『決まったァ――――ッ!!! 最後の大物プラズマソウルを、文字通りぶった斬っていったのは……<チーム・ウエポンブレイカーズ>の斬り込み隊長……そいつの振るう、トンデモ武器だーッ!!!』
ハンタステーションの熱気が、がなり立てる実況の叫びにその温度を増す。中央に収められたモニターには、プラズマ怪獣が倒れ伏し、その巨躯の背中で勝鬨を上げる若き星人ハンターの姿が映し出されていた。
『怪獣のパワーをそのままに、ハンターの持ちうるサイズにまで圧縮! 製造されし……その名も<怪獣武装(モンス・ウェポン)>! 素材にされた怪獣にも依るが、そのパワーは絶大! 一説には、かの七星剣をも凌駕すると……』
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「大げさねぇ……そりゃあ、それぐらいは目指して造ってるつもりだけど」
苦笑交じりに、それでも嬉しそうな声色で、妙齢の女が呟いた。
ULTRA FRONTIER EXTRA -ウェポンスミスの夢-
「とまぁ、あんな感じで宣伝もしてくれてるし……そろそろショップに置いてくれてもいいんじゃないかなぁ、カネちゃん?」
「勘弁してくれだガネぇ……怪獣武装だなんて、こっちが襲われそうで怖くて置けたもんじゃないガネよぉ」
ガマ口のファスナーをすぼめて縮こまる商売人に、女は肩をすくめる。
「あまり無理強いをするものではありませんよ、レディ?」
「あら、ジェント」
見かねたメフィラス星人・ジェントに声をかけられ、レディと呼ばれた女……メイツ星人・レディは「別に無理強いしてるわけじゃないわよ」と口を尖らせて見せた。
「メイツ星人の怪獣使いとしての腕はプラズマギャラクシーでも随一ってのは、貴方だって知ってるでしょう?」
プラズマギャラクシーに星人数いれど、“怪獣使い”の異名を持つ者はメイツ星人以外には存在しない。彼女……レディは、一族の有する技能をさらに発展させ、怪獣を生きながらに武器にする術を身に着けたのだ。
それが昨今、巷で噂となっている怪獣武装……モンス・ウェポンだ。
その破壊力もさることながら、生きているがゆえに、時々武器から発せられる不気味な唸り声が、周囲の畏怖を呼んでいた。
「しかし、その応用たる怪獣武装はいまだ未知数の技術でしょう? 信頼性に欠けるものを取り扱うことができると?」
「じゃあ、たまに欠陥品売ってるカネちゃんのお店って信頼できるわけ?」
痛いところを突かれ、カネゴンがうぐ、と口を噤む。
「別にいきなり大物置けなんて言わないわよ。そうね……<ドビシダガー>あたりならどう? 小ぶりだから威力はそれなりだけど、お試し版ってことで」
妥協案を提示するレディに、カネゴンも不承不承ながらようやく頷いて見せた。
「商談成立ね」
「商売熱心なことで。同じくらいハンティングにも情熱をもって参加していただきたいのですがねえ……」
そろばんを弾きながらカネゴンと売値の相談を始めるレディに、ため息交じりにジェントが呟く。
「勿論情熱は持ってるわよ。ただ、ほかのハンターリーダーさんより少しベクトルが違うだけ」
武器職人である彼女が、ハンターステーション……ひいては、ハンターズギルドに居るのには理由がある。彼女は、ハンターチームを束ねる、“ハンターリーダー”の一人でもあるのだ。
「私の造った怪獣武装を、もっと多くの人に知ってもらって、もっと多くの人に使ってほしい……それが私がここにいる、一番大きな理由」
ふふ。とルージュを引いた唇の端をわずかに持ち上げ、レディが艶めかしく微笑んだ。
と、にわかにステーション内にどよめきが走る。その中に混じった唸り声を聞きつけ、レディが軽やかに振り返った。
「あら、今日のMVPの凱旋ね」
先ほどより半オクターブほど声色が跳ね上がる。群がる人々の中心にいるのは三人のハンター。唸り声の主は、彼らが持つ怪獣武装のものだ。
背中に大きなミサイルポッド……<ベロクロンランチャー>を背負ったリフレクト星人のシューター・ブラストが気障りに群集に手を挙げて応える。
その傍らに静かに佇むケムール人のアタッカー・ブライが担いでいるのは、宇宙竜を加工した変幻自在の可動武器<ナースジャベリン>だ。
そして、彼らの一歩前に立ち、巨大魚怪獣そのものを刀身に変えた大剣<ムルチブレード>を掲げたチームのストライカー……若き剣士、バット星人ザジが、リーダーの姿を見つけ、笑みを浮かべる。
その表情に、知らずレディの胸が高鳴った。
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「新しい武器の調子はどう、みんな?」
「上々ですね。最初こそ誘爆を心配しましたが、もともとの出自を考えれば、その心配は杞憂ですしね」
ブラストが背中から降ろしたランチャーをかるく叩いて見せる。
「まぁ、仮にもミサイル超獣がベースだもの。自分のミサイルで木端微塵になるなんてナンセンスなことはないわよ」
「……良い武器、感謝する」
「うん。結構めんどくさいの渡してるけど、想像以上に使いこなしてくれてるわね。貴方にも感謝感謝~」
口数少なめに感想を告げるブライに、レディも礼で返した。
「貴方はどう? ザジ……?」
と、先の二人相手とは違い、レディやややトーンダウンしながらザジに問いかける。
「ああ、レディはすごいよ。これだけのものを一人で造り上げたんだもの。僕ももっと使いこなせるようにならないと」
「何言ってるの、貴方は十分使いこなせてるわよ。あの最後の一撃で、あれだけの斬撃が放てたのも、貴方の技量あってこそだわ」
「そう、かな……ううん、レディがそう言ってくれるなら、そうなんだろうな」
レディの励ましにザジが笑い、しかしすぐに表情を引き締める。
「でも、だからこそ解った。ムルチブレードは、まだ余力を残してる。それを全部……いや、限界以上まで引き出すのが、剣士である僕の役目だ」
大剣の柄をしっかりと握りしめ、ザジが呟く。
「レディ。レディの造る武器は最高だ。この武器の魅力を、僕たちがハンティングを通じてこのプラズマギャラクシー中に見せつけてみせるよ」
――貴女の、夢の手助けをさせてくれ。
初めて出会ったときのことを思い出す。
怪獣武装の素材を求めての旅の途中、プラズマ怪獣に襲われたレディは、まだ駆け出しハンターであったザジに助けられた。
「……うん。ありがとうね、ザジ」
自分でも驚くぐらいに、レディから優しい声と表情が浮かんだ。
「そうだ。今日の戦果を祝って、ぱーっといっちゃいましょ! こっちも大口とまでは言わないけど、商談成立したところだし……今回はおねーさんが奢っちゃう!」
「ほほう……それはそれは魅力的なお誘いですね」
「うむ……だが、相すまん。俺もブラストも、先約有り」
すっと下がる二人が、代わりにザジを押し出す。
「え? え?」
「つきあってやりたまえザジ。どうせヒマなのだろう?」
「え? あ、いや……この後は日課の素振りを……」
「武人たるもの鍛錬は大事。しかし休息もまた然り」
両脇から押され、ザジがじりじりとレディの元へ寄せられていく。
「と、言うわけです。淑女のエスコートも、剣士のたしなみの一つと知りなさい」
「では、御免」
連れだってセンターを出るブラストとブライ。レディと目が合ったブラストが、こっそり目配せして見せた。
「……あの子達ったら」
「っと……あの……?」
残されたザジとレディが、ふと視線を合わせ、すぐさまそらす。
「じゃ、じゃあ……行きま、しょうか?」
「そ、そう……ね、うん。行きましょ?」
つかず離れず。手を繋げそうで繋げない微妙な距離感を保ちながら、二人はセンターを後にする。
「……フフ。初々しいですね」
その様子を伺っていたジェントが、ゴフレットを傾けながら微苦笑した。
-Go to NEXT HUNTING……?-
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さて、大怪獣ラッシュ・ウルトラフロンティアより。ほぼほぼ世界観借りただけのオリキャラばっかりSS。
原典キャラがカネちゃんとジェントしか出てないねw
発端はレオ女史のハンターお絵描きのリクエストで俺ちゃんがメイツ星人指定した件。
結果的にハンターリーダーになったのですが、それはそれで面白なので設定思いついてそのまま流れでSS書くという。
まぁよくある話ですね(何
さて、今後このシリーズが続くにせよ続かないにせよ、思いついた設定を公開しておきましょう。
メイツ星人レディ
ハンターチーム「ウェポンブレイカーズ」をとりまとめる女ハンターリーダー。
メイツ星人の技能である怪獣使いとしての能力を発展させ、怪獣を武器化す能力を持った武器職人が本職であり、ハンターリーダー業は、彼女の造った怪獣武装をプラズマギャラクシー中に広めるための手段のひとつである。
ウェポンブレイカーズ
メイツ星人レディが率いるハンターチーム。彼女の目的の関係上、所属メンバーはいずれも怪獣武装を装備している。
というか、怪獣武装が契約金変わりである(
怪獣武装の異質さから、武器に頼る三流ハンターと思われているが、その実力は決して武器便りではなく、一部の腕利きハンターからは有望株と目されている。
現在のメンバーはバットストライカー・ザジ、リフレクトシューター・ブラスト、ケムールアタッカー・ブライの3名。
バットストライカー・ザジ
「誇り高き青年剣士」 バット星人のハンターで剣の使い手。幼少期にザムシャー族に命を救われた経験があり、彼に憧れて剣士の道を歩む。
武者修行の旅のさなかにレディと出会い、ウェポンブレイカーズ結成のきっかけを作る。レディとの付き合いは3人の中では最も長い。
現在装備している怪獣武装はムルチブレード。ムルチそのものが刀身である、身の丈ほどもある大剣。
リフレクトシューター・ブラスト
「重厚なる紳士」 リフレクト星人のハンターで銃器のエキスパート。拳銃からライフル、重火器まで何でもござれの後衛ハンター。
異名が示す通り(?)に紳士を自称しており、常に紳士たらんと努める努力家の一面も。
レディとザジの間にある感情を把握しており、隙あらばくっつけようと画策している。
現在装備している怪獣武装は、ベロクロンランチャー。ベロクロンをほぼ背負うように装備し、無尽蔵のミサイル弾を放つ大型射出装置である。
ケムールアタッカー・ブライ
「神速の奇術師」 ケムール人のテクニカル系ハンター。主に近接武器を使用するが、銃器にも精通したオールラウンダー。
ケムール人特有の素早い身のこなしの他、頭部の触手から分泌する液体で自身を異次元経由で瞬間移動させるなど、バレルに匹敵するトリッキーな戦法を得意とする。
現在装備している怪獣武装は、ナースジャベリン。ジャベリン形態、ウィップ形態のほか、ベースとなった宇宙竜ナース同様に円盤型にも変形し、盾や投擲武器としても使用可能な可変武器である。