冴島鋼牙が、シンケンジャーと名乗る侍たちにであって、数日が経った。
あれ以来、彼らと出会うことも、ホラーを追うことも無く、それなりに静かな日々が続いていた。
だが、それが今夜突然破られた。
「……なんだこの数は…?」
指令所に従い到着した場所には、眼前を埋め尽くさんばかりにホラーの群れがひしめいていた。
『おいおい……だれかゲートつぶしをサボったヤツでもいるのか…?』
ため息混じりにザルバが呟くが、ここ数日、ゲート……ホラーが人間界に現出するために必要な<陰我>を有したオブジェ……の破壊は鋼牙含め、管轄内の騎士らによって滞りなく遂行されているはずである。
『何者かが意図的に呼び寄せたか……。ま、考えるのは後だな』
すっ、と魔戒剣を抜く鋼牙に、ザルバがそう軽口を叩く。
すっ、と魔戒剣を抜く鋼牙に、ザルバがそう軽口を叩く。
魔戒剣の刀身を左拳に沿え、ザルバの歯に噛ませる。刃を滑らせると、ザルバの歯と重なり合ったところがバチバチと火花を散らせた。
「………!」
音も無く跳躍し、鋼牙がホラーの群れの只中に躍り出た。
*
『これで……28体か』
ザルバの呟きを聞き流す。倒した相手の数を数える趣味は鋼牙にはなかったし、あの群れを見た時点でカウントすることは無駄だと判断したからだ。
それくらい、今回の敵は数が多い。大半以上があまり強くない素体ホラーであったのが唯一の幸いといえた。
「…はぁっ!」
魔戒剣を横薙ぎに振るい、2体のホラーを撃破する。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
さすがの鋼牙も、蓄積された疲労に抗えず、肩を上下させていた。
「っ!」
意を決し、鎧を召喚すべく魔戒剣を天に掲げた。
その刹那、どこからとも無く黒い気配が周囲に蔓延し始めた。
『…鋼牙、後ろだ!』
相棒の声に振り返ると、新たな体を得たらしい異形の魔獣がその腕を大きく振り上げていた。
「うっ…!」
咄嗟に魔戒剣で防御するが、その膂力に負け、剣は鋼牙の手を離れ跳ね飛んでいった。
(しまった…!)
巨体を見上げる。流れる水のような曲線を描く鎧を纏った、悪鬼のような魔獣の姿が、鋼牙の瞳孔に飛び込む。
『なんだこのホラー? 感じたことのない気配だぜ……?』
ザルバの声が、僅かに戦慄を帯びる。
(万事休すか)
ぐっ、と奥歯をかみ締める鋼牙。
「―――っは!」
と、渦巻く瘴気を断ち切るような、凛とした声が響き渡った。
「?」
鋼牙が、視界の端に人影を捉える。先ほど飛ばされた魔戒剣を握った青年が跳び込み―――
鋼牙が、視界の端に人影を捉える。先ほど飛ばされた魔戒剣を握った青年が跳び込み―――
「やあっ!!!」
鋼牙に襲い掛かる魔獣に、一太刀を浴びせた。
-つづく-
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自分で書いといてなんだけど、鋼牙のピンチってなんか書きにくい…
さて、そんなピンチの鋼牙を助ける一太刀。その正体や……
え?バレバレ?