その町は、風に愛されている。
大小さまざまな風車が風に舞い、穏やかな空気の流れが街を洗い流してゆくのだ。
しかし、時にその風はにごることもある。
「ゴアァァァッ!!?」
無人のスタジアムの客席に、人のものとは思えない唸り声が轟き、異形の怪人が転がる。
「どうした…もう終わりか?」
苦しそうにあえぐ怪人を眺めるのは…これまた異形の姿。しかし、そのスタイルはどこかシャープで、醜悪さは感じられない。
「その程度の“色”で……アレに手を出したか!」
ぎっ、と握りこぶしに力をこめる。と、拳を中心に右腕が赤熱化した。
「潰えろ……!」
腹から響く声とともに、怪人が飛び上がり、今なお倒れ付した怪人に肉薄する。
「…はぁっ!」
振りぬかれた拳が、異形の胸部を強かに打ちつける。行き場を失ったエネルギーが衝撃波となって周囲に風を呼び、いくつかの風車が逆回転した。
「……ふぅ」
ため息を一つつき、怪人がゆっくりと立ち上がる。もう片方の怪人の姿は既になく、泡を吹いて気絶した男が一人と、粉々になったUSBメモリのようなものが転がっているだけであった。
やがて、怪人の輪郭がぶれ、人の姿に変わる。
否、戻る。
「………くそっ」
吐き捨てるように呟き、右目を抑える。
「まだだ…まだ視える……!」
手に握っていたUSBメモリをポケットに突っ込み、くるりときびすを返してスタジアムを後にする……男。
「俺は……いつまで戦い続ければいいんだ……?」
その呟きは、吹き抜ける風にさらわれ、誰の耳にも届くことはなかった。
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その街は、風に愛されている。
人は街を、風舞う都……<風都>と呼ぶのだ。
仮面ライダーW/EXTRA EPISODES
JとF/イーヴィル・カラーズ
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さて、そんなわけで、ダブルSSスタートなのです。
パイロット版(1・2話)が終わった時点で書き始めるとかどんだけだよと自らに突っ込みいれつつ。
…まぁ思いついたんだからしょうがない。
こまけえこたあきにすんな!の精神でいきましょう(ぉぃ
次回をお楽しみに!