「っは!?」
急激に浮上した意識に、自分の身体が跳ね起きるのを感じる。まず視界に飛び込んだのは白亜の天井。
「……天国の天井ってのは意外と無機質なんだな」
「いやいやいやいや」
目を覚ましたまえよ、ヒーロー君? と苦笑交じりの声が聞こえ、視線を下げると、いかつい顔のエイリアンが柔和な笑みをたたえていた。
……あれ? なんか見覚えがある人(?)だが……
「って、あんた……もとい、あなたは!?」
頭に煌く黄金のエンブレム。それは歴戦の勇士の証と言われている。そしてそれを戴くものを、俺は一人しか知らない。
「コマンダー……ローレル!?」
ディメンジョンポリスが総司令、コマンダー・ローレルその人が、俺の眼前にいた。
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「話は“彼”から聞かせてもらったよ。ずいぶんとまぁ無茶をするものだ」
「……いやまあ」
憧れの人物が、俺の目の前でからからと笑う。どうやら俺がいるのは、ディメンジョンポリス司令部の医務室であるらしかった。
「というか、“彼”って……?」
「ああ、君が身を挺して庇った、あの巨大バトロイドだよ。君が目覚めるまでは名乗らないと言っていてね」
そろそろ来る頃合だ、とコマンダーが呟いたのとほぼ同時に、部屋の自動ドアーが開かれた。
「ああ、噂をすれば、だね」
ロボットの巨体が、縮こまりながら入ってくる。ヒューマンよりも巨大なエイリアンヒーローの出入りも想定している施設ではあるが、それでも巨大バトロイドにとってはなかなか動きづらいようだ。
「良かった……無事に意識を取り戻してくれたようだな」
「あんたが、俺を助けてくれたのか?」
「ハハハ……それはこちらのセリフだよ」
ともかく、まずは礼を述べさせてほしい。とバトロイドが頭を下げた。
「あーいや、俺だって勝手に体動いただけだし……」
「いや、それでもさ。誰かを守るために飛び出せる勇気は、ヒーローとしてまず持つべきものだと私は思うよ」
「もっとも、それも善し悪しだがね。今回は運が良かっただけの蛮勇にすぎないということを覚えておき給え」
コマンダーの一言がぐさりと刺さった。
「そう言えば、未だ名乗っていなかったな。私は次元ロボ……“○▽※□∀Д@∝××△”と言う」
そう言って彼……次元ロボだというバトロイドが名乗る……が。
「……わかんねえ」
「奇遇だな、私もだよ」
俺とコマンダーが二人して頭をひねる。
「……ううむ。どうやらこちらの次元では発音できないようだな。済まない」
「いや、気にするなって」
とはいえ、名前が発音できないんじゃあ呼ぶこともできない。
「○▽※□∀Д@∝××△……」
どうにか聞き取れた音声の羅列を何度か口の中で呟く。やがてそれはどうにか意味のある単語へと組み変わっていった。
「じゃあ、聞こえた言葉をつなげて……“ゴーユーシャ”ってのはどうだ?」
「ほう……?」
俺の提案に、コマンダーが含み笑いを浮かべた。バトロイドはと言えば、腕組みをしてさっきの俺のように、ゴーユーシャの名を何度か口の中で呟いて、やがて小さくうなづいた。
「……良い名だ。よし、ではこの次元では、私はゴーユーシャと名乗ろう!」
改めてよろしく頼む、グレンダー。
そう言ってバトロイド……もとい“次元ロボ ゴーユーシャ”が指先を差し出す。握手を求めているらしい。
それに応え指先をしっかりと握る。互いにふっと笑みが浮かんだ。
「……あれ?」
と、ゴーユーシャの指先を握る俺の手……スーツに包まれた……を見て、俺はその違和感に首をかしげる。
怪獣の攻撃で吹っ飛ばされたにしては……いやそれ以前にひったくり犯とやりあった際に傷だらけになっていたはずのスーツが、新品同様……いや、それ以上の綺麗さになっていた。
「……気づいてくれたようだね。それは私からのお礼だよ」
ゴーユーシャの言葉に、今一度全身を鑑みる。真紅を基調とした、俺ことグレンダーのスーツは、デザインはそのままに、なにやら力強いものを感じた。
「マジか……いや、そんなすげえモノ、もらえないよ……」
ためしに拳を軽く突き出してみたら、ものすごい勢いで空気を切り裂く音が聞こえた。どうやら身体機能の向上効果もあるらしい。いずれにせよ、ただのヒーローオタクな俺には過ぎた代物だ。
「受け取っておき給え。彼にとって君は命の恩人だ。それぐらいはしないといけないと、彼の心がそうさせたのだから」
つまりこれを断るということは、彼の心を踏みにじることだと、コマンダーは言う。そういわれれば俺も受け取るしかない。
「しかし、これで君は大いなる力を手に入れたことになるわけだ」
「まぁ、そうですね」
「他人事のように言っているがな……大いなる力には、大いなる責任が伴う。ヒーローをこよなく愛する君なら、わかるだろう?」
俺の好きなヒーローコミックの名言の一つだ。コマンダーもコミックとか読むのかな?
「そこでだ……」とコマンダーは言葉を区切り、ふと俺の眼をしっかりと見た。
「君にその気があるのならば、我々と共にヒーローとして戦ってくれないかね?」
その言葉は、天啓が如く俺の魂を奮わせた。
-TURN-1 END-
そういえば俺、引きでエピソード終わらせるのずいぶん久しぶりな気が。
あれはそう……たぶん「仮面ライダーBLOOD」の第2幕あたり。
さて、今回初登場のコマンダー・ローレル。
グレード1ながら強力なユニットであり、アニメにおけるクレイでの惑星会議においてもディメンジョンポリスの代表として席についていました。
ユニット設定においては、ディメンジョンポリスの第78支部の総司令とのことですが、クレイ内にそんなに支部があるとも思えない(あれば各国家に数~数十ヶ所レベルで配備されてる可能性が高いが、そんな描写はない)ので、おそらくは「魔法少女リリカルなのは」よろしくいろんな次元世界にディメンジョンポリスが存在し、件の第78支部がクレイ担当ってことにしときました。おおむね間違ってはいないかな?
さてさて。
次回、グレンダーと次元ロボこの両者の邂逅が何をもたらすのか……
とりあえず、お楽しみと言っておきましょう。