炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

EP:01/シーン15

「お疲れ様ですっ!」

 帰還したサクラコたちを、オペレーター席から立ち上がって出迎えるチアキ

「ただいま、チアキちゃん」
 そんな彼女に笑顔で応えるサクラコ。ふと、メインモニターに目をやると、つい先ほど目の前で見た、巨人の活躍がリプレイされていた。

「ずっと見てたの、アレ?」
「ええ! だってかっこいいじゃないですか! 私達のピンチに颯爽と登場したナイト様って感じで!」
「……そ、そう?」

 目をキラキラと輝かせて…長い前髪に隠れてよく分かりにくいのだが…語るチアキに、若干引き気味のサクラコである。

「あ、そうそう。……入ってきて!」

 思い出したように呟き、サクラコがブリーフィングルームの外へ声をかける。と、自動ドアーが開いて、おずおずとユウキが顔を出した。

「あら、たしかこの人……」
「ええ、アマツ・ユウキくん。今回の私達の協力者よ。…あらためてお礼を言わせてもらうわ。本当にありがとう」
 頭を下げるサクラコに、ユウキが慌ててそれを制した。
「いえ、ボクだけじゃ何もできなかったですし。俺なんかを当てにしてくれて、むしろそっちのほうでお礼を言いたいくらいです。…それに、“彼”の力もあってことでしたし」

「彼って……あぁ、あの巨人?」
 サクラコの問いに、こくりとうなづく。

「あの時、“彼”が身を挺して助けてくれなかったら、今のボクはなかったですしね。僕たち人類の味方ですよ」

 熱っぽく語るユウキ。と、その肩をアイがつつく。
「…ん?」
「ところで、その“彼”って、なんて名前?」
 アイの問いかけに、マイとミイも知りたいようでこくこくとうなづいた。

「名前……?」
「ないの?」

 サクラコも問う。名前はあったにはあったが、地球の言葉では発音できないと聞いている。どうしたものかと考えていると、ふと、先ほど小耳に挟んだ単語を思い出した。

「<ナイト>……そう。彼は……<ウルトラマンナイト>です」

 ウルトラマンナイト。

 その単語を反芻するA.N.G.E.L.の面々。咄嗟に決めた名前ではあったが、とてもしっくりくる、とユウキは思った。

「そっか。それじゃ、ナイトにも感謝しないとね。……さて、ユウキくんには、もう一つ言っておくことがあるの」
「?」

 にやり、と不敵な笑みを浮かべるサクラコ。

「本日付けを以って、このアマツ・ユウキくんを、我々、<A.N.G.E.L.>の新たな隊員として迎えます!」

「……え?」
「えええええっ!!?」

 目を丸くするユウキ以上にさらに驚いたのは、隣にいたカスミであった。

「今回の功績を認めて…隊長権限でねじ込んじゃいました~」
「ねじ込んじゃいましたって……いいんですか、そういうの簡単に決めちゃって」
「ん? うれしくないの?」

 うれしくないといえば嘘である。もともと希望していたD.R.A.G.O.N.にせよ、このA.N.G.E.L.にせよ、自身がずっと参加したいと思っていた、IRFの所属なのだ。夢が叶うことに違いは無かった。

「D.R.A.G.O.N.への過去の入隊試験の結果、および実技シミュレータの技能などを加味した結果でもあるわ。自信を持って。あなたは、入るべくして入るのよ」

 サクラコが穏やかな笑みをたたえてそう言った。

「……!」

 その言葉がぐっと浸み込み、不意にうれしさがこみ上げてくる。

「とりあえず、具体的な業務とかは明日からね。ともかく―――これからよろしく!」
「はい! …じゃなかった。……A・I・G!!!」

 元気よく敬礼をして、ユウキが応えた。



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「……なんか、たった一日でいろんなことがあったなぁ……」

 A.N.G.E.L.の本拠地・エンジェルベースの展望台から外を眺めながら、ユウキはひとり呟く。

「怪獣が現れたと思ったら、巨人まで現れて、しかもその巨人と一心同体なんて……」

 ポケットに忍ばせていた、巨人から授けられた短刀を手にする。

「君の名前、<ウルトラマンナイト>でいいかな。勝手に決めちゃったけど」
 微苦笑しながら、そう報告する。“彼”から答えが返ってくることは無かったが、さしあたって問題はないということなのだろう。

「……あ、ここにいたんだ」

 ふと、背後から声をかけられる。咄嗟に短刀をポケットにねじ込み、そ知らぬ顔で振り返ると、それはカスミであった。

「探してたの?」
「そうよ。不本意ながらね」

 仏頂面でそう答える。基本的に歓迎ムードのチームメイトの中、彼女だけは違うらしい。

「サクラコチーフがあんたの歓迎会やるって。あたしはイヤだったんだけど、全員参加って言われちゃったもんでさ」
「無理してこなくても…」
「なんか言った?」

 ギロリ、とにらみつけてくるカスミに、「いやなんでも…」ととぼけてみせる。

「いーから、いくわよ。ほらっ!」

 答えも聞かずにユウキの背中をばしばし叩く。その勢いに急かされながら、展望台を後にするユウキ。




 もうすぐ夜の帳が落ちようとする西の空に、一番星が輝いていた。



   -EP:01 fin-



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 スパークに続き、どーにかナイトも1話完結。

 さて、第2話のアテがまったくないのですがどーしようw(知らんがな