「世界の裏側…?」
「ああ~ブラジルですね?」
「…お姉ちゃん、流石にそれはないと思う…」
「ああ~ブラジルですね?」
「…お姉ちゃん、流石にそれはないと思う…」
え~でもでも、日本の裏側ってブラジルよね~?
などと末の妹に尋ねる朝子をスルーして、紙とペンを持ってきた通之介が、大きく円を描いた。
などと末の妹に尋ねる朝子をスルーして、紙とペンを持ってきた通之介が、大きく円を描いた。
「俺が言った“裏側”ってのは、こーいうことなんだ。まひるたちがいる<この世界>は…こうだろ?」
円の外側に、円と棒で人型を描き込む。
「そして、俺がいた世界は……こうだ」
今度は、内側に人型を描く。
「……??」
「地球空洞説?」
「あ、うん。それ近い」
「…なにそれ?」
「あ、うん。それ近い」
「…なにそれ?」
まひるが地球空洞説について咲夜にたずねる。
「1962年、イギリスの天文学者エドモンド・ハレーが唱えた一説で、地球の中身は空洞で、その内側に人や生き物が住めるんじゃないか、っていうもの。……もっとも、地球の内部がほとんど明らかになってる今は、SFくらいでしか使われないけれど」
「そうなの? じゃ、そんなのありえないってことじゃない」
すぱっと言い切るまひる。
「おいおい、いきなり断定するなよ。俺が今ここにいることが証拠の一つだろ?」
「そりゃ…。でも、本当にそれがあるってことの証明にはならないじゃない。私達を連れてってくれるっていうなら別だけど」
「そりゃ…。でも、本当にそれがあるってことの証明にはならないじゃない。私達を連れてってくれるっていうなら別だけど」
まひるの言い分に、無茶言うなとボヤく通之介。
「俺がこっちに“戻った”原因だって分かってないってのに、どーやって連れてけってのさ?」
「さすがにバスや電車でってわけにはいかないものねぇ…?」
「さすがにバスや電車でってわけにはいかないものねぇ…?」
「確かに…別の世界に行ってたっていうなら、10年以上も見つからなかった理由にはなる…か。それに…シュ・ヴェルトって言ったっけ、あのロボットみたいなの。今の日本の…ううん、どこの国でだって、あんなの作れるわけがない。
まして、電機やガソリンの類で動くならともかく、あれは魔法で動いたというのだ。改めて、彼が別の<世界>から戻ってきた…との言葉が、現実味を帯びてきた。
とつとつと語りだす。
狼とも狐とも取れぬ異様な獣に襲われたところを、西洋の騎士のような格好の男に救われたあと、近くに住む木こりの老夫婦に引き取られた通之介は、幼いながらも自分が住んでいたのとは違う世界の存在を受け入れ、平穏に暮らしてきたという。
「で、2年位前かな。世話になったじいちゃんばあちゃんに恩返しがしたくてさ。金になる仕事を探して……騎士になったんだ」
「あ、それであのカッコ……」
「うん。あの時助けてもらった騎士にあこがれたってのもあってさ。まぁ、俺が騎士になった頃にはすでに除隊してて会えなかったんだけど」
「あ、それであのカッコ……」
「うん。あの時助けてもらった騎士にあこがれたってのもあってさ。まぁ、俺が騎士になった頃にはすでに除隊してて会えなかったんだけど」
それから、紆余曲折を経て、かのロボット…聖魔甲冑(エンチャント・アーマー)であるシュ・ヴェルトを拝領するなど、騎士としても着実に力をつけてきた最中、魔物討伐の任を帯びて進軍中に、こちらの世界…いわば地上に戻ってきたのだ。
「その魔物ってのが、一緒に地上に出てきたあのボーンゴーレムな。まぁ、そいつはこっちで倒したから、同じようなことはもうおきないと思うけど」
そう聞いて、まひるがほっと胸をなでおろした。あんなのが次々と出てこられたのではたまったものじゃない、と肩をすくめて呟くと、通之介もそりゃそうだ、と微苦笑した。
「それで、これからどうするの?」
「ああ……とりあえず、向こうに戻らなきゃとは思うんだけど…」
「ああ……とりあえず、向こうに戻らなきゃとは思うんだけど…」
そう答える通之介に、まひるは少し寂しさを憶えた。
(……なによ、しばらくいるくらい言っても……)
「ま、手がかりもないんじゃなんともなぁ。とりあえず、なんで俺がこっちに戻ったのかを、可能な限り調べてみることにするよ」
「そ、そう……まぁ、暇だったらあたしも手伝ったげるわ」
「そ、そう……まぁ、暇だったらあたしも手伝ったげるわ」
すぐにはここを離れないことが分かり、まひるは少し頬を緩めた。
「とりあえず明日になったら家に戻ってみるよ。父さんと母さんにも会いたいしね」
「あ、それなんだけどさ……」
-つづく-
---------------------------------
ちなみに、緯度経度から日本の真裏を正確に表すと、ブラジル沖…つまり海の中だそうで。かろうじて九州の端が南米大陸に引っかかってる程度とか。
<裏世界>のコンセプトは地球空洞説とダイソン球。アクマ族はいませんが(ぇ
以上、物語の進行にはまったく関係のないウンチクですた。