都内某所にある、警察病院。
その一室にて、窓越しに外を眺める青年の姿があった。
「……何かが、目覚めたようです」
「何…か?」
「何…か?」
呟いた青年の背後で、執事のように佇む男が問いかける。
「アギトとも…ギルスともちがう。だが、あの“力”を継いでいる可能性の高い……」
うわごとのように唇からこぼれる言葉は、まるで旋律のように空気を振るわせる。
「……」
そんな青年を、訝しげに見つめる男。
「人は…人のままで、いればいい……」
祈るように目を閉じ、青年はそう呟いた。
*
五郎が、謎の怪人と対峙してから、数日が経過した。
当面の日銭を稼ぐべく、小さな引越し業者で短期のバイトを始めた五郎は、先輩従業員とともに今日の仕事場へと赴いていた。
「ほぉ、お前さん、この辺に住んでたのか」
「ええ、と言っても30…」
言いかけて、慌てて咳き込む。
「ん?」
「あ、いや。10年ほど前の話なんですけどね」
外見年齢は20代の五郎である。うかつに変な目で見られる言動は控えたいところであった。
「ええ、と言っても30…」
言いかけて、慌てて咳き込む。
「ん?」
「あ、いや。10年ほど前の話なんですけどね」
外見年齢は20代の五郎である。うかつに変な目で見られる言動は控えたいところであった。
「あ、そろそろ着くぞ。お客さんの名前は、えーと…丸目様だな」
「ま、丸目!?」
「どうした、知り合いか?」
「ま、丸目!?」
「どうした、知り合いか?」
「こんちわー! キタムラ引越しセンターですーっ」
先輩の快活な声が、家の中から住人を呼ぶ。
「あら、お待ちしていましたわ。それじゃ、早速お願いしますね」
家主か、その妻であろうか。妙齢の女性が顔を出した。ふと家の奥に視線を向けると、遅れて出てきた年配の男と目が合った。
先輩の快活な声が、家の中から住人を呼ぶ。
「あら、お待ちしていましたわ。それじゃ、早速お願いしますね」
家主か、その妻であろうか。妙齢の女性が顔を出した。ふと家の奥に視線を向けると、遅れて出てきた年配の男と目が合った。
「…どうした、とっとと運ぶぞ!」
「あ、は、はい!」
「あ、は、はい!」
ぼーっとしていたところを先輩にどやされ、慌ててトラックへと向かう。
(…偶然の一致か)
主人らしき男は、かつての友人とは似ても似つかない優男であった。あるいは30年という月日がああ変えてしまったのかもしれないが、五郎は直感で、別人であることを悟った。
(元気にやっているだろうか…あいつは)
50代くらいになっているであろう彼の容貌を想像して、軽く噴出した。
*
よっこらせ、と大きなソファをひとりで担ぎ上げる。
「へぇ、ナリのわりに力あるなぁお前」
「まぁ、体力には自信あるんですよ」
本当は念動力の力に少しばかり頼っている。本来は私利のために超能力を用いるのは善しとするところではないのだが、不景気の上に就職難の平成の世。そうも言っていられなかったのだ。
「へぇ、ナリのわりに力あるなぁお前」
「まぁ、体力には自信あるんですよ」
本当は念動力の力に少しばかり頼っている。本来は私利のために超能力を用いるのは善しとするところではないのだが、不景気の上に就職難の平成の世。そうも言っていられなかったのだ。
大物をあらかた設置し終え、一息つく。
―――と、五郎の研ぎ澄まされた超感覚が、悪しき気配を察知した。
「!?」
首にかけていたタオルを放り出し、駆け出す。
首にかけていたタオルを放り出し、駆け出す。
「ん? っておい! どこ行くんだ渡!? 渡よ!?」
「すみません、すぐ戻ります!!!」
「すみません、すぐ戻ります!!!」
先輩の怒声を背中に浴びながら、五郎は住宅街を駆け抜けた。
-つづく-
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丸目というのは、イナズマン本編に登場した丸目豪作という人物で、イナズマンこと五郎の友人として、時に少年同盟らとともに新人類帝国相手にも戦ったこともあります。
ちなみに、五郎のバイト先は、その豪作を演じた北村晃一という方から名前をいただきました。
ちなみに、五郎のバイト先は、その豪作を演じた北村晃一という方から名前をいただきました。
最近は時代劇やサスペンス系の2時間ドラマなどに出演されているようです。
さて、住宅街で不穏な気配を察知した五郎。その行き先には何が待つ…?
<2009年10月19日07:49 mixi日記初出>