炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

VERSUS SPACE PIRATE/シーン3


 ――ギンガ星系。

 <星獣>とよばれる神秘の動物たちが住まう、5つの惑星で構成された星系である。

 3000年以上前から存在が確認されているこの星獣たちは、かつて地球がとある宇宙海賊に攻め込まれた際に地球に降り立ち、住人と力を合わせこれを撃退、封印するに至った伝承を持つ。
 ゆえに宇宙の民からは、理不尽な侵略への抵抗の象徴とされ、この星系を一種の聖域とし、不可侵が暗黙の了解となっていた。

 ともすれば、全宇宙の支配を目論む宇宙帝国ザンギャックからはジャマな存在だと思われそうだが、上層部は「所詮伝承は伝承」だと放置を決め込んでいるらしい(数年前の第1次地球侵攻の際にも目撃情報があったらしいが、軍の戦闘記録には残っていなかったようである)。


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 そのうちの一つ……緑色の大気に包まれた惑星の片隅で、真紅に燃える一点が現れた。

「うわっ……つつつつ!」

 ファイブテクターで守りながらも、大気との摩擦で真っ赤に燃えるファイブブラック。
 その中身たるハカセが、全身に突き刺さる熱気に、情けない悲鳴を上げていた。

「た、確かに突入はできてるけど、熱っ、熱さはどーにも……!」

 せめて大気圏に突入しても耐えうるマシンを持ったレンジャーキーでもあればなぁ……と心中でボヤくハカセ
 もっとも、仮にあったとしても突入真っ只中での豪快チェンジは流石に危険であるが。

「……うわっ!?」

 不意に、大気の圧力と高熱が消え去り、歪んでいた視界が一気に開ける。どうにか大気圏を抜けたらしい。同時に、ハカセの身体が急激に重力に引っ張られた。

「おわっとととと!?」

 このままでは地面への激突は免れない。もっともファイブテクターを装備している以上、激突してもさしたる問題はないだろうが。

「そう言う問題じゃない!」

 ……ぶつかるのは嫌らしい。

 どうにか軟着陸を試みようと、ハカセの手が別のレンジャーキーを取り出した。

「豪快チェンジ!」


   -HU――――――――RRICANEGER!-


「ハリケンウィンガー!」

 忍風戦隊ハリケンジャー、そのレッドにチェンジし、専用のグライダーを召喚する。空気を受け止めた翼が落下スピードを落とし、ようやくハカセは安堵……

「のわーっ!?」

 できなかった。

 至る所から吹き荒れる風が、ハリケンウィンガーごとハカセをもみくちゃにする。きりきりと周りひっくり返り、しばらくの後。

「ふべっ!」

 変身が解けたハカセが、地面に頭から突き刺さった。

「………んがーっ! なんなんだよもーう!」

 泥だらけのハカセが、やけくそに叫ぶ。
 ハカセが降り立った……もとい、墜落したのは、ガルコン星。緑色の大気が織り成す、風の惑星である。
 その異名が示す通り、常に何処かしらで、そよ風から突風、強風、暴風に至るまで、おおよそ名前のある風の全てが吹き、ガルコンの自然を揺らしていた。

「みんなは大丈夫かなぁ……?」

 まぁ自分よりは無事に到着しているだろうと思いながら、ハカセはモバイレーツを起動する。

マーベラス? みんな?」

 しかし、スピーカーから聞こえてくるのは耳障りなノイズのみである。

「妨害電波が出てる? さっきの連中が発してるのかなぁ……」

 連絡が取れないのならば仕方ない、とモバイレーツを仕舞い、ともかくゴーカイガレオンに戻る手立てを考える。

マーベラスだけが残ったんじゃ、ガレオンを直せないだろうしね。一応緊急マニュアルは残してるけど、読んでるとも思えないし」

 本人がいない事をいいことに割りと酷い発言をするハカセである。

 と、その後頭部に何かが激突する。

「あ痛! ご、ごめんマーベラ……あれ?」

 船長に小突かれたものと勘違いしたハカセが振り返れば、当然そこには誰もいない。「なあんだ」と胸をなでおろしたハカセの視線が、足元に光るものを見つけた。さっきぶつかってきたのはこれだろうか。

「……これ! ギンガマンのレンジャーキー!?」

 風に乗って跳んできたらしいそれは、海賊たちの探し物であった。

「ほう、先にとられちまったか。……まァいいや。とられたんなら奪い取るまで……ってな」

 それが海賊ってモンだろう? と言い放つ低い声。顔を上げたハカセの視界に飛び込むのは、厳つい身体の大男だった。

「っお前、バルバンの!」
「おうよ。壊王シーバクたぁ俺のことだ」

 巨大な斧を担ぎ、ニヤリ、と視線をハカセの持つレンジャーキーに向ける。

「っつーわけでよ、てめえの持ってるソレ、獲らせてもらうぜ……!」

 斧を握る手が一瞬軋みをあげたかと思った刹那、暴風もかくやの斬撃が飛ぶ。「うひゃあっ!?」と素っ頓狂な声を上げながら寸でのところで躱したハカセの、その足元で地面が爆ぜた。

「わっ……悪いけど、ここで戦ってるほどヒマじゃないんだ! レンジャーキーもこっちにあるしね。僕は逃げさせてもらうよっ!」

 言うが早いか踵を返し、ハカセが脱兎の如く駆ける。マシンはないが、確か大気圏を脱出できるメカを持った戦隊のレンジャーキーがあったはず、と探すハカセの耳朶に、猛烈な破砕音が届いた。

「追いかけっこは言うほど得意じゃねえが……嫌いじゃねえぜ……?」

 ガハハと笑い声を上げながら、シーバクが斧を振り回しながらゆっくりとハカセを追う。荒れる大斧の軌跡が、風を裂き、地面を抉る。

 歩くシーバクに対し、可能な限りの全力疾走で走るハカセだったが、ひっきりなしに届く爆音に、その足を止める。
 その音には聞き覚えがあった。

「……っ」

 かつて、自分の母星が、ザンギャックにより侵略を受けたときの音。
 すべてが、壊される音。

「……っ!」

 あの時は、なす術もなく……ただその音から逃げることしかできなかった。

「……めろ……」

 だが、今は……違う。

「やめろよ!」

 振り返り、シーバクを睨みつけるハカセ。斧を止めたシーバクが「ああん?」と睨み返した。

「星を……壊すなっ!」
「あんだ? じゃあ代わりにてめえを壊させてくれるのか?」

 吐き出される害意を孕んだ声に気圧される。しかし、退かない。前に出る。

「僕は壊されないし……星も壊させない!」

 自分の分身を、ゴーカイグリーンのレンジャーキーを掲げ、叫ぶ。

「豪快チェンジ!!」


   -GO―――――KAIGER!-


「派手に行くよっ!」

 ハカセが手汗をぬぐいつつ、握り締めたゴーカイガンのトリガーを一息に引き絞った。


   -つづく-




 最初のバトル(まだ始まってねえw)はハカセことドン・ドッゴイヤー。

 ……うん、やっぱ俺ハカセ好きやわ。
 1シーン大体1000文字前後で切ってる俺にしては書き込みすぎるくらいにはw

 ちなみに文中で軽く言及している大気圏突入やら惑星脱出云々は、メガレンジャーのこと。
 サイバースライダーって、劇中で単独で地球離脱してる描写があるんですよね……観も蓋もない言い方すれば、何の変哲もないサーフィン型マシンなんですが。

 仮面ライダーフォーゼのパワーダイザー&マッシグラーでも大気圏離脱は可能ですが、月面までイケないことを考えると、サイバースライダーはそれが可能なのでスゲエINETマジスゲエ。
 (OPでの描写のような、一種のワープ空間を用いているからかもしれませんが)


 で、今回使わなかった理由は単純な話。
 この時点でまだメガレンジャーのレンジャーキーは未入手なため。ってだけですw

 まぁ、あったらあったであっさり分断状態が解決してしまったりもするので、その辺を防ぐ作劇的な問題もありきなんですがw
 (ついでに言えば大気圏突入ネタにファイブテクターをどうしても使いたかったというのもw)

 さて、本来であれば次回はこのままハカセVSシーバクと至るんでしょうが、次回はガリラ星にカメラを切り替えてお送りいたします。

 まぁそう言うこととお察しいただければ。