「そう、か……」
檀正宗は、大きく息を吸った。
「ありがとう、と言うべきなのかな?」
「さてな」
正宗の息子である、檀黎斗。その顛末を伝えに来た大我は、その問いに対し肩をすくめて見せた。
「とりあえず用件はそれだけだ。あんたにもいずれ減刑の沙汰が降りてくるんじゃねえか?」
「いや、それはないだろう……それに、そうだとしても私はしばらくここを出る気はないよ」
「どゆこと……?」
いぶかしげに自分を見るニコに、正宗は自嘲しつつ呟く。
「確かに今の私は、黎斗の罪をかぶる形でここにいる。だが、バグスターの事を知っていながらそれを放置していたことは間違いなく罪だ。そして――」
そう言って、正宗が瞳を閉じた。
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仮面ライダーエグゼイド/EXTRA_STAGE
Episode:GENM/Game masterの水晶
「お前は、水晶のようだな」
「水晶?」
ノートパソコンにかじりつき新たなゲーム開発に余念がない、少年時代の黎斗に正宗はそう言った。
「お前の心がモニター越しにキラキラ輝いてるように見えるよ。その輝きは、ゲームクリエイターとしてはこれ以上ないほどの才だ」
その頭をわしわしと撫で、その心を忘れるなと言い聞かせる。
――彼のもとに、ある子供からの手紙が届いたのは、その数日後のことであった。
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「……知っているかね?」
「うん?」
「水晶を通した光は、屈折するんだ。もっとも、ほかの宝石に比べるとそれほどでもないのだが」
息子の心は水晶のように輝いていた。しかし、その輝きが折れ曲がってしまっていたことに気付けなかった。
それが自分の最大の罪だと、正宗は独りごちた。
「宝条永夢のこと、見ていてくれたまえ。その輝きが、屈折しないように」
「はあ? なんで私らが……」
頬を膨らませてみせるニコ。
「……フン、心配はいらねえよ」
「大我?」
まさか応じるのかと噛みつきかけるニコを指先で制し、大我がニヤリと笑う。
「あいつは筋金入りのゲームバカだからな。ついでにどんな悪党でも……それがゲンムだろうと、患者であるなら救おうとするドクターバカだ」
――そんなやつを捻じ曲げる要素があるなら逆に見てみてえよ。
そう言い放たれた言葉に、思わずニコも吹き出した。
「ぷくくっ……確かにっ」
その様子を見て、正宗もふっと破顔する。
「……君は、まだ戦うのか?」
「当たり前だ。最後のバグスターを叩き潰すまで、俺の……いや、俺たちの戦いは終わらねえからな」
「そうか」
看守からの面会終了の指示を聞き、正宗がゆっくりと席を立つ。
「私と息子の尻拭いを押し付けてしまうのは気が引けるが……よろしく頼む」
そう呟くように言って、正宗が面会室を後にした。
-fin-
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本日放送の23話を見て一気に書き込みました。
息子の最期を知り、父は何を思うのか。
今回の着想のポイントはもう一つあって、永夢を水晶に例えた黎斗の心について。
そも、心や人となりを水晶に例えたのって、黎斗が初めてじゃなくて、父親だったんじゃないかなーって。
今にして思えば、きっと黎斗も水晶の心の持ち主だったんじゃないかと。
でも……水晶の光って、屈折するんだよなぁ……って気づいて。
※文中でも言ってますが、その屈折率はダイヤなどに比べると決して高くはないのですが。
屈折したまま、それでも心の輝くまま、純粋にゲームを愛し、ゲームを生み出すことを愛したがゆえに、狂気を孕んだ光を宿したのが、黎斗という水晶だったのかもしれませんね。
なんてカッコよく言ってみたりして。
さてさて、今回メッセンジャーに大我&ニコをセレクトした理由ですが……
まあ、消去法じみてます(ぉぃ
永夢は吹っ切って伝えるにはまだちょっと早いかなってのと(ラストシーンで泣いてたし)、飛彩もなんか違うかなーと。
で、ラスト手前で大ニコが歩いてたシーンを観直して「あ、これ刑務所行ってね?」と考えてしまったわけですw
結果的にいい感じな掛け合いになったかなーと思ったりなんだり。
さあ、レーザーが消え、ゲンムが消えた「仮面ライダーエグゼイド」
次回以降の展開、非常に気になりますね。二次モノカキ的にも
心が躍るな……♪