炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1話/シーン4

 怪人連中が現れたのとは別方向へ人々を誘導する。
「落ち着いて! 早くこっちへ!」
 この事態に落ち着けと言うのも無茶な話だ、と内心思いながらも、とにかくどうにかしなければと声を張り上げる。
 誘導した先にヤツらが出ないことを願う。
「ぉおんどりゃぁぁぁぁぁ!」
 ダンはというと、逃げ遅れた人に近づく怪人をタックルや蹴りでふっとばし、守っていた。

「よし、あらかた避難は終わった! ダン、俺たちも逃げるぞ!」
「すまん、無理じゃ!」
「なんで!」



「……囲まれてしもーた」


 気付くと、ダンの周囲は怪人の群れで完全に包囲されていた。

「なにやっとんじゃー!!!」
「…いや、なんつーか…」

 さんざんっぱら邪魔されて怒り心頭なのだろう、いまや群れの害意は全てダンに向けられていた。

「ま、気にすんなや。ちょいと強行突破するから…よっと」
 連中に蹴り折られていた道路標識を拾い上げる。軽く振り回し、感触を確かめ、一人頷く。

「か、簡単に言うけどなぁ…」
「難しゅうはなかろぉ?」
 軽口ひとつ叩き、キッと前方の怪人を睨みつける。

「だらっしゃああああああ!!!」

 『止まれ』と書かれた赤い三角形が怪人の側頭部を直撃し、くるくると吹っ飛ばす。

「どうしたの?」
 別ルートで避難誘導していたモモコが戻ってくる。
「ダンだけ取り残されていま強行突破中」
「はぁ? なにやってんのよヒカル、助けなさいよ!」
 あ、そういえばそうだ。
「いらん! おめえらは早ぉ逃げぇ!」
 群れに向かおうとした俺の足をダンの怒声が止める。
「いや、ちょ、お前を置いて逃げれるほど薄情じゃねえ! 見くびんな!」
 そりゃ腕っぷしはお前には及ばんが、囮くらいにはなるだろう。
「……ったく、ええツレを持って幸せじゃのぉ、わぇは!」
 嬉しそうに標識をブンブン回し、怪人を片っ端からノしていく。
「わはははははは!!!」
 まさにナントカ無双。
「…って、ダン! うしろうしろ! うしろぉ!!」
「あん? ってうおあっ!!?」
 がら空きになっていたダンの背後から怪人が圧し掛かって来た。
「だぁっ、この! 離しやが…おりゃあっ!!」
 羽交い絞めにされつつも標識を振り回すダン、が、汗でぬれていたのか振り上げた瞬間に―――。

「…………………あ゛」

 すっ飛んでいった。
「うおぁぉ! ぐ…くのぉっ!」
 それでもパンチや蹴りで牽制を繰り出すが、多勢に無勢。ダンの姿は一気に怪人の群れに取り込まれ、見えなくなってしまう。
「ダン! おいダン!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 モモコの悲鳴が空気を振るわせる。

「こんな…こんなことってあるかよ!」
 これがフィクションならどんなによかったか。だが現実は非情であり、何度呼びかけても、叫んでもバケモノどもの向こうから親友の声は返ってこない。

「くそったれぇ!!!」
 誰かが落としていったのか、街宣用のプラカードを拾う。
「りゃああああああ!」
 叫び声ごと怪人を殴りつける。プラカードごしに掌に衝撃が伝わる。
 殴った怪人がくるり、とこっちに顔を向ける。…効いてねえ!?
「わっ…ぐぅあ!」
 不意に怪人の手が俺の首を捉え、持ち上げる。
「がっ…は! くっ…こンのぉ!」
 脚で応戦するが、宙に浮かされ不安定な状態からの蹴りじゃダメージどころかびくともしない。
(こんなところで……終わンのかよ…俺の人生!)
 惚れた女に告ることもできずに…!

 意識が……遠のき……かけた、そのときだった。

 ぼんやりとした視界が、光に埋め尽くされる。
(!?)
 僅かに聞こえる聴覚が、強烈な打撃音と怪人のうめき声を断続的に捉える。
(なに…が?)
 不意に、身体がゆれ、気道を押さえていた怪人の手が解ける。
「おわっ…ゲホ、ゲホ」
 ひとしきりむせ、肺に新鮮な空気を送り込む。ようやく戻った視覚で、何が起こったのかを探る。と、

「!!?」

 ―――な、何だ!?

 俺の目の前に、陣羽織のようなスーツを着こんだ…ヒーローとしか形容できない存在が、佇んでいた。


   -つづく-


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 いきなりヒーロー登場しちゃった!

 ウチのオリジナルライダーやオレトラマンに見習って欲しいくらいのスピードだw

 ……っとまぁ、冷静に考えれば、あっちの方がムダにシーン数多いから遅く感じるのであって、出てくるタイミングとしては終盤であることには変わりないんだよな……などと。

 早ければあと1シーンくらいで終わるんじゃなかろうかと。