炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ラッシュSS】EPISODE BREAKERS/シーン1

 惑星の大気がプラズマドラゴリーの咆哮に震え、その唸りを何十、何百倍にも増幅して3人の耳朶を激しく打つ。
 ムルチのプラズマソウルを喰らい、ドラゴリーの身体からは新たにプラズマソウルの結晶体が露出しはじめた。

「危険ですね……単純に見て、今のドラゴリーには2体分のプラズマソウルが存在しています」
「安全策、至急待避」
「そうしたいのはやまやまだけれど……」

 ドラゴリーの真紅の眼が、ザジたちを睨みつける。その鋭い眼光は、捕食者の放つそれだ。

「逃がしてくれそうにもないね……ブラスト!」
「ええ。とにかく一度離脱を図りましょう!」

 逃げるにせよ体制を整えるにせよ、ドラゴリーとザジたちの位置は近すぎた。ある程度の間合いを取るべく、まずはブラストがライフルの射出モードを切り替える。

「プリズ魔グナムライフル、拡散モード」

 先のムルチ戦でわずかに残っていたエネルギーを全て引き出し、拡散光線を撃つ。威力こそ乏しいものの、太陽もかくやの強烈な閃光が至近で迸り、ドラゴリーの視界を灼いた。

「今です!」
「走れえええええっ!」

 ドラゴリーが動きを止めた一瞬の隙を逃さず、3人が脱兎のごとく駆ける。やや鈍重なブラストは、二人に引っ張られる形で時折つんのめりながらになってはいるが。

「ブライ、貴方の異次元転送液は使えませんか?」
「不可! 3人同時、危険」

 息を切らせながらブラストがブライに提案するも、即座に却下された。

「少しはダイエットすることを考えようよ、ブラスト!」
「ええ。今のこの状況、切り抜けられれば考慮しましょう……!」

 大声で騒ぎながら逃げていく3人の姿を、ようやく眩しさに眼が慣れたドラゴリーが捉える。口腔を熱く赤く燃え上がらせ、3人めがけ爆炎を噴かせた。

「っのお!」
「ふんっ!」
「ちょ……!」

 背中に熱を感じた刹那、ザジとブライが自身をブラストの体躯の陰に隠す。猛烈な熱波が一瞬で通り過ぎ、爆心地には体表を真っ黒にしたブラストと、ほぼ無傷のザジとブライの姿があった。

「貴方がたねぇ……! いくら私が頑丈とはいえ、基本的には対光線に特化しているだけなんですが……?」
「ま、まぁまぁ……助かったわけだし」
「紳士の務め、見事」

 表情を引きつらせるブラストに、可能な限りの賛辞を贈る二人であった。

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「大丈夫かしら、あの子達……?」

 一方、ハンターステーションでは、リーダーのレディが先ほどまでとはうって変わって心配そうな面持ちでモニターを見ていた。

「ハンティングにイレギュラーはつきものですよ。うちの“ラッシュハンターズ”も、連戦などしょっちゅうでしたしねぇ」

 心配は無用ですよ、とジェントが声をかける。

「それはあんまり心配してはいないわ。あの子たちだって、何度も修羅場をくぐってきているもの」

 ただ……と言葉を濁しながら、レディの視線はモニターの向こう、ザジの握るムルチブレードへと注がれていた。


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「……!」
「どうしました?」

 突然、何かに突き動かされるようにドラゴリーを見上げたザジに、体表に張り付いた焦げ目を丁寧にブラシでこすり落としながらブラストが問いかける。

「アレは……テキ……!」
「ストライカー?」

 様子のおかしい剣士に、ブライが彼の肩をつかもうとするが、それは力任せに振りほどかれた。

「あぁ……ぁぁぁぁああ……!」

 ザジが焦点の合わない視線でドラゴリーを睨みつけ、ムルチブレードを正眼に構える。その怪獣刀身の内に光るなにかを、ブラストの眼が捉えた。ムルチの眼光のそれではない。あの不可思議な煌きかたは、ブラスト……否、ほぼすべてのハンターが見覚えのあるものだ。

「それは……いけません、ザジ!」

 ブラストが止めるのも聞かず、ザジの足が地を蹴り、一足跳びにドラゴリーに肉薄する。

「速い……!?」
「ブライ、ザジを止めてください! 今の彼は正気ではありません。まるで武器に……ムルチに振り回されているような……」
「承知!」

 ブライがうなづき、即座に異次元移動でザジの元へと急ぐ。たどり着いた次の瞬間、しかしザジはさらにギアを上げてドラゴリーへ突っ込んでいく。

「なんと……!」

 驚嘆の声を上げるブライ。一方ブラストは、吼え猛るザジとムルチブレードの姿を見つめながら、あることを思い出していた。

「すっかり失念していましたよ……ムルチとドラゴリーの間にある“因縁”を……」

 その呟きと、耳を劈く破砕音が轟いたのはほぼ同時であった。

「うおおおおおおおおっ!」

 振り抜いたムルチブレードの一閃が、ドラゴリーの膝のプラズマソウルを斬り砕いていた。

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 モニターに映る“異変”に、レディが思わず立ち上がる。ムルチブレードの刀身が、そのシルエットを力強くも禍々しく変え、持ち主のザジ自身も、呼応するかのように赤黒いオーラを纏っている。

「あれは……<ゾア>……!?」

 震える唇から、言の葉が零れ落ちた。



   -To be Continued-





 なんか意図せずコメディ展開になったような気もしますが、多分気のせいですね、うん(何

 なんでこう紳士キャラ(エセ含む)ってイジリがいがあるんでしょうねw
 おかげでブラストのキャラが立ちまくりすぎてブライがどんどん影が薄く……
 基本単語ぶつ切りでしゃべらせてるので、長台詞に向かない人にしちゃったからなぁ(
 まぁ、その辺の兼ね合いはまたいずれどうにかしませう。

 さて、ムルチ改めドラゴリーハンティング。ムルチとドラゴリー。2体の怪獣の間に存在する因縁とは?
 変貌を遂げたムルチブレードとザジ。レディが呟いた<ゾア>の意味とは?
 次回を待て!