「夏だ!」
身体にまとわりつく、これでもかってくらいの熱気。
「海だ!」
白い砂浜、穏やかながら力強く波打つ水面。
「たーいよーうだーっ!!!」
そして、燦々と降り注ぐ、熱を帯びた光。
まさに、夏。
海水浴場に着くなり、大声で叫びたくもなるだろう。
「…だからってホントに叫ぶのはどうかと思う」
「えー」
こなたがブーイングする。
まったく、せっかく清楚な格好してるってのに台無しってもんだ。
まあ、それがこなたなんだけど。
・
・
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更衣室でいったん別れ、適当に場所取りして落ち合うことに。
この場合、場所取りは着替えが早い男の仕事になる。
そうそうに海パン一丁になった俺は、レジャーシートとパラソルを抱え砂浜に立つ。
流石に夏休みだけあってか人は多かったが、そこは平日ということもあり、経つパラソルの数はまばらだった。
少し開けた場所にパラソルを立て、シートを広げる。風で飛ばないように四隅を拾った石で押さえると、小さいながらそれなりの拠点が出来上がった。
「お待たせ」
ようやく出来た日陰の下で一息つくと、かがみさんたちがやって来た。
……ん、眼福眼福。
「ヘンな目で見たら殴るわよ」
「マサカソンナ」
…あれ?
「ところで一人足りないような」
「あ、こなちゃんは着替えもうちょっとかかるって」
疑問符を浮かべる俺につかささんが応える。
「へぇ、一番に来るかと思ったんだけど」
「そうよね。前に来たときなんか服の下に水着着込んでたくらいだし」
それもスクール水着。しかも小学校時代の。
呆れながら当時のことを述懐するかがみさん。
なるほど、スク水のこなたか。
それはかなり期待したいところではあるな。
「ゆ・う・く・ん」
と、ウワサをすればなんとやら。
彼女の声に振り向けば―――
言葉を失った。
「うわ……」
それはかがみさんたちも同様だったようで。
それもそのはず。こなたが着ていたのはスク水ではなく、いたってフツーの水着。
チューブトップタイプのビキニだ。
「あ、そのリアクションはスク水だと思ってたでしょ?」
ジト目のこなたの指摘に全力で目を逸らし誤魔化す。
まぁ、なんと言いますか。
これはこれで…いや、可愛いです。はい。
*
折角海に来たというに、このメンツ、泳げない人がそこそこいる。
というわけで、主に波打ち際で遊ぶことに。
ものっすごくベタに水のかけ合いをしてみたり、ビーチバレーに興じてみたり。
「ぶっは!」
素潜りタイムトライアルに挑戦中の俺が、息が続かなくなって脱出する。
きょろきょろとあたりを見渡すと、かがみさん、みゆきさん、つかささんは既にリタイア済みだった。
「さすがは男の方ですね」
感心したようにみゆきさんが呟いた。
「ん? つーか、こなたは?」
おおよそではあるが1分半くらいは潜っていた自信はある。
それ以上潜ってるのか。
「ムダにスキル高いな…」
「地味に失礼な発言ね…って、ゆうきくん、後ろ後ろ」
俺の背後を指差すかがみさん。振り返ると、水面にプカプカ浮かぶ蛍光グリーンの布……アレ?
「これ、こなたの水着じゃ…」
首をかしげた次の瞬間、盛大に水しぶきが背後から上がり、ぴとっと背中に何かがくっつく。
「へっへーん、私の勝ちだね」
「うわっ!?」
その声の主はやはりというかこなた。
……ってちょっと待て。
「ちょ、こな…おま!」
「いやー、水着が流されちゃってさー。ちょっと隠させてくんない?」
しれっと笑顔で言ってのける。
…ってことはまさか、なんか背中に当たる二つのぽっち的なのって!!?
「何が流されちゃった、よ。チューブトップがそう簡単に外れるわけないでしょ」
「バレたか」
こなたが舌を出した。
「ちょ、いいから離れてくれないか? 当たってるんだけどさっきから!」
「あててんのよ」
どっかで聞いたようなセリフをクスクス笑い付きで言うこなた。
「それとも………おっきしちゃった?」
「は・な・れ・ろ!」
ちょっとドスを聞かせると、こなたはしぶしぶながらも「はぁ~い」と離れた。やれやれ。
「……っ!」
「え?」
と、安堵したのもつかの間、こなたの体が急に沈んだ。
「こなた!」
慌てて引っ張り上げる。
「けほっ、けほっ。うー、海水飲んだ」
「大丈夫か?」
「ん、足つったみたい。大丈夫、足付くから片足でどうにか……あ」
「あ」
さっきは慌ててたから忘れてたが、こなた今半裸だった。
そしてバッチリ見てしまう俺なわけで。
「ぶはぁっ!」
鼻が熱くなり、一瞬意識がすっ飛んでいった。
*
「大丈夫?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
みゆきさんが用意していたポケットティッシュを鼻の穴に突っ込み、頭をとんとんと叩く。
「うーん、それにしても」
「?」
「ゆーくんのロリ属性疑惑が上がったことについて」
「待てコラ」
ぺた胸で鼻血=ロリコンって安直にも程が無いか。
「好きな女の子の裸を、不可抗力とはいえ見ちまったんだ。…そりゃ、鼻血の一つや二つ出るってもんだろう」
「…………」
「何?」
「は、恥ずかしいセリフ禁止!」
「何を今更」
というか、こなたの方が恥ずかしいセリフ連発してる気がするんだが。
* * *
「楽しかったね~」
帰りの電車の中、つかささんがにこにこ笑顔で口を開く。その思いは俺たち共通のもので、俺たちは異口同音に同意の言葉を返し頷いた。
…一人を除いて。
「すー、すー…」
こなたが体重を俺の肩に預け、夢の中にいた。
「疲れ果てて寝ちゃうとか、どんだけお子様だよ」
ジト目で呟くかがみさんだったが、そう言う彼女も疲労の色は隠せないようで、あくびをかみ殺していた。
「久しぶりに、精一杯遊びましたからね…」
みゆきさんも少し眠そうだ。
「…うぃにゅ」
謎の寝言を発しながら、寝こけるこなた。うわ、よだれよだれ。
「ふあぁ…」
と、眠気が俺にも感染ったようだ。
「ちょっと一眠りするかな……」
頭をこなたのほうに傾けて、寄り添うように身体を預ける。勿論、彼女の負担にならないように細心の注意を払う。
「ゆー、くん…」
「んー?」
「好き…」
「ん」
どんな夢を見ているのやら。寝言に律儀に応えて、俺は目を閉じた。
瞼の上からもまぶしい夕陽を感じながら、ゆっくりと意識が遠のいていく―――
・
・
・
「………で、ここ何処?」
「うわー、盛大に乗り過ごしちゃったねぇ…」
「ご、ごめんなさい…私まで眠ってしまいまして…っ」
「えー、次の電車1時間以上も先なの?」
うっかり全員で居眠りしてしまい、気がつけばここは何処やらと。
…ま、これも一つの“夏の想い出”ってことで。
-fin-
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あいも変わらずネタをつぎ込んでいます。もう何がなにやらw
だが私は謝らない(ベタ
元ネタ全部当てた人には次回作のリクエスト権を…
と思ったけどリクエストに答える力量はないので中止(ぉぃ
ま、解る人だけわかってほくそえんでください(何
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