流れ流れ、今は昔。
まだ、東京が<江戸>と呼ばれていた頃のこと。
まだ、東京が<江戸>と呼ばれていた頃のこと。
「……後ろからバッサリ…と言うよりゃ、全身ズタズタにやられてやがる」
朝霧の残る河原、無惨な姿を晒す死体を前に、歳若い同心が苦々しく呟く。
「手口は一連の辻斬りと同様…下手人も然りですかね」
隣に控える同い年くらいの同心が眉をひそめる。このご時世、辻斬りもさして珍しいものではないが、ここまで陰湿なやられ方はそうそう無い。
「ホトケさん…そうとう苦しんだでしょうに…」
刻まれた刀傷のひとつひとつは、直接致命傷にならないものであろうことは、武芸に精通した彼等には見て取れるものであった。単純に殺すだけではない、苦しませたのち死に至らしめる、下手人の残忍さが滲み出ている。
朝霧の残る河原、無惨な姿を晒す死体を前に、歳若い同心が苦々しく呟く。
「手口は一連の辻斬りと同様…下手人も然りですかね」
隣に控える同い年くらいの同心が眉をひそめる。このご時世、辻斬りもさして珍しいものではないが、ここまで陰湿なやられ方はそうそう無い。
「ホトケさん…そうとう苦しんだでしょうに…」
刻まれた刀傷のひとつひとつは、直接致命傷にならないものであろうことは、武芸に精通した彼等には見て取れるものであった。単純に殺すだけではない、苦しませたのち死に至らしめる、下手人の残忍さが滲み出ている。
運ばれていく死体を尻目に、同心……渡辺小五郎は、踵を返し、現場を後にした。
「…あ、ちょっと! 勝手に入ってきちゃダメですよ!」
相棒の声に、小五郎がふと振り向く。一人の侍が、死体に近づき、その手に触れている。
「なんだ、あの侍?」
一度訝しげにその姿を一瞥する小五郎であったが、
「…ま、いいか。伝七がなんとかするだろう」
とさして気にすることもなく、再び歩を進める。
相棒の声に、小五郎がふと振り向く。一人の侍が、死体に近づき、その手に触れている。
「なんだ、あの侍?」
一度訝しげにその姿を一瞥する小五郎であったが、
「…ま、いいか。伝七がなんとかするだろう」
とさして気にすることもなく、再び歩を進める。
「……この刀傷……“外道”の匂いがする」
侍の呟きは、小五郎の耳には届かなかった。
*
刻は昼時に移る。
小料理屋<その>は多くの客で賑わい、店を切り盛りする青年…源太と少年…作太郎は調理と配膳に追われていた。
「へいお待ちっ!」
「まいどありがとーございますっ!」
「まいどありがとーございますっ!」
騒がしい店内の中、その一角だけ、妙に凛と張り詰めた空気。
「…………」
粋に着こなされた羽織袴。腰にあるは鞘越しにも銘のあるものと窺がえる刀。
侍が一人、黙々と箸を運んでいた。
粋に着こなされた羽織袴。腰にあるは鞘越しにも銘のあるものと窺がえる刀。
侍が一人、黙々と箸を運んでいた。
やがて、箸が米の最後の一粒をさらい、茶碗が音もなく卓に戻る。
「………馳走になった」
「あ、ありがとうございますっ!」
駆け寄る作太郎に、侍は穏やかな笑顔を向ける。
「この料理、おぬしが作っているのか?」
「はい、オイラと父ちゃんで!」
父ちゃん、の言葉に、土間に目をやる。目が合った源太が照れくさそうに会釈をした。
「そうか。美味かったぞ」
侍がそう言うと、作太郎の顔がぱあっと笑顔に染まる。
「支払いだ」
作太郎が、手渡されたものを見て、思わず目を丸くする。小判が二枚、輝いていた。
「こ…こんなにもらえません!」
「構わん。…次は供の者と来る。その時、また美味いものを食わせてくれ」
その言葉に、作太郎はこくこくと大きく頷き、店を出る侍の背中に、大きな声で礼を叫んだ。
駆け寄る作太郎に、侍は穏やかな笑顔を向ける。
「この料理、おぬしが作っているのか?」
「はい、オイラと父ちゃんで!」
父ちゃん、の言葉に、土間に目をやる。目が合った源太が照れくさそうに会釈をした。
「そうか。美味かったぞ」
侍がそう言うと、作太郎の顔がぱあっと笑顔に染まる。
「支払いだ」
作太郎が、手渡されたものを見て、思わず目を丸くする。小判が二枚、輝いていた。
「こ…こんなにもらえません!」
「構わん。…次は供の者と来る。その時、また美味いものを食わせてくれ」
その言葉に、作太郎はこくこくと大きく頷き、店を出る侍の背中に、大きな声で礼を叫んだ。
「…随分と気前のいいお侍さんもいたもんだなァ」
作太郎とともに見送った源太が呟く。
「供の者と来るって言ってたし、ひょっとしてどっかのお殿様かもな」
「なァに言ってんだよ父ちゃん。フツーのお侍様ならともかく、お殿様がこんな小料理屋なんかに来るわけ無いじゃん」
呆れたように言う作太郎に、「それもそうか…」と深く考えず頷き、源太は再び土間へと戻った。
作太郎とともに見送った源太が呟く。
「供の者と来るって言ってたし、ひょっとしてどっかのお殿様かもな」
「なァに言ってんだよ父ちゃん。フツーのお侍様ならともかく、お殿様がこんな小料理屋なんかに来るわけ無いじゃん」
呆れたように言う作太郎に、「それもそうか…」と深く考えず頷き、源太は再び土間へと戻った。
-つづく-
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さて、てなワケで必殺の世界観に移動しますた。
シンケン勢、必殺勢ともに可能な限り出番を組んであげたいところです。
ひとまずは必殺より小五郎&伝七、源太&作太郎が。シンケンより殿=レッド、描写はありませんがブルーがそれぞれ。
次のシーンまででとりあえずメンバー同士のニアミスを済ませ、本番へと持っていきたいところではありますが。はてさてどうなりますやら。
シンケン勢、必殺勢ともに可能な限り出番を組んであげたいところです。
ひとまずは必殺より小五郎&伝七、源太&作太郎が。シンケンより殿=レッド、描写はありませんがブルーがそれぞれ。
次のシーンまででとりあえずメンバー同士のニアミスを済ませ、本番へと持っていきたいところではありますが。はてさてどうなりますやら。