炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

VERSUS SPACE PIRATE/シーン6


 こめかみに断続的な痛みを感じ、キャプテン・マーベラスが目を覚ます。

マーベラス! マーベラブッ!」
「いてーよ」

 つつき起こそうと奮戦していたナビィをでこピンでふっとばし、ふらふらと立ち上がる。窓からは青々と広がる草原が見え、ひとまず目的地に着いたことに気づいた。

「とりあえず、無事に着いたか……」
「これを無事って言うんならそーなんだろうけどね。マーベラスの中ではさぁ」

 歯に衣着せないナビィを「うるせえ」の一言で小突き、コンソールのメンテナンスハッチを開く。

「トリ、マニュアル!」
「はいはーい」

 ハカセお手製の「緊急マニュアル」を開き、ざっくりと目を通す。

「……ハカセの野郎、俺をなんだと思ってるんだ」
「なになに……ぷぷっ、これはわかりやすいねぇ。わかりやすいくらいにー♪」
「……まぁいい。とりあえず直すぞ」

 たとえて言うなれば「サルでも判る」と評されるであろうマニュアルとにらめっこしながら、マーベラスが修理に取り掛かる。ナビィの役目は彼の指示に応じての工具を受け渡しだ。

「ほい、ドライバー!」
「ニッパー寄越せっての……」

 ・
 ・
 ・

「よし、こいつで粗方……」

 メンテナンスハッチを閉じて、マーベラスが一息つく。

「んじゃ、早速動かそうよ!」
「おう……」

 よっこらせ、と立ち上がるマーベラスの表情が一瞬強張り、振り向きざまにゴーカイガンを撃ち払った。「ナニゴトー!?」と射線上に飛び出すナビィを蹴飛ばして、その先を睨みつける。

「はッ、結構な歓迎振りじゃねェか、船長さんよ」
「てめえに船長呼ばわりされる筋合いはねェよ」

 くくくっ、と含み笑いを浮かべながら、操舵室に顔を出したのは、ガンマンスタイル調の異星人だった。

「バルバン……」
「掌砲長ダイバー……てめえの持ってるレンジャーキーを奪いにきた男だ」

 こいつごと、な。と呟くダイバーの右手には、黄色いレンジャーキーが握られていた。

「あ、あれ!」
ギンガマン……ギンガイエローのレンジャーキーか」
「ガベリック星には誰も行ってなかったみてえでな。おかげで手間が省けたぜ」

 これ見よがしにレンジャーキーをちらつかせるダイバー。

「そうだな。確かに手間ァ省けたみてーだ……わざわざ持ってきてくれるたぁなッ!」

 再びゴーカイガンを撃つマーベラス。今度はダイバーもショットガンで応戦する。

「おらぁっ!」
「そらそらぁっ!」
「ぎにゃーっ!? 折角直したのに壊れちゃうよーっ! 外でやってってばー!」

 自分の方へ向かってくる銃弾をマーベラスのゴーカイサーベルと、ダイバーのコンバットナイフが弾く。飛び交う跳弾を掻い潜りながら、ナビィが喚いた。
 互いに銃弾を捌きながら、少しずつ間合いをつめていく両者。刹那の隙を突き、マーベラスが操舵室を飛び出し、ダイバーに追わせる。

「逃がすかよッ!」

 銃声とともにダイバーが吼える。ショットガンの散弾がマーベラスの脚を掠め、痛みに足をもつれさせたマーベラスが飛び込んだサロンの床に転がった。

「っつ……」
「さァて……トドメ刺されたくなけりゃぁ、とっととギンガレッドのレンジャーキーを渡すこった」

 銃口とダイバーの双眸が、鈍く光る。

「命惜しさにテメーの宝を手放すかよ……それが海賊ってモンだろう?」
「違ェねえな……なら、てめえをぶっ殺してから奪い取ってやるよッ!」

 ダイバーの指がトリガーを捉える。引き絞られる一瞬、マーベラスがサロンのコンソールに隠されたボタンに手を伸ばした。

「ゴーカイガレオン、再起動ッ!」
「うおっ!?」

 ボタンを押し込むと同時に、ゴーカイガレオンの船体が大きく揺れ、ダイバーが体勢を崩した。

「おぉらっ!」

 怯んだところに体当たりを浴びせ、自身もろともダイバーをガレオンから追い出す。両者がもみ合いながら地面に激突し、全身に走る痛みに、二人して声をなくして転がりまわった。

「っっ……ナビィッ!」
「りょーかい! 次元圧縮ハッチ展開、ゴーカイマシン全機、全速発し~~~ん!」

 マーベラスの指示に応えたナビィの操作が、ガレオンの甲板ハッチを開き、そこから入れ子状に格納された4機のゴーカイマシンが一斉にガレオン星の赤い大気を突破して行った。

「ってめ……どおりで本気で向かってこなかったわけだぜ……仲間の援護が目的だったとはな……。だが、お仲間ンとこにもレンジャーキーを奪いにヤツらが行ってるぜ? 折角の援護も無駄に終わっちまうだろうよ!」
「……そいつはどうかな?」

 ゴーカイレッドのレンジャーキーを突きつけながら、マーベラスが不敵な笑みをダイバーに向けた。

「俺の“仲間”は、強いぜ? 俺と同じくらいにはなッ……豪快チェンジ!!」


   -GO―――――KAIGER!-


 モバイレーツの雄叫びが、真紅の光をマーベラスに注ぎ込み、その姿を赤き海賊へと変えるのだ。

「さぁ……これで気兼ねなしだ……派手に行くぜッ!!!」

 ダイバーが撃ち放つ散弾の向かい風に、マーベラスが突貫した。



   -つづく-




 対戦カードそろい踏みいたしましたっと。

 ひとまず残党軍の創造主たるレオ女史のご指示どーりとなっておりますが、まぁ順当ですよね。
 一応、彼らのバトルはほぼ同タイミングで発生しています。少しずつズレてはいますが。
 マーベラスvsダイバー戦だけ、ダイバーがガベリック星に寄ってる&マベちゃんがガレオンの修理をしていたので、他の3戦よりちょっと出遅れています。

 さぁ、しばしのブランクを挟みますが、次回以降は宇宙海賊同士の大決戦、後半戦。勝つのはバルバンか、ゴーカイジャーか!?