炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼×クウガ】狼の牙と空なる我・シーン8<完結>

「終わった、か……」
「ああ」

 鋼牙の呟きに応え、ユウスケが変身を解き、振り返る。

「鋼牙」
「うん?」
「…いろいろ、世話になったな」
 ありがとう、と言って、ユウスケが深々と頭を下げた。
「気にするな」
『そう照れるなよ鋼牙。礼には素直に応えてやるべきだぜ』
 ザルバがカタカタと笑う。鋼牙は憮然とした表情で視線をそらした。
「それしても…」
 鋼牙が口を開く。
「アレは、一体なんだったんだろうな…」
 鋼牙が差すアレとは、変化した魔導火の色と、クウガの姿のことであろう。
 ユウスケは、うーんと腕組みをして首を捻ると、やがてふわりと笑った。
「よくわかんないな」
『なんだそりゃ』
「ただ……」
 呆れ声をあげるザルバに向けて、ユウスケが続ける。
「あの姿になったとき、不思議と恐怖とかそういうのは感じなかった。これは俺のカンみたいなものなんだけどさ、きっと、ずっと昔……俺より前に“クウガ”だったヤツも、こうやって、鋼牙のご先祖様と一緒に戦ってたのかもしれない」

 だから、なんていうか、“憶えてた”んだ。

 ユウスケが、そう言った。

「……そう、か」

 鋼牙が頷く。

 何度か、クウガを通して視えたビジョンを思い出す。
 あれは、かつてクウガと共に戦った、黄金騎士の英霊の誰かの記憶だったのだろうか……?

「……ん?」

 ふと、向かい合うユウスケの後ろの風景に違和感を覚える。

 空間の“ゆらぎ”のようなものがカーテンのように近づき、その中央が人の輪郭を成す。

「どうした、鋼牙……いてっ!」
 急に後頭部を小突かれるユウスケ。何事かと振り向くと、そこには見慣れた顔があった。

「……まったく、どこほっつき歩いてるかと思えば」
「つ、士!?」

 突然の闖入者に、鋼牙も言葉を失う。黒いボディースーツとピンク色のコートを纏ったその姿は魔戒騎士に見えなくも無かったが、鋼牙にとって見覚えのある顔ではなかった。

「っていうかなんだその格好」
「俺に訊くな」
「そんなことより! …無事でよかったです、ユウスケ」
 士と呼ばれた男のコートの陰に隠れていた少女が声をかける。
「夏美ちゃん…。うん、この人に助けてもらったんだ」
 鋼牙を紹介すると、夏美なる少女は丁寧にお辞儀をして礼を述べる。士はというと無言で首に下げていたカメラのシャッターを切っていた。

「…なるほど、お前の仲間…いや<ザルバ>ってわけか」
「は、ザルバ?」
『俺のことじゃねえぞ』
 指輪に目を向けるが、しれっと否定された。

 きょとんとなるユウスケに、鋼牙が薄く笑う。
 それを狙っていたかのように、シャッター音が小さく響いた。

「…さ、ユウスケも拾いましたし、ウチにもどりましょう」
「だな。世界を巡る旅は、まだ終わっちゃいない」
 こっちの“世界”に用はないとばかりに、士が踵を返す。

「……行くのか」

 鋼牙が声をかける。

「うん。こいつと一緒に旅をするのが、俺の目的だからな」
 屈託なく笑い、ユウスケが応えた。

「そうか。…なら、お前たちの旅の無事を、祈る」
『往く道に、幸運の風あらんことを…ってな』

「…ああ!」

 ユウスケは大きく頷くと、前を行く士に駆け寄る。
「……なんか、いろいろあったみたいだな」
 士が、ユウスケの横顔を一瞥して呟く。
「ああ、いろいろ…な」
「そうですか」

 歩く三人の姿が、色の無いオーロラの向こうに消え―――

 やがて、空間の揺らぎが収まる。


『……なんだったんだろうな、アイツは』

 鋼牙が、ただの空間となった目の前を見つめていると、ザルバが問いかける。

「さあ、な」

 帰路に着くべく歩き出す鋼牙が、ふと空を見上げた。東から陽光が少しずつきらめき始め、夜明けを告げる。
 もう数時間もしないうちに、空は、今日も青くなるだろう。



 ―――ユウスケのように、澄んだ青空に。






  -狼の牙と空なる我・了-




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 終わってしまった…

 当初の予定からはやっぱり伸びたけど、実を言うとちょっと短くもなっていたり。
 というのも、もともとこの次にエピローグを設けるつもりだったんだけど、この終わり方のあとだと蛇足かな、と思ったので。


 さて。
 士が登場していますが、この時点でのディケイドの時間軸は、一応9つの世界をまだ全て回っていないときです。具体的には「龍騎編」終了後~「響鬼編」直前あたり。
(ただし、電王編→カブト編移行期は「超・電王&ディケイド」にカブるので除く)
 世界移動中にちょっとアクシデントがあってはぐれちゃったイメージ。
 ストーリーを考案したのがディケイド放映直前だったので、世界の移動をどうするのかよく解ってなかったんですよね。
 その後写真館ごと移動することがわかって「これでどうやってはぐれるんだよ」と悩みましたが、まあそもそもユウスケがクウガの世界からキバの世界に行くのに写真館を介していないので、どうにでもなるかなーと(適当!

 <牙狼>の世界に来たはいいけど、やること全部ユウスケがやっちまったからすぐに次の世界にいけたんだぜ!(ぇ

 ……せっかく魔戒騎士にジョブチェンジしたのに…ねえ?w


 さて、一つ肩の荷が下りた…次はなにを負うかな…(自重しろ


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