炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼×クウガ】狼の牙と空なる我・シーン7

 クウガの身体を滾らせる魔導火は、同様に彼の心をも熱く燃やす。
「はっ!」
 一足跳びに肉迫し、パンチを見舞う。
 強烈な打突の衝撃に、魔導火の力が上乗せされ、<インクブス>は大きくのけぞった。

 “ぐっ!? …お、おのれ…!”

 4本の腕に大剣を握らせ、まとめて振り下ろす。
「おっと!」
 クウガが魔導火を纏った腕で防ぐと、剣は攻撃を阻まれると同時に燃え落ちた。
「…すげえ」
 自らに溢れる力に、高揚感すら憶えるユウスケ。
「…時間はかけない、一気に決めるッ!」
 畳み掛けるように、突き、蹴りを叩き込む。完全に防戦一方の<インクブス>が、少しずつ後退していた。


「………」
『…ん? どうした、鋼牙』
 いつしか、一心にクウガの戦いを見守る鋼牙に、ザルバが問いかける。
「……いや」
 それに生返事を返しつつも、鋼牙の視線は、クウガから離れることは無い。
 相棒が、その瞳のうちに、クウガを通してなにを“視て”いるのか……
『…そうか』
 なんとなく感づき、ザルバもそれ以上なにも言わず、同じくクウガの戦いに視線を向けた。


「…これで、終わりだ!」
 クウガが、丹田に力を込め、構える。
 と、霊石がスパークを始める。
「ん!?」
 僅かに驚くクウガ
「これは…」
『一体?』
 その変化は、鋼牙たちの目にも明らかになった。

 クウガがまとっていた魔導火が、真紅に変わったのだ。
 同時に、クウガの紅い鎧の縁が金色に彩られる。
「これ…は? …いや、これなら!」
 変化に戸惑いつつも、意を決し、その眼差しを<インクブス>に向ける。

「はッ!」

 つま先が大地を蹴り、

 数歩の助走の後―――跳ぶ。




「おりゃあああああああああ!!!」




 突き出された右足……いつしか金色のアンクレットを備えていた…に紅い魔導火が集まり、紅蓮の如く燃える。

 その足先は、ぶれることなく<インクブス>を狙い―――


 苛烈な衝撃が、大地を揺るがす。



 ……ややあって。

 蹴りを当てた反動で再び跳びあがり、クウガが静かに着地する。
 その背後で、印を刻まれた<インクブス>が炎に灼かれていた。

 “グギ……キ、サマ……”

 信じられない、といった表情で、<インクブス>が唸る。

 “イッタイ……ナニ…モ…ノダ……??”


「……通りすがりの、<仮面ライダー>さ」

 ゆっくりと立ち上がり、ユウスケが呟くようにそう言う。

「覚えておけ!!!」

 ふと浮かんだ、“友”の口癖を真似て。


 “オォ……ゴアァァ……!!!”


 大気を振るわせる断末魔の後、<インクブス>は一握の灰となって果てた。



  -つづく-


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 このシーンのラストは結構前から暖めてました。やっと使えたぜー。

 魔導火の変化とともに姿の変わったクウガの正体は、言わずもがなアレです。多分ディケイド本編じゃ出ないだろうなのでw(ぇ


 さて、折角なので(?)今回ようやく倒れてくれたホラー・インクブスの説明。


 ホラー・インクブス
 取り憑いた対象に恐怖や絶望を植え付け、その感情に染まりきった人間の肉体を内側から喰らい尽くすホラー。ホラーとしての姿は、喰ってきた人間の恐怖の対象などを具象化するため一定化しない(場合によっては素体ホラーとあまり変わらない姿になることもある)。世界各地で見られる数々の魔物伝承の正体は、それらに似た姿に変貌したインクブスではないかと見られる。
 今作中ではユウスケに憑依し、捕食こそ出来なかったものの、彼が心の奥底で恐怖する自らの“究極の闇”たるクウガ・アルティメットフォームの姿と力を模す。
 名前のモチーフは吸血鬼インキュバスより。

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