「はっ! …はっ、そりゃあっ!」
ユウスケ…クウガと、ホラー<インクブス>との戦いは、クウガがやや優勢に見えた。
<インクブス>は強大すぎるクウガの闇の力を少々持て余し気味なのか、その攻撃は大振りであった。クウガはその攻撃を最小限の動きで躱し、カウンターを叩き込むのだ。
しかし……
『…決定打は与えられないか』
ザルバがぽつりと呟いた。
“なかなかやるじゃねえか人間がよ? だが、ソウルメタルを扱えねえお前は、どんなに頑張ってもオレを斃すことはできねえぜ”
ケケケ…と下卑た笑い声を発する<インクブス>。
「くっ…!」
頭に血が上ったユウスケが力任せにパンチを放つ。が、大振りのモーションで仕掛けたそれは、<インクブス>に易々と躱され、反撃のチャンスを与えてしまった。
「ごはぁっ!?」
脇腹に黒い大剣の一撃を見舞われ、クウガの体が地を転がった。
「ユウスケ!」
声を上げる鋼牙に、ユウスケはふらつきながらも自らの無事を示して見せた。
「…だったら…これでどうだ!」
紫色の鎧をまとい、手にした大剣に力を込める。
「おりゃああああああっ!」
<インクブス>からの攻撃を正面から受け止めながら、切先を全力で突き出す。肉が裂け潰れる音が響き、刀身が<インクブス>の身体を深々と貫いた。
その刺傷から、クウガのエネルギーが注ぎ込まれ、熱を帯びた紋章が浮かび上がる。クウガが数多くの敵を倒して来た必殺の一撃だ。
“効 か ね え な”
剣を突きたてたまま動かないクウガを、四つの握り拳が襲った。
「うわあっ!」
強固かつ重厚な装甲もこれには耐え切れず、クウガの体が浮き上がり、地に叩きつけられる。
「く、くそぉっ…」
「…………」
再び紅い鎧に戻ったクウガを、鋼牙が渋面で見つめていた。
ユウスケのことは詳しく知っているわけではない。昨日今日知り合った程度だ。
だが今、彼の力になれない自分を歯痒く思っていた。
(なにか……なにか出来ないか……)
手にした魔戒剣を見る。これを貸し与えれば……
いや、いかなクウガとはいえ、魔戒騎士以外にソウルメタルを完全に使いこなすことは不可能だろう。仮に使いこなせたとしても、紫色の大剣に変化させれば、その特性まで変わってしまうはずだ。
「……!」
と、思い悩む鋼牙の脳裏に、とあるヴィジョンが浮かんだ。
闇の中に佇む紅い鎧の戦士…クウガ。その身体を、緑色の炎が覆う…
「…なんだ、今のは…?」
緑の炎が魔導火であることは容易に想像が出来た。それをまとうクウガのヴィジョンは、なにゆえに浮かんだのだろうか……
『考えてもしょうがないってこともあるぜ』
その思考を読んだかのように、ザルバが口を開く。
「…?」
『思いついたままに、やってみるってのも手さ』
ザルバの言葉に、鋼牙はわずかに逡巡したが、やがて、大きく頷いた。
「ユウスケ!」
声を張り上げ、名を呼ぶ。僅かに視線をこちらに向けた彼に、鋼牙はライターから魔導火を放つ。緑色の火種が、ぼうっと輝いた。
「こいつを…使え!」
ライターを振り上げると、火種がライターから離れ、浮き上がる。刹那、魔戒剣が走り、空を裂いた衝撃波が、魔導火をユウスケの元に届けた。
「うわっ!」
突然自分に向かう緑色の火に、思わず身構えるユウスケ。
「おわっちゃ熱っちゃ…あれ? 熱くない?」
そして、自らの身体に起こった変化を目の当たりにし、驚愕する。
「こ、これは…!」
腕を、脚を、全身を揺らめく炎が鎧のように纏われていた。
『<烈火炎装>だ! これならホラーにも通用するはずだぜ!!』
ザルバが説明する。
「そ、そうか…。わかった、やってみる!」
クウガが再び拳を握り、<インクブス>の前に立ちはだかった。
-つづく-
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勝ちフラグ立ちますた(ぉ
イメージとしては「仮面ライダーTHE NEXT」におけるV3のアレです。
クウガのパワーアップはコレだけに留まりませんのでお楽しみに。
…しかし、クウガの新・最強フォーム…カッコよすぐる……!
(本作品は、7/3に執筆したものです)
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