コンビニでペットボトルのお茶を購入したユウキは、その場で一気に飲み干した。
空っぽになったボトルをふと眺めているうちに、苛立ちが再び湧き上がり、憤りに任せて目の前のくずかごに投げつける。
「くそっ!」
少々回転を加えたペットボトルは吸いよせられるように専用のくずかごに飛び込み、その様子を目撃した学生の集団が「おお~」と感嘆の声を上げる。
「…最後のチャンスだったのにな……」
ユウキが力なく呟く。
一昨年は後一歩というところで得点が至らず、去年は万全の準備をしてきたにもかかわらず直前でインフルエンザに倒れてしまった。
22歳になってしまった今年。もし夢破れたならば…
「田舎に帰る…って、約束しちゃったからなぁ」
一向に説得に応じなかった父親への最大限の反抗の果ての約束だった。
勢いで言ってしまったとはいえ、親子で交わした男とオトコの約束なのだ。違えるわけにはいかなかった。
「…でも…それでも…」
拳を握り締める。噛み締めた唇からは、少しだけ血の味がした。
「…お、おい。あれ…なんだ?」
と、誰かの声でユウキははっと我に返る。
声のしたほうを見ると、学生服姿の少年が空を指して顔を驚きの表情で固めていた。
「?」
と同時に何かが風を切る音が聞えた。振り返ったユウキの視線が凍りつく。
「な…!?」
肉眼でその表面の凹凸すら確認できるほどの大きな隕石が、大気との摩擦で真っ赤に燃えながら…
ドガァァァァァアン!!!
遥か遠くの山の中腹に激突した。
「落ちた!」
「なぁ、あのへんってなんかあったよな?」
「確か…キャンプ場とかあったと思うけど…」
周囲のざわめきが大きくなる。
「い…」
顔面蒼白になりながら、ユウキが小さく呻く。
「行かなきゃ…」
誰かが言っていた通り、あの辺りにはキャンプ施設が存在した。季節柄、利用者もそこそこ居たはずである。
「行かなきゃ…!」
自分が行ってどうにかなるものでもない。それは分かっていた。
だが、それでも彼は行くことを決意した。
自分にも、できる何かが必ずあるはずだと、そう信じて。
決意が鈍らないうちに、止めていたバイクに飛び乗る。
「行こう!」
言い聞かせるように声をあげ、ユウキはバイクを走らせた。
-つづく-
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次回、ようやっとメインのチームが登場!…かな?(ぉ