【クロスオーバー】牙狼×クウガ
「終わった、か……」 「ああ」 鋼牙の呟きに応え、ユウスケが変身を解き、振り返る。 「鋼牙」 「うん?」 「…いろいろ、世話になったな」 ありがとう、と言って、ユウスケが深々と頭を下げた。 「気にするな」 『そう照れるなよ鋼牙。礼には素直に応えてやる…
クウガの身体を滾らせる魔導火は、同様に彼の心をも熱く燃やす。 「はっ!」 一足跳びに肉迫し、パンチを見舞う。 強烈な打突の衝撃に、魔導火の力が上乗せされ、<インクブス>は大きくのけぞった。 “ぐっ!? …お、おのれ…!” 4本の腕に大剣を握らせ、ま…
「はっ! …はっ、そりゃあっ!」 ユウスケ…クウガと、ホラー<インクブス>との戦いは、クウガがやや優勢に見えた。 <インクブス>は強大すぎるクウガの闇の力を少々持て余し気味なのか、その攻撃は大振りであった。クウガはその攻撃を最小限の動きで躱し、…
「くぅっ……」 空中に投げ出されながら、なんとか体勢を整えようとしていたユウスケの背後に、高層ビルの壁面がそびえ立っていた。 「マズい!」 咄嗟に丹田…霊石に力を込め、叫ぶ。 「超変身!」 クウガの鎧が変化した刹那、その身体がビルに強かにたたきつ…
指令書が示す場所…某企業のビルに侵入した鋼牙とユウスケは、その内部の惨状に眉をしかめた。 「…なんてこった」 苦々しく呟いたのはユウスケだ。エントランスを入ってすぐに見かけた二人の受付嬢が、次の階のフロアでは働いていた会社員が全て…一人の例外も…
『どう思う、鋼牙?』 「……何がだ?」 ページをめくりながら、鋼牙が生返事を返す。 『あの男のことさ。一体何者なんだかな』 「気にしても仕方がない。少なくとも敵では無さそうだしな」 『ほぉ…そう見るか』 ザルバの少々茶化す風に聴こえる言葉をスルーし…
「う………ん…」 浮き上がった意識が瞼を持ち上げる。まだぼやけた視界に、黒い何かが動いているのが見えた。 「あぁ、お目覚めになられましたか」 壮年の男性の声だ。その声をきっかけに、“彼”の意識は少しずつハッキリしてきた。 「俺は……ここは、一体…?」 …
「っ!」 牙狼剣を傾け、力任せに押し付ける“敵”……今はこうとしか呼称出来ない……の剣を逸らす。 “敵”は僅かにたたらを踏んだように見えたが、すぐさま体勢を立て直し、荒々しく腕を振り回した。 渾身の力で剣を振るう“敵”。だがそれゆえに大振りであり、魔戒…
「……ひどいな、これは」 白いオーバーコートに身を包んだ青年―――魔戒騎士・冴島鋼牙は、周囲の惨状を一瞥して独りごちた。 『ああ…このあたりは結構有名なデートスポットだったはずだが…見る影も無いとはこのことだ』 鋼牙の手元から声が響く。左手の中指に…