炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼×クウガ】狼の牙と空なる我:シーン3

『どう思う、鋼牙?』
「……何がだ?」
 ページをめくりながら、鋼牙が生返事を返す。
『あの男のことさ。一体何者なんだかな』
「気にしても仕方がない。少なくとも敵では無さそうだしな」
『ほぉ…そう見るか』
 ザルバの少々茶化す風に聴こえる言葉をスルーし、魔界文字で書かれた文章を指でなぞっていく。
『さっきアイツは<クウガ>って言ってたが、そんな名前の魔戒騎士は聞いたこともないしなァ…』
「少なくとも魔戒騎士ではないだろうな」
『まァな。だが、魔戒騎士に近しい“力”を持ってるのは間違いない』
 それは対峙した鋼牙本人が一番よく分かっている。
「ヤツが何者だろうが、今は関係ない。今やるべきは……」
『わかってるよ鋼牙。…っと、見つけたぜ。こいつだ』
 ザルバの指示に鋼牙の指が止まる。
『銘は<インクブス>。人間の内に入り込み、悲しみ、憎しみ、妬み嫉みの類を引き出し、それに汚染された人間の魂と肉体を混ぜ合わせ、内側から喰らう…か』
 やれやれ、とザルバが溜息交じりに呟く。
『十中八九、こいつだな』
「だろうな」
 さて、対策でも…とザルバが呟きかけるのを、不意に開いた扉の音がさえぎった。
「鋼牙様!」
「来たか!」
 差し出された指令書を魔導火で灼く。内容は件の魔獣が再び現出したとの報であった。

 白いコートを羽織り、鋼牙が屋敷を飛び出す。
「待ってくれ…!」
 その背中に、声がかけられた。
「お前は…」
『身体はもういいのか?』
 ザルバの問いに、頷いて応える。
「何の用だ?」
「行くんだろ? その…ホラーってのを倒しに」
「ああ」
 鋼牙の答えに、彼は一瞬、逡巡する。その後、
「俺も…俺も連れて行ってくれ!」
 しっかりとした声で、そう言った。
『はあぁ?』
「そのホラー、俺をあの姿にしたヤツなんだろう? あの人…ゴンザさんから聞いたんだ!」
 ゴンザのやつ、余計なことを…
 鋼牙が憮然と呟く。
「なら俺にも関係がある! だから…!」
『いいんじゃねえか?』
 断りかけた鋼牙にザルバが声をかける。
『ただし、こっちはお前さんの面倒はみれねえぜ?』
「ザルバ…!」
「ああ、わかってる。自分の身は自分で守るさ」
 彼の頑なな思いに、鋼牙は大きく溜息をつく。
「……わかった。好きにしろ」
「ああ、ありがとな」
 踵を返し、歩を進めようとする鋼牙。と、その足が止まる。
「…おい」
「ん?」
「そう言えば…まだ、名を聞いていなかったな。俺は冴島鋼牙。…お前は?」



「俺はユウスケ。小野寺ユウスケだ」


  -つづく-

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 ホラーの名称の元ネタは夢魔インキュバスの別名より。

 さて、ようやく「今作における」クウガの中の人(ぉぃ)が判明したわけですが。

 …え? もう知ってた?


 というわけで、厳密に言ってしまうと牙狼とディケイドのクロスになっちゃうんだよね。いやディケイドは出てこないんだけど。

 イメージとしては、時空移動中になんらかの要因で士たちとはぐれ、「牙狼の世界」に迷い込んでしまった…ってとこで。

「ディケイド」本編じゃ変身どころかマトモに活躍していないユウスケなので、こっちでは頑張らせてみようかなとw

 いや、アギト編には期待してますよ? あと超・電王にも。






 …アギト編、結局G3-X着たきりスズメでクウガに変身しなかったな…出番は多かったけど