炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

そのよん/しーん3

「ふぅん、なかなかいいふいんきじゃね?」
なぜか変換できない…」
「……なにやってんのあんたら」

 遊園地のマスコットキャラの着ぐるみの陰から二人の様子を伺う辰平と淳に、ジト目を向ける縁。

「わあっ、ありがとうございます~」
「ってこっちはこっちで……」

 縁の背後で別の着ぐるみから風船をもらって喜んでいるすずり。その服装は先ほどまでの忍装束から、平凡な長袖Tシャツとスカート姿になっていた。
 さしあたって容貌で目立つことはなくなったが、おそらく彼女にとっては初めての遊園地なのだろう。そのはしゃぎぶりで逆に目立ちそうだった。

「あ。ほら、あの子達動き出したわよ!」
「……いつの間にかやる気になってるな、風間」

 せかす縁を茶化すように辰平が呟く。それに「うっさい」と返し、着かず離れずの距離を保ちながら二人を尾行していく。

「ジェットコースターか…」
「うわ、これ<ランブリング・ロコモーション>だろ? この辺じゃ一番すげぇジェットコースターって有名だぜ?」
 淳の解説に、縁が、ああと得心したようにうなづく。

「そういえば、瑞樹って絶叫マシーン大好きなのよねぇ…」
「ところで、康助さんはどうなんですか?」

 すずりの問いに、縁がふるふると首を横に振る。

「……康助、骨は拾ってやるからな」

 辰平が手を合わせ、淳が十字を切って空を仰いだ。


   *


「う…うぐ…」

 グロッキー状態の康助と対照的に、すこぶる元気な瑞樹。

(ま…まさか3回連続乗る羽目になるとは思わなかった…)

 降り場からの階段を、手すりにすがりながらよろよろと降りていく。

(うぅ…目ぇ回る……)

 いまさら断りきれず乗り込んだはいいが、苛烈なまでのスピードと、全身にかかるGは、このテのアトラクションを苦手とする康助にダメージを与えること必至であった。

「どうしたの?」
「あ、いや…なんでもないなんでもない」

 振り返る瑞樹に、しゃきっと立ち上がって元気そうなそぶりをしてみせる。
 自分が誘ったのに、ダレたところを見せるわけにはいかない。可能な限り楽しんでもらわなければ。

 ……たとえ自分はどうなったとしても。
 と、ひとり決意する。

「ん~っ。楽しかったけど、流石に3回も同じの乗ると飽きちゃうわね」
「そ、そだね…」
 これ以上の拷問はとりあえずないと分かり、ほっと安堵の息をつく。次に遊ぶアトラクションを探しがてら、まずは体調を整えよう。
 そう思った矢先、康助の肩を瑞樹がつん、とつつく。

「それじゃ、次はあれいきましょ!」
「え? あ、ちょ、ちょっと待って!」

 そう言って楽しそうに駆け出す瑞樹と、それを追う康助。

 その先には、巨大な海賊船を模したアトラクションが鎮座していた……。


   -つづく-


---------------------------------

 3、4ヶ月ぶりですなw
 一日一本執筆奏上!の中、ルール上なかなか書くタイミングがつかめないorz

 さて、ジェットコースターに次ぐ絶叫マシーンのテッパン、海賊船モノ。

 エセ高所恐怖症の身としては、ある意味ジェットコースターより苦手orz
 観覧車とかは兵器だけど、ほらアレは一応室内(?)だから吹きさらしにはなってないし。

 リアルで空気を感じるところにあの高さは薄ら寒くなります(滝汗