炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【桜藤祭】すぷりんぐ☆ぶるーむ【パティ/誕生日記念】

「それじゃ、おヤクソクですヨ、ユーキ!」
「うん、約束ね」
 にこやかに頷いて、パティが嬉しそうに走り去っていく。

「ん~?なんだいゆうきくん。密会のお約束かなにかな~?」
「なんで密会だよ。フツーにデートの約束だろ」
 ニヤニヤとからかうこなたさんに、鋭く突っ込むかがみさん。

「ま、ね。明日、パティの誕生日でさ。『一日ずっと一緒にいてほしい』って」
 うーん、自分で言っててちょっと照れるなぁ。

「うんうん、好きな人とはずっといっしょにいたいもんね~。うらやましいよ」
「学年が違いますから、校内ではあまり一緒に居る機会が設けられませんからね」
 素直に頷くつかささんとみゆきさん。
 実際、1年生が3年の教室に行くのは抵抗あるだろうし。まぁ僕も1年の教室に行くのはちょっと苦手なんだよね。

「好きな人をずっと独占かぁ…まったくもって羨ましいですなァかがみん?」
「…なんでわたしに振るのよ? それより、誕生日ならちゃんと準備とかしといた方がいいんじゃないの?」
 かがみさんの指摘もごもっともだ。
「うん。帰りに色々探してみるつもり」
「よかったらパティが好きそうなグッズとか教えようか?」
「……うーん、そういうのからはちょっと離れようかと」
 自分で言うのもなんだが、ちょっと入り込みにくい領域だから、迂闊に手を出しても…ってね。
「まぁ、そこは彼氏の采配に任せてあげましょ」
 リアクション、報告してね?
 かがみさんがちょっと意地悪げに微笑んだ。


   すぷりんぐ☆ぶるーむ


 柔らかな春の陽射し、穏やかで暖かな南風。
 緩やかに広がる春空の下、僕は待ち合わせ場所の校門でパティを待つ。
「おマたせしましタ~」
 背後から聴きなれた可愛い声。
「おはよ、パティ」
 久々に見るパティの私服は、春らしい若草色のエプロンドレス風のワンピースだ。
「それジャ、キョウはいちにち、ずっとイッショにいるデスよ~」
 語尾に♪でもつきそうなほどの上機嫌で、パティが僕の腕にしがみついた。

  *

「さて、いこうか?」
 今回、特に行き先は決めていない。パティで二人で街を歩いて、興味がある場所があればそこに行ってみる。まあ行き当たりばったりだな。
 こんなデートでも楽しいんだから、本当にパティといることが俺にとって楽しくて、大切なんだって事がわかる。
「~?」
「ん?」
「これ、サクラのはなびらですネ?」
 風で飛んできたのをキャッチしたのだろうか、パティの手のひらに、ピンク色がひとひらのっかっていた。
 そういえば、時期は春。桜の季節真っ只中だ。
「行ってみよっか?」
 僕の誘いに、パティが大きく頷いた。

  *

「うわぁ……」
 満開の桜並木を見上げ、パティが文字通り言葉を失う。
「スゴイ!スゴイです! ソラがピンクですよ!!」
 そう形容できるほど、気が遠くなりそうなピンク色で、空が覆われている。
「パティは、桜見た事無いの?」
 確かアメリカにも桜はあったろうに。
「ウーン、あんまりミたキオクないですネー?」
 学校の星桜は枯れてるし、ちょっと桜には縁遠かったのかもしれない。
「マンガやアニメでおハナミやってるシーンはよくミますけど、ホントにタノしーです!」
 まぁ、楽しんでくれるなら何よりだ。
「どっか座って、ゆっくり眺めようか」
 とはいえ、春の休日。花見客でごったがえし、そうそう座るスペースは見つからない。
「ア、ユーキ、あっちあっち!」
 パティがいい場所を見つけたらしい。人差し指が僕を促した。

  *

「はは、ちょっと桜並木からは離れちゃったかな」
「デモ、フタリっきりでいるにはちょーどいいデス」
 小さな公園の小さなベンチに、僕たちは腰掛ける。
 パティが身を預けるように、僕に寄り添う。パティの体温が服越しにつたわってきて、暖かくてくすぐったい。

 桜並木に行く前にコンビニで買ったお茶と桜餅をつまんで、のんびりとした時を過ごす。
 ふわり、と、風に乗って、桜の香りが鼻をくすぐる。

「はふぅ…」
 ふと盛大な溜息。隣を見ると、パティがあくびをかみ殺していった。
「はは、春眠暁を覚えずかい?」
「ンー?」
 目をこすり、パティはとろけた表情。うわ眠そう。
「深夜アニメでも見てた?」
「No…キョウのデートがタノシみで、あんまりネムれなくて…」
 しれっと嬉しいことを言ってくれる。
「ちょっとお昼ねする?」
 そう僕が言うと、パティは首を横に振った。
「セッカクのデートで、イネムりしちゃもったいないデス…」
 といいつつ、今にも寝落ちしそうなんですが。
「…おりゃ」
「あふ」
 上体をずらし、肩に寄りかかっていたパティの頭を膝に乗せる。
「ユーキ…これじゃギャクですヨ…」
「いいからいいから」
 パティの柔らかな金髪を撫でる。ネコのように気持ちよさげな表情を浮かべたパティは、すぐに寝息を立て始めた。
「……可愛いなあ、もう」

 あ、そうだ。

 今の内にプレゼント、用意しておこうかな…


  *


「…?」
「あ、起きた?」
 寝惚け眼のパティと目を合わせる。
「ア……ネちゃってマシタ…?」
 申し訳無さそうに起き上がる。
「ゴメンナサイ、ツマンなかったでしょウ…?」
「ううん、パティの寝顔見れたからよし」
「アゥ…ハ、ハズかしいですヨぉ…」
 照れるパティがとてつもなく可愛い。
「…ン、アレ?」
 ふと、パティが胸元にぶら下がるものに気付く。
「コレ…?」
「ん、誕生日プレゼント」
 寝てるうちにこっそりとね。

 ヘッドの中に写真を入れる事のできるペンダント。ロケットっていうんだっけか。

 それにしても着けてる最中に起きなかったのは僕の細心の注意がよかったのか単に眠りが深かったのか。

「流石に中身は入れてないけどね。好きなの入れてよ。家族の写真とかさ」
「……ユーキ、イジワルです」
「え?」
 きゅっ、とパティが僕を抱きしめる。
「こんなにステキなものもらったら、ユーキのシャシンいれるしか、ナイじゃないですカ……」

 そんなパティの言葉が………すごく嬉しい。

「ガッコウじゃあんまりアえなくてサミシイから、これにユーキのシャシンいれて、ずーっと、ずっとモっておきマス」
「…そっか」
「ハイ!」

 そう遠くない未来、少なからず離れてしまう可能性のある僕ら。
 今は、少しでも一緒にいたいから。
 離れたときでも、頑張れるように。

「ユーキ、カメラカメラ!」
「?」
「これからいっぱいシャシンとりまショウ! これにいれるシャシンも、フタリで写ったシャシンも、いっぱいいっぱいホしいデス!」

 パティが満面の笑顔で願う。僕としては、それに全力で応えなければならない。

「よし、じゃコンビニで使い捨てカメラでも買おうか」
「ハイ!」

 それじゃ、と僕が差し出す手を、パティが握り締める。


  ―――もっともっとオモイデ、Please……


 いつかのパティのことばが蘇る。

 いっぱい思い出を作ろう。
 それこそ、アルバムの一冊や二冊でおっつかないほどの……

 ふたりだけの、“想い出”を。


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 な、なんとか間に合った…

 てなわけで4/16、パティのバースデー記念ですよっと。
 あぶねーあぶねー、危うく当日中にUPできねーとこだったぜ(超滝汗

 アイマスキャラほど誕生日を把握して無いもんだからもうね…(トオイメ
 いやまあ、後日になって気付くよりはまだマシな方か。

 ちなみに、アメリカにも花見の習慣自体はあります。ワシントンDCのジェファーソン・メモリアルとか有名なようですね。

 いや、調べものしながらモノカキは時間が掛かる(滝汗

 今度はもうちょっと余裕を持って書くようにします…orz

 ええと、次は誰だっけか…