炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【必殺!】異伝・仕事人相対/第6場

 ナナシ連中を屠られ、いつしか独りになっていたアヤカシ<ウロミタマ>を取り囲む、五色の侍たち。

「もう逃げられんぞ、おとなしく我らの刀の錆となれ!」
 言うが早いか、シンケンブルーが青い円盤をシンケンマルに嵌め、回転させる。清浄な気をまとった飛沫が刀身を包み込む。

「シンケンマル・水流の舞ッ!」

 まるで歌舞伎のような華麗な足裁きで懐に飛び込み、強烈な一太刀を浴びせる。

 ……が、

「なんのぉっ!」

 刃が触れる刹那、<ウロミタマ>の輪郭が希薄になり、シンケンマルはむなしく空を切る。

「な、何ぃ!?」

 思わずたたらを踏んでしまうブルー。煙のようにふわふわと漂う<ウロミタマ>を、レッドたちも切りつけるが、暖簾に腕押しの如く、すり抜けてしまう。
「ケラケラケラケラ…」
 あざ笑う<ウロミタマ>が五人に体当たりを仕掛ける。実体を持たないハズの体は、通過した瞬間に彼らに衝撃を与え、弾き飛ばす。

「…こいつ、やる!」
 シンケンマルを杖代わりに立ち上がるレッド。と、漂う<ウロミタマ>を追っていた視線が止まった。
「…まさか!」

 <ウロミタマ>がにやりと笑う。その先にいるのは……

「逃げろ、そこの同心!」

 声を荒げるレッドに、小五郎がピクリと反応したが、時既に遅し。
 <ウロミタマ>は煙のような形状になり、するすると小五郎の鼻から体内に滑り込んでいった。
「しまった…!」

「お、おい…大丈夫か……?」
 駆け寄った涼次が肩を叩こうとした、次の瞬間。
「!」
 猛烈な殺気を感じ、後ろに飛びのく。
「ってぇ…」
 痛みに顔をしかめながら、左の手首を押さえる涼次。強く掴んだ指の間からは、鮮血が垂れていた。

『くくく…惜しいな。刀が折れてなきゃ、今頃手首切り落としてたんだが…』
「!?」
 小五郎の口から、おどろおどろしい声が聞こえる。声そのものは彼のものであったが、その奥底からは、別の声がかぶさって聞こえていた。

「ちぃ…」
 レッドがショドウフォンを取り出し、モジカラを発動しようと構える。

『おーっと、待ちな』
 が、それをとめた<ウロミタマ>が、小五郎の腕を動かし、首筋に折れた刀を当てて見せた。
『ヘタなマネしたらこいつの首落とすぜ…?』

「…くっ、卑劣な!」
「でも、どうしよう…? あれじゃ手が出せへん」

 歯噛みするピンクと、苦悩するイエロー。

『そうそう…そうやっておとなしくしてれば……いいんだヨッ!!!』

 下卑た笑みを浮かべながら、小五郎にとり憑いた<ウロミタマ>が荒々しく刀を振るう。

「こと!」
 思わず動きを止めていたイエローをピンクが引っ張り、次の瞬間、きらめく刃が空を切った。

『へっへへ…さっきのおっさんとは違って、この体はいいねぇ…強くて、良い感じに腐ってやがる。…俺たち“外道”に近ぇなァ…』

 涼次を斬った際に付いた血を舐め取り、<ウロミタマ>が笑う。

「外道だと?」
『おうともさ。…こいつァ同心らしいが、裏では相当の人間を斬ってやがる……。最近三途の川に来たっていう人間も生きながらに外道のニオイがプンプンしていたが、こいつも相当なもんだぜ』

 切っ先のない刀をレッドに向ける<ウロミタマ>。

『いっそ俺ごとこいつを斬ってみるかい? なかなかに強ぇアヤカシになるかも知れねえぜ。…だがまァ、その前に俺が…テメェを斬るけどな!!!』

 おらぁ! と吼え、小五郎の体がレッドに向けて駆け出し、刀を大きく振りかぶった。


  -つづく-


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 いきなり強気になっているなこのアヤカシw

 この展開は、寝てたらふと思いつきました。つーかまぁ、せっかく他人に憑依する、という特殊能力あるんだから使わなきゃもったいない!ということでw

 さて、この窮地。シンケンジャー、そして小五郎はいかに乗り越えるのか…?