…少年は悩んでいた。
何故か自室で正座までして。
目の前に鎮座するは携帯電話。
先日、想いを寄せるクラスメイトの番号を入手したものの…
電話をかけるタイミングが掴めず、明日へ明日へと引き伸ばした挙句、既に半年が経過しようとしていた。
「…何やってんだかなァ」
自嘲気味に呟く。
何を恐れる必要がある?
何を躊躇う必要がある?
少なくとも電話番号を教えてもらった以上、それは電話してもいいよ、ということだろう?
何度も自分に言い聞かせ、携帯に手を伸ばす。
電話帳から彼女の名前を呼び出す。10桁の数字が並び、あとは通話ボタンを押すだけなのだが…
「…ぐはあっ」
派手な溜息とともに携帯を放り上げる。
どうしても次の一歩が踏み出せない。
…と表現するのは少々誇大かもしれないが、彼にとってはそれくらいに重要なことなのだ。
「落ち着け俺…何も電話でいきなり告るってワケじゃないんだ」
自己嫌悪に陥りながら、転がった携帯を拾い上げる。
と、
♪~♪~
「うぉゎ!?」
突然着信メロディが鳴り出し、再び携帯を取り落としそうになる。
聞き覚えのあるメロディは、ある特定の番号にのみ対応させたものだった。
モニタに踊る文字を見る。―――あいつだ。
慌てて通話ボタンを押す。
「…も、もしもし?」
『あ、もしもし? …私』
電話越しのくもぐった声は、たしかにクラスメイトのそれだ。
「あぁ、うん。…どした?」
気の利いた一言が言えず、つい素っ気無い言葉を発してしまう。
…そんな自分に自己嫌悪。
『ん? ううん。その…今、何してた?』
「え? いや、その…別に」
君に電話をしようとしてた。
そう言ってもいいはずなのに、躊躇われた。
「……」
『……』
お互いに話しベタなのか、次の会話が出てこない。
「『あのっ』」
ようやくかけた言葉が、見事にハモる。
「あ、その…そっちから」
『…うん。あのね…」
受話器の向こうで、くすっと笑い声が聞こえ、幾分緊張が和らいだ。
・
・
・
『…あ、もうこんな時間か。ごめんね、なんか私ばっかり話しちゃった』
「いや、気にしないでよ」
気がつけば日付が変わろうかという時間だった。
「じゃ、そろそろ切ろうか」
『うん』
と言ったものの、切るに切れない。
彼女も同じらしく、切断音が一向に聞こえてこない。
「…いや、切ろうぜ?」
『…そっちこそ』
お互いにツッコミ合い、笑いあう。
「はは。じゃあ、今度こそ。…おやすみ」
『おやすみ』
ぱたん、と携帯を閉じる。
力が抜け、どっと疲れが押し寄せる。そうとう緊張していたらしい。
「ふぁ…あ」
あくびをひとつ。
ベッドに滑り込んで、静かに目を閉じる。
…今夜はいい夢がみられそうだ。
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この作品には一部ノンフィクションが含まれています(ぇ
いや、実際tel番教えてもらって、自分が始めてプライベートで電話したのが8ヶ月後だったんですよw(←超へタレ
まぁ、私の場合このストーリーのように都合よく相手からかかってなんか来ませんでしたが(トオイメ
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=homurabe
↑web拍手です。感想とか「こんなの読みたい!」的なリクエストも受け付けます。
…書けるかどうかはさておきですが(ぉ