける。
「………あ」
その中身に驚いて、危うく箱を取り落としそうになった。
シンプルなデザインのシルバーリングが、陽光に煌いていた。
*
「あ、いや…その、なんだ」
言葉を選ぶように、ゆうきくんが口篭る。
「他意は、ないんだ」
…うそばっかり。
他意が無いなら、そこまで顔真っ赤にする必要ないんじゃない?
「いや、だって…それ、あんまり高くないしさ」
こーいうのは、値段じゃないと思うけど。
「まぁ、それでもバイト代一月分丸ごとすっとんじゃったけど。…あ、いや。そーいう事が言いたいんじゃなく」
恥ずかしいのか照れくさいのか、聞かれて無いのに喋る。
…もう、こっちの方が恥ずかしくなるわよ。
「…つけて、くれない?」
「!?」
私のお願いに、ゆうきくん、目をパチクリさせてる。
ちょっと意地が悪いかな? 我ながら。
「……うん」
大きく深呼吸して、意を決したように頷く。
箱からリングを取り出して。
私の左手を引いて。
……その薬指に、リングを導く。
「…………」
よ、予想はしてたけど…
改めてされると、ものすごく照れるわね。
「…………」
それは彼も同じみたいで、耳まで真っ赤になって、目を伏せてる。
「……だから」
「え?」
「……予約だから、その場所」
搾り出すように、声を出すゆうきくん。
「まだ、君を幸せにできる甲斐性は俺には無いけど……でも、君は…かがみは……誰にも渡したくないから」
一息にそう言って、その顔がさらに真っ赤になる。
「な、何言ってんだかな。なんか、独占欲丸出しでさ。…みっともないな俺」
頭をわしゃわしゃとかいて、沈んだ声が転がり落ちる。
「…バカ」
それだけ、私のこと好きでいてくれてる、ってことじゃない。
ただの「好き」って言葉に負けないくらい、私をドキドキさせてる。
「予約なんかなくたって」
左の薬指を、ゆうきくんの眼前に突きつける。
「ここは、ゆうきくん以外お断りなんだからっ」
うわ、我ながらなんて恥ずかしいセリフ。
でも、事実だもん。
「それと」
もうひとつ、大事なこと。
「ゆうきくんが幸せにしてくるんじゃなくてね」
精一杯の笑顔で、伝える。
「二人で、幸せになろう?」
―――それが、きっと。
恋人っていう、カンケイ。
-fin-
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柊ツインズ、誕生日記念!
第1弾はかがみんだよ~
…いやー、ほんとはセットでやる予定だったんですが。
気がついたら二人分書いてたよw
しかし俺指輪ネタ好きだなァ…(トオイメ
そしてお約束のように左手の薬指。
いい加減使い古されたネタで申し訳ないorz
でも反省はしない!(←だめだろそれじゃ
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↑七夕にweb拍手っ~