「―――!?」
走る五郎の視線が、人影を捕らえる。外回りの会社員だろうか、何事も無く平穏に歩いていた。
ふと、その男が走り抜ける五郎を目で追い…振り返る。と、その体が、ぐらりと傾いた。
「なっ!?」
足を止める五郎の眼前で体が、へその辺りで真っ二つになり、切り裂かれた上半身がどさり、と落ちた。
「なん、だって?」
慌てて駆け寄るが、男は既に事切れていた。体を見ると、まるでCTスキャンのように傷一つ何断面で、真っ二つになっている。
「…これは…まさか?」
遺体に手を触れる。と、僅かに残った“彼”の記憶が伝わってきた。
「…この姿は…?」
歩く男の脇を、超高速で何かが横切り、すれ違う刹那、極薄の刃で切り裂いたのだ。
そしてその“何か”は、五郎にも見覚えのあるものだった。
「…!」
不意に、背中に殺気が降りかかる。咄嗟に丹田に力を込めた、次の瞬間―――
「……むんっ!」
鈍い音が、サナギマンに転じた五郎の腹から響いた。
「……貴様…倒したはず?」
硬い表皮で斬撃を防いだサナギマンが振り返ると、トンボに似た容姿の怪人が口を震わせて嗤っていた。
「はっ!」
持ち前の怪力で受け止めていた剣を跳ね除けると、怪人はひょいと飛び退き、間合いを取る。
「……貴様は…いや、貴様らは一体…なぜ人を殺める!? バンバやデスパーのように、恐怖で人々を支配するつもりなのか!?」
『……ヒトハ』
サナギマンの問いに、怪人がぱっくりと口を開け、しゃべる。
『ヒトノママデ……アレバイイ……』
「質問に答えろ!」
憤るサナギマンであったが、怪人はそれきり口を閉ざすと、剣を振りかざし、飛び掛ってきた。
「くっ……やるしかないか……」
ふと腰のベルトに意識を向ける。イナズマンへと変転するには、まだ少しエネルギーが必要だ。
「……見つけたぞ!」
身構えたサナギマンの耳朶を、新たな声が打った。
「んっ?」
視線を向ける。茶髪の青年が、怒りの形相で怪人をにらみつけていた。
「うおおおおおっ!」
獣のように吼え、両腕を顔の前で交差させる。
「変身ッ!!!」
そう叫んだ後、地を蹴って走り……怪人に拳の一撃を喰らわせる。
次の瞬間―――その姿は、異形へと変化した。
-つづく-
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当初の予定よりちょろっと早く、ギルス登場。
しかしギルスへの変身プロセス(特に最初期)を文章で再現しようと思うと難しいんじゃないかと。
ま、せっかくだからどっかで再現させてみたいですがw
<2009年11月18日09:27 mixi日記初出>