炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編小説】てる・みー・ぷりーず

 …少年は悩んでいた。

 何故か自室で正座までして。



 目の前に鎮座するは携帯電話。
 先日、想いを寄せるクラスメイトの番号を入手したものの…
 電話をかけるタイミングが掴めず、明日へ明日へと引き伸ばした挙句、既に半年が経過しようとしていた。

「…何やってんだかなァ」

 自嘲気味に呟く。

 何を恐れる必要がある?
 何を躊躇う必要がある?
 少なくとも電話番号を教えてもらった以上、それは電話してもいいよ、ということだろう?

 何度も自分に言い聞かせ、携帯に手を伸ばす。
 電話帳から彼女の名前を呼び出す。10桁の数字が並び、あとは通話ボタンを押すだけなのだが…


「…ぐはあっ」


 派手な溜息とともに携帯を放り上げる。

 どうしても次の一歩が踏み出せない。
 …と表現するのは少々誇大かもしれないが、彼にとってはそれくらいに重要なことなのだ。

「落ち着け俺…何も電話でいきなり告るってワケじゃないんだ」
 自己嫌悪に陥りながら、転がった携帯を拾い上げる。
 と、

   ♪~♪~

「うぉゎ!?」
 突然着信メロディが鳴り出し、再び携帯を取り落としそうになる。
 聞き覚えのあるメロディは、ある特定の番号にのみ対応させたものだった。
 モニタに踊る文字を見る。―――あいつだ

 慌てて通話ボタンを押す。

「…も、もしもし?」
『あ、もしもし? …私』
 電話越しのくもぐった声は、たしかにクラスメイトのそれだ。
「あぁ、うん。…どした?」
 気の利いた一言が言えず、つい素っ気無い言葉を発してしまう。
 …そんな自分に自己嫌悪。

『ん? ううん。その…今、何してた?』
「え? いや、その…別に」
 君に電話をしようとしてた。
 そう言ってもいいはずなのに、躊躇われた。

「……」
『……』
 お互いに話しベタなのか、次の会話が出てこない。

「『あのっ』」
 ようやくかけた言葉が、見事にハモる。
「あ、その…そっちから」
『…うん。あのね…」
 受話器の向こうで、くすっと笑い声が聞こえ、幾分緊張が和らいだ。


 ・
 ・
 ・


『…あ、もうこんな時間か。ごめんね、なんか私ばっかり話しちゃった』
「いや、気にしないでよ」
 気がつけば日付が変わろうかという時間だった。
「じゃ、そろそろ切ろうか」
『うん』

 と言ったものの、切るに切れない。
 彼女も同じらしく、切断音が一向に聞こえてこない。
「…いや、切ろうぜ?」
『…そっちこそ』
 お互いにツッコミ合い、笑いあう。
「はは。じゃあ、今度こそ。…おやすみ」
『おやすみ』

 ぱたん、と携帯を閉じる。
 力が抜け、どっと疲れが押し寄せる。そうとう緊張していたらしい。
「ふぁ…あ」
 あくびをひとつ。
 ベッドに滑り込んで、静かに目を閉じる。



 …今夜はいい夢がみられそうだ。


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 この作品には一部ノンフィクションが含まれています(ぇ

 いや、実際tel番教えてもらって、自分が始めてプライベートで電話したのが8ヶ月後だったんですよw(←超へタレ

 まぁ、私の場合このストーリーのように都合よく相手からかかってなんか来ませんでしたが(トオイメ


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 ↑web拍手です。感想とか「こんなの読みたい!」的なリクエストも受け付けます。
  …書けるかどうかはさておきですが(ぉ