rrrrr…
開店早々、事務所内の電話がけたたましくベルを鳴らす。机に向かって事務作業中だった青年が手を伸ばし、軽やかな動作で受話器を抜き取る。
「はいっ、電器の【Okey-dokey】、サービス窓口の赤津です。…はい、いつもお世話様です~。どういたしましたか?」
・ ・ ・
かちゃ
「ふぅ」
十数分に及ぶ問い合わせの電話をこなし、受話器を置いた青年は溜息をつく。制服の左胸には、写真入りのネームプレートがぶら下がり、彼の名を【赤津 光流】であることを示していた。
rr rr rr…
と、再び電話が鳴る。鳴り方が違うのは他のコーナーからの内線だからだ。
「はいサービス…え?部品の値段?…ちょ、そーいうのは折り返し頼んで! メーカーと型番聞いてからよろしく!」
かちゃ
rr rr rr…
「はいサービス! …いやさ、いつもながら、単純に部品注文だけならそっちで聞いてくれれば…ああもう、わかったよ繋いで!」
rr rr rr…
「サービス赤津ですがっ。…え?パソコンの修理代? ハッキリしたものが欲しい? 見積もりさせてください~っ!」
・ ・ ・
「はぁ、はぁ、はぁ…」
立て続けの内線に朝から翻弄される光流。
「つーか電話番のパートはどこだぁ!」
「…今日遅刻するって連絡あったぞ」
店頭の窓口で持ち込み修理の受付をする同僚の声が飛ぶ。
「うそやん!?」
悲鳴に近い声をあげ、光流は頭を抱えた。
rr rr rr…
そんな彼の事情なぞつゆしらず、またも内線が鳴る…
「…はいもしもしっ!」
思わず声を荒げて返事したが、電話の向こうの声を聞くや、一気に声が裏返る。
「っとぉ、俺おれ。どしたの? …うん、うん。…おっけ、人つかまえてそっちいくよ。うん、じゃ、またあとで」
受話器を収めるのもそこそこに、光流の体はサービス窓口を飛び出していく。
「お、おい赤津、何処行くんだ?」
「ヘルプかかった! 売り場行って来る~っ!」
・
・
・
「…あのコ、からだな」
「…だな」
「分かりやすいよなァ、あいつ」
「…そーだな」
うきうきと駆けて行く光流の後姿を見送りながら、同僚達は溜息混じりに呟いた。
すいっち・おん! -swich on!-
Part.1:日常に変化を潤いを。ついでにちょっぴりときめきを!
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そんなこんなで本格連載開始。
内線での光流のセリフは、普段言いたくて言えないセリフだったりもします(トオイメ