炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼】異伝・守護者-まもりしもの-/プロローグ

 月すらも隠れた闇夜。

 人気の無い廃工場の只中で、走る影が―――七つ。


 追われるものが一つ、追うものが六つである。

「―――はっ!」

 追う六つの影のうち、先頭を走っていた者が、おもむろに空に筆を走らせた。

 その筆の軌跡は、ひとつの<文字>を生むにいたる。それは、“縛”であった。

 気合とともにそれを逃げる影へと叩き込むと、影は<文字>の示すままに“縛られ”、動きを止めた。

「もう逃がさんぞ、外道衆!」

 <文字>を書いた、赤い仮面と装束の男が叫ぶ。遅れて5つの影―――色違いの似たような装束と仮面を纏った―――が集まった。

 彼らこそ、スキマより現れる“魔”を討つ現代のサムライ。シンケンジャーである。

「―――!」

 ギギッ、と、外道衆と呼ばれた影…醜悪な異形の怪人が妙な鳴き声を発した。

「…妙ね?」
「なにがよ、ねえさん?」

 シンケンピンク…白石茉子が首をかしげ、その呟きにシンケングリーンこと谷千明が問いかける。

「さっきからあのアヤカシ、一言も言葉を発していないの」
「…そういえばそうやね?」
 傍らにいたシンケンイエロー・花織ことはが小さくうなづく。

 アヤカシと呼ばれる、外道衆の尖兵は、しっかりとした意思を持ち、程度の違いこそあれ人語を解することが可能だ。だが、先だって対峙している怪物には、それが見られない。

「確かにそれはヘンだよなァ。それに……」

 シンケンゴールドこと梅盛源太が、手にした提灯…ダイゴヨウで周囲を照らす。昼の如き明るさで照らされるのは、異臭を放つ醜悪な怪物だ。

「姿かたちも、アヤカシとはちょいとばかりちがうような気もするぜ…」
「お前達、無駄口を叩くな!」

 離しこむ源太らを、シンケンブルーである池波流ノ介が咎める。

「似ているかどうかはどうでもいい。あれが人々に害をなすのなら、それを討つのが俺たちの使命だ」

 彼らの<殿>であるシンケンレッドこと、志葉丈瑠はそう呟くと、腰に携えた太刀…シンケンマルを静かに抜く。

「はッ!」

 銀色の軌跡が閃き、その刃が異形を切り裂く―――

 が、その切っ先が届く刹那、

「ギギーッ!」

 異形が搾り出すように叫ぶと、その身を戒めていた“力”を跳ね除け、刃から逃れた。

「何!?」
「殿の<モジカラ>を、打ち破っただとぉ!?」

 流ノ介が素っ頓狂な声を上げる。異形が、にやりと笑ったように見えた。

 そう思うと、腕を振り上げ、指にそなわった鋭い爪で丈瑠を襲う。

「危ねぇ、タケちゃん!」

 異形と丈瑠との間に源太が割り込み、腰の<サカナマル>を一閃する。彼独特の逆手一文字による抜き打ちが、一瞬にして異形の爪を斬り砕いた。

 返す刀で反撃に転ずる源太であったが、怪物はその攻撃を躱し、後ろ向きに飛びのき、再び逃走する。

「くっそ、さっきから逃げてばっかりいやがって!」
「とにかく、早よ追いかけな!」

 ことはの声に皆がうなづき、再び追いかける一同。

「ウォーターアロー!」
 水の力を秘めた光の矢が乱射され、いっせいに異形を狙う。が、身軽に動くそれは軽々とかわしていってしまう。

「俺に任せろ! ウッドスピアァァァァ!!!」

 跳び上がった千明が、モジカラを込めて自らの得物の柄を伸ばし、槍の穂先を異形めがけつきたてる。が、やはりそれも難なく回避された。

「くっ…」

 丈瑠が歯噛みする。

「くっそ!ちょこまかと逃げやがって…!」
「せめてヤツの足でも止められりゃな……ン?」

 と、源太の視線が、怪物の進行方向に立ちはだかる人影を捉えた。仲間たちも、そして前を走る異形もそれに気づき、はたと足を止める。

「…ギッ!」

 背中しか見えない異形は、なにかにおびえているかのようだった。

(…よく分からんが、動きを止めた今がチャンスか)

 丈瑠がベルトのバックルから、赤い円盤…<獅子>の秘伝ディスクを取り出し、シンケンマルの鍔にセットする。

「シンケンマル・火炎の……!」

 必殺の一撃を見舞おうとした刹那、丈瑠は己が目を疑った。


 異形の体を、光の軌跡が縦一文字に走ったかと思うと、その体は真っ二つに分かたれ―――やがて消えた。

「な、なにごとだ!?」

 絶句する流ノ介たち。さっきまで異形が立っていたその向こうに、人影があるのが気配で分かった。

「……何者だ?」

 丈瑠の問いに答えるかのように、厚い雲が切れ、その合間からこぼれる月光が、それを照らし出す。


 そこに佇むのは、黄金の鎧を身に纏った……<騎士>であった。






     ――― 一筆奏上、天下御免

     侍戦隊シンケンジャー 異伝・守護者-まもりしもの-






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 さぁ、またやってしまった。

 炎部紅蓮は、新作を。


 いい加減節操ないのも考え物ですが。
 思いついちゃったんだからしょうがない。

 …まぁ、後先考えずに書いていることに変わりはないのですが(ぉ


 侍と騎士。その邂逅が意味するものとは……

 次回を待て!