自分の席に着いたとたん、あくびがこぼれた。
「ん、寝不足か柊?」
同じ講義を取っていたらしいが声をかけてきた。
「ん、まーね」
「夜更かしは美容の大敵だぜ~? ま、その点あたしはちゃーんと寝てるけどなっ」
「夜更かしは美容の大敵だぜ~? ま、その点あたしはちゃーんと寝てるけどなっ」
…あんたの場合、課題もせずに寝てるんだろ。
まぁ、私も課題やってて夜更かししてるわけじゃないんだけど。
「…あ」
ぶるっと振動。
ポケットで震える携帯を開くと、あいつからのメール。
ポケットで震える携帯を開くと、あいつからのメール。
…“あくびしてた?”だって。……って、あいつはエスパーか。大学違うのによくわか…いや、分かるかな。
昨日も遅くまで電話、してたから。
ぐっどないと☆こーる
稜桜学園を卒業して、はや半年以上。
恋人になったあいつとは、別の大学に進むことになって。ちょっぴり寂しいなぁ…なんて思ったり。
恋人になったあいつとは、別の大学に進むことになって。ちょっぴり寂しいなぁ…なんて思ったり。
恥ずかしいから、口にはしないけど。
それでも、今までより声を聞く機会とか減って。
寂しいって言うか、なんか物足りないんだ。
寂しいって言うか、なんか物足りないんだ。
…いや、そりゃ週末とかはデートとかしてるけど。
…それでも、ね。
…それでも、ね。
*
いいえ、ニュータイプです。と返された。…最近、こなたに毒されてきてない
『俺が転校するのがもーちょっと早かったら、大学、同じトコ狙えたのかもね』
「今更よ。それに、こっちの大学は文芸学部ないし、そっちには法学部ないでしょ?」
『そりゃそうなんだけど』
「今更よ。それに、こっちの大学は文芸学部ないし、そっちには法学部ないでしょ?」
『そりゃそうなんだけど』
ちょっと沈黙。
『ほら、かがみと一緒の高校生活って短かったじゃん? だからさ、一緒に登校ってやつ、大学でもやってみたかったなって』
……こーいう恥ずかしいセリフを臆面も無く言ってのけるんだから、彼には負けるわ。
まぁ、それは私も同じ思いだけどね。
まぁ、それは私も同じ思いだけどね。
「…そう、ね。電車とか、バスとか乗って」
『帰りはお疲れのかがみが俺によりかかってこっくりこっくり船こいでね』
「そ、そんな恥ずかしいことしない…っ」
『えー、して欲しいなぁ?』
『帰りはお疲れのかがみが俺によりかかってこっくりこっくり船こいでね』
「そ、そんな恥ずかしいことしない…っ」
『えー、して欲しいなぁ?』
あーもう、恥ずかしいセリフ禁止っ!
・
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そんな、他愛のない会話を続けて。
気づけば日付はとっくの昔に変わっていた。
気づけば日付はとっくの昔に変わっていた。
「あ……もうこんな時間」
『え? あ、ホントだ……ごめんね、長々と』
「…ううん、私も楽しかったし。っていうか、あんたの電話代が心配」
『お気になさらず。無料通話をうまくやり取りしてるから』
『え? あ、ホントだ……ごめんね、長々と』
「…ううん、私も楽しかったし。っていうか、あんたの電話代が心配」
『お気になさらず。無料通話をうまくやり取りしてるから』
……まさか私以外に電話する人いないの?
『ま、恋人を寝不足にさせるのも気が引けるね。そろそろ切る……へあっくし!』
「ん、風邪?」
「ん、風邪?」
盛大なくしゃみがスピーカーを振るわせる。
『あ、いや。ちょっと冷えてきたなって』
「窓でも開けてるの? もうすぐ冬なんだから、油断してるとすぐ風邪引いちゃうわよ。今は新型インフルエンザだって流行ってるんだから」
『うん、気をつけ……っくし!』
「窓でも開けてるの? もうすぐ冬なんだから、油断してるとすぐ風邪引いちゃうわよ。今は新型インフルエンザだって流行ってるんだから」
『うん、気をつけ……っくし!』
言ってるそばからまたくしゃみ。
…あれ?
なんか今、くしゃみ……外から聞こえたような?
(……まさかね?)
そう思いながら、カーテンを開いて外を見る。
「『……あ』」
目が合った彼の声が、スピーカー越しと、直接耳に届いた。
・
・
・
・
・
「……びっくりしたわよもう…」
「はは。サプライズ大成功」
「あのねぇ…。ああもぅ、こんな冷えちゃって。ホントに風邪引いちゃうわよ!?」
「はは。サプライズ大成功」
「あのねぇ…。ああもぅ、こんな冷えちゃって。ホントに風邪引いちゃうわよ!?」
慌てて外に飛び出すと、ゆうきくんはいつものふわふわした笑顔で出迎える。
頬に手を当てると、びっくりするほど冷たかった。
頬に手を当てると、びっくりするほど冷たかった。
「ん、声聞いてたら、なんか寂しそうな感じしたから」
それで…わざわざこっちにきたって言うの?
「お互い忙しくて、ロクに顔合わせてないもんねぇ」
ごめんね、寂しい想いさせてさ。なんて言う。
「……そんな事言って、あんたのほうが寂しかったんじゃない?」
ああ、素直になれない自分が恨めしい。うれしいのに、なんか憎まれ口を叩いてしまう。
「…まぁね。俺も、声聞いてるだけじゃ、ちょっと辛くなってさ」
「………」
「ん?」
「………」
「ん?」
黙りこくる私に、ニコニコ笑顔のゆうきくん。
「……ずるい」
「え?」
「……なんでもないっ」
「え?」
「……なんでもないっ」
言葉をつむぐのももどかしくなって、ゆうきくんに抱きつく。
「かが…み…?」
「あ…暖めてるの! ゆうきくん、すごく冷えてるんだもん」
「あ…暖めてるの! ゆうきくん、すごく冷えてるんだもん」
ぎゅっと、腕に力を込めて、これでもかってくらいに締め付ける。
「…そっか。ありがと」
ゆうきくんの優しい声が、耳をくすぐって、私の背中を、彼の腕がそっと抱きしめる。
「ん、あったかいや」
そのまま、どのくらいそうしていただろう。
どちらからともなく、体を離す。
「ありがと」
「うん?」
「今日、来てくれて。…ちょっと、元気でた」
「うん?」
「今日、来てくれて。…ちょっと、元気でた」
素直に、その言葉が出た。
「それはよかった。うん、俺も…元気でた。かがみ分の充電もできたし」
「や、やだもぉ…」
「や、やだもぉ…」
二人して笑う。少し冷えた空気に、二人分の白い息がふわりと浮かんだ。
「…名残惜しいけど、そろそろ帰んないと」
「……うん」
「……うん」
……かがみ? と、不意に呼ばれる。
「何?―――っ」
次の瞬間、彼との距離は再びゼロになって……少し乾いた唇が、私の唇に触れた。
「…じゃ、おやすみっ」
そう言って、ぱっと駆け出していくゆうきくん。
「も……もーっ!」
跳ね上がった心臓が、ものすごい音を鳴らしてる。たぶん私、耳まで真っ赤だ。
「……おやすみ、ゆうきくん」
なんだか別の意味で、今夜は眠れそうに無かった。
-fin-
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燃えが続くと萌えを書きたくなるんです……っ
…って、言うほど燃えに傾倒してたかどうかは知らないけどな!(ぇ
恋人との夜更かしコール。良いものです。
…といいたいところですが、私って電話苦手なんですよねw とくにプライベートがらみは。話のネタが出ない。
仮に彼女できても、電話とかうまくできそうにありません。もう直接会って膝の上に座らせてまったりしながら二言三言会話すればいいよ。
…まあどっちにせよ、蝶縁のねえ話だけどな!(爆