炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

Chapter:1/Scene:6

「―――なに、これ?」

 力を貸して欲しい、そう言った通之介が指差した先をまひるが見ると、目の前で分厚いハードカバーの本がぷかぷかと浮いていた。

 表紙に何かタイトルのようなものが刻まれていたが、見たこともない文字で描かれたそれは、まひるのは読めようもない…はずだった。

「<シュ・ヴェルト>?」
「やっぱり読めるのか!」

 驚く通之介。驚きたいのはこっちよ…と心の中で突っ込むまひる。通之介に促され、ぱっと開くと、これまた見たことのないはずの読める文字が所狭しと並んでいた。

「…読めるか?」
「…うん。何でかわかんないけど。ってかこれなに?」
「魔道書さ。この聖魔甲冑(エンチャントアーマー)、<シュ・ヴェルト>のな」

 そこでいったん言葉をとめた通之介の眼が鋭くなる。腕に力をこめると、手をかざしていた赤い球体が輝き、シュ・ヴェルトの巨体を跳ばせた。

「細かい説明は後だ! まずは……2487ページ!」
「ええ? そんなページ数あるのこれ!!? つかそんないきなり言われてめくれないわよ!」
「大丈夫だ! ページを思い浮かべれば勝手に開いてくれる!」

 半信半疑ながら、言われたページ数を頭に浮かべるまひる。果たして開かれた本がぱらぱらと紙を波打たせると、ぴたっととまった。隅に記載された数字は、確かに2487ページを記していた。

「開けた…」
「読んでくれ!」
「ええと―――」

 まったく読めないはずの文字が理解できる。まったく聞いたこともない発音の言語が、自分の口から零れ落ちる。
 未知の感覚に、まひるは軽く恐慌状態になりかけていた。

「…よし! これで!」
 まひるの口がなぞの言語の朗読を終えたとたん、シュ・ヴェルトのコックピット内部がほのかに輝きだした。

「<ドラッツェン=フリューゲル・レツス>!!」

 通之介が叫ぶと、シュ・ヴェルトの背部にあった翼のようなパーツが動き、右手のそばに寄る。それを掴み、抜刀するかのごとく引き出すと、それは巨大な刀身をたたえた剣であった。

「な……ちょっと! あんな武器あるならなんでいままで……」
「使えなかったんだよ! 俺だけじゃ、こいつはただ動くことしかできない。俺は魔力はあるけど<魔法>は使えないんだ。そして、エンチャントアーマーは魔法で初めて戦う術を得ることができる」

 剣を構え、シュ・ヴェルトが横薙ぎに振るう。ごう、と風が巻き起こり、それを纏った斬撃がボーンゴーレムの肋骨を捉えた。

「よしっ、これなら―――」
「よしっ、じゃない!」

 履いていたサンダルで通之介の頭をはたくまひる

「ってーな! なにすんだよ!」
「こっちのセリフよ! さっきも言ったでしょ! 街中で暴れないでって!」

 その言葉に、通之介がはっとなる。ふと下を見ると、砕けたボーンゴーレムの破片が瓦礫と化し、家屋を傷つけていた。

「……解った?」
「ご、ごめん…」
「わたしにあやまってもしょーがないでしょうが」

 憤るまひるに、しゅんとなる通之介。

「とにかく! あのバケモノほっとくわけにも行かないんでしょ? あっちで戦って!」
 そう言ってまひるが指差した場所は、彼女が通う高校であった。
「グラウンドもそこそこ広いから、多少の無茶は利くはずよ……多分だけど」
「わ、わかった」

 剣を元の場所に戻し、通之介がシュ・ヴェルトを動かす。しりもちをついていたボーンゴーレムの体をがっちりと抱え込んで、まひるに別のページを開くように指示する。

「これね」

 感覚的に<魔法>を使うのがわかってきたのか、先ほどよりは幾分流暢になった朗読…詠唱が、シュ・ヴェルトの体を宙に浮かべさせる。

「と、飛んだ?」
「一気に行く! 舌噛むから、口閉じて! <フリィゲ>!」

 背中の翼が風を呼び、シュ・ヴェルトが飛翔した。


   -つづく-


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 我ながら迷走してきた感が(何
 もしかしてスランプですかぁ~!!?

 さておき。
 技名は基本的にドイツ語ベースで。スパロボいーよね(何

 ちなみに、シュ・ヴェルトの持つ武器はアレだけにとどまりません。お楽しみに?