炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編】さんくす☆ばーすでぃ【桜藤祭/つかさ】

「そういえば、もうすぐつかさの誕生日だよね?」
 朝から無遠慮にじりじり照らす太陽を背に、そう問いかける。
「うん、そうだよ~」
 懐っこい笑顔で、俺の恋人が答える。
「プレゼント、考えとかないとな…」
 視線を上に彷徨わせて、喜んでくれそうなプレゼントを探る。

「おやおや~。朝から暑いなァと思ったら、元凶がココにいましたよ」
「ほっといてやんなって。あれであの二人は幸せなんだから」
 …聴こえてるよ、お二方。

「…えっとね、ゆうきくんっ」
「ん?」
 思い出したように、つかさが声を上げる。
「その誕生日なんだけど……お願いしたい事があるの」




    さんくす☆ばーすでぃ



 ―――そして、当日。
 学校が終わると同時に、二人して寄り道。
「…スーパー?」
「うん、ちょっとお買い物」
 メモを片手に、いそいそとカートを押していく。
 …うーん、微妙に危なっかしい。
「俺が押すよ」
 あやうくコケそうになったのを抱きとめて、立ち位置を変える。
「あぅ…ごめんね。じゃ、案内するから付いてきて。まずはお野菜で―――」
 頭の上のリボンをぴこぴこ揺らしながら先行し、俺を手招きする。

 …でも、なんだって自分の誕生日に食材の買い物?

  *

「さ、入って入って」
「お、おじゃまします…」
 買出しの後、今度は柊家にお邪魔。
「おかえり、つかさ。それからゆうきくん、いらっしゃい」
 俺たちを出迎えたのはかがみさん。なぜかエプロン姿だ。
「お姉ちゃん、お願いしてた下ごしらえ、終わった?」
「なんとかね。……もぅ、放課後にメールくるから何かと思ったら」
 読みづらくて苦労したわよ、と肩をすくめるかがみさん。
「で、ゆうきくんも手伝わせるわけ?」
「んー…」
 首をかしげながら、申し訳なさそうな表情で俺を見つめるつかさ。
「いいよ。俺で出来ることならさ」
 仮にも恋人の誕生日だ。役に立てるならそれに越したことは無い。
「うん、ごめんね?」

 とはいえ、疑問は残る。
 自分の誕生日に自分で夕飯の用意?
 なんで?

  *

 いつしか日も傾き、つかさとかがみさんのご両親が社務所から戻ってくる。
「…あらあら。今日は腕によりをかけてご馳走作るつもりだったのに」
 お母さん…みきさんが、残念そうに呟く。でも、テーブルに並んだ料理の数々と、つかさたちを見る目は優しく、そして温かい。
「つかさたっての提案でね。お母さんを祝いたかったんだって」
 かがみさんが微苦笑する。
「え? でも今日はあなたたちの誕生日で……」
「うん」
 首をかしげるみきさんと、それに頷くつかさ。
「わたしたちの誕生日で、それから…」


「お母さんが、わたしたちを生んでくれた日」


 つかさが、これ以上無いくらいの笑顔をみきさんに向ける。
「……」
 みきさん、手を口元に当てて目を伏せて……あ、涙。

「ありがとう、おかあさん」
「うん……あなたたちも、おめでとう……」
 目じりに浮かぶ涙を拭って、みきさんが柔らかく微笑んだ。


  *


「…良かったね、お母さんに喜んでもらえてさ」
「うん。…えへへ」
 照れくさそうに、つかさが笑う。
「ごめんねゆうきくん。わたしのわがまま聞いてもらって」
「気にしないでよ。俺も楽しかったし。俺も、自分の誕生日の時にやってみようかな?」
「あ、そのときは手伝わせてね」
 その申し出に頷いて、二人して笑って。

「あ、そうだ。…つかさ、これ」
 うっかり逃してた、渡すタイミングを見つけて、鞄から小さな包みを取り出す。
「プレゼント。俺から」
 その言葉に、照れた笑顔が花ひらく。
 開けていい? の問いに頷き、彼女の指が包装を解くのを見守る。
「…わぁ、可愛い~」
 ピンクをベースに、白いフリルが縁取ったリボン。ちょっと派手かなと思ったけど、似合うと思って。
 着けてみてよ、と言う前に、つかさは自分のリボンをほどいて、いそいそと結ぶ。
「どう…かな?」

 うわ……想像以上。
 すっげぇ可愛い。

「どうしたのゆうきく…きゃっ」
「これが答えってコトでひとつ」
 つかさの身体をそっと…でもしっかりと抱きしめる。
「もぉ…ちゃんと言葉で聞きたいよ」
 拗ねたように呟く。
「ん……惚れ直した」
「…………」
 おーい、せっかく言ったんだからリアクションのひとつも欲しいぞ。

「……は、恥ずかしいよぉ…」
 顔中真っ赤にして、つかさが俯いた。
 そのさまがもう、形容できないくらいに可愛くて。
「つかさ…」
「うん…」
 どちらからともなく、目を閉じて。

 …どちらからともなく、唇を重ねる。

「……来年も、再来年の誕生日も、ずっとこんな風にいれたらいいね」

 つかさが、そうささやいた。






  -fin-


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 柊ツインズばーすでー、第2弾でバルサミコ酢ッ!(イミフ

 誕生日=お母さんが生んでくれた日。
 この表現好きです。隙あらば多用する気マンマンです(ぇ

 てゆーかつかさはナチュラルにこーいうことやりそうです。
 もっとも、20歳とか、そーゆー区切りのときにやるでしょうけど。


 なんかかがみのより内容が濃い気が…


 でもキニシナイ!(しろよ

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