炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【アギト×イナズマン】Fight for FREEDOM/シーン4

「…思わず力を使ってしまったが……」

 咄嗟に発動した<逆転チェスト>で跳ね返した銃弾をまともに受けてしまったG3-Xを思い出し、その身を案じる五郎。

「それにしてもあれは……機械の鎧のようでもあったが…?」

 長い月日がもたらしたテクノロジーの発達に驚いていると、ふと腹が情けない音を上げた。

「…む」

 そういえば、“目覚めて”から数日、水しか口にしていないことを思い出した。ポケットに残っていた財布の中身は、ある程度身なりを整えるのに使うとほとんどが消えていった。

「まさかここまで物価が高騰しているとは……」

 日本経済の行く末に少しばかり不安を覚える五郎であった。

 とはいえ、景気の悪さを憂いてみても腹が満たされるわけでもなく。

「どうかしたんですか?」

 すきっ腹を抱えて途方にくれていると、背後から誰かが声をかけてきた。


   *


「いや、申し訳ない。見ず知らずの俺に、食事を振舞ってくれるなんて」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ。あ、お代わりいりますか?」

 ニコニコと笑いながら茶碗にご飯をよそう青年……津上翔一と名乗った彼に招かれ、彼が居候している美杉邸を訪れた五郎は、実に30余年ぶりの暖かな食事に心打たれていた。

「ところで、君がお世話になっているというご家族の方は? ぜひお礼を言いたいのだが」
「あーいや、それが朝から出かけてまして。ひとり寂しく朝食をとろうとしていたところに…」
「腹を空かせた俺に出くわした…と」

 ええ、とうなづく。

「これも何かのご縁ですね。ええと…」
「五郎……渡五郎だ。よろしく」

 改めて自己紹介し、握手を交わす。

(………うん?)

 ふと、五郎の脳裏に翔一の記憶のヴィジョンが浮かぶ。
 そのつもりではなかったが、触れた瞬間にサイコメトリー能力が発動してしまったらしい。

 だが、そのヴィジョンは、たった一瞬で途切れてしまう。

(これは……まさか?)

「…津上くん、君は……記憶喪失なのかい?」
「え? なんで分かったんですか?」
 至極あっけらかんと、翔一が答える。

 五郎が尋ねると、翔一は自らの身の上を簡単に説明した。

「なるほどね。…よし」
 妙案を思い立ち、五郎が翔一に向き直る。

「一飯の恩義だ。俺が君の記憶を取り戻してみせよう」

 サイコメトリーの応用を利かせられれば、可能なはずである。

「そんなことできるんですか? ひょっとして渡さんって……カウンセラーさん?」
「…まぁ、そんなところだ」
 流石に超能力者だというのははばかられた。

「……でも、いいです」
「え?」

 驚いて翔一を見る五郎。翔一の表情はどこまでも穏やかで、その真意を読み取ることはいかな超能力者とて難しかった。

「俺、今のままでも十分楽しいですし。急いで記憶取り戻さなくてもいいって思ってますから」

 思い出すときは、その記憶が本当に必要なときだと思うんです。
 だから、それを待ちます。

 そう言って、屈託無く笑った。

「……そうか」

 五郎もそれでいいと思った。

 ・
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 その後しばらく雑談たのち、昼食もと誘う翔一に、そこまで世話になるのも忍びないと断って、五郎は美杉邸を後にした。


「……何故だろうな」

 歩きながら、ふと呟く。

「彼とは、また会いそうな気がする」

 五郎には、未来視の能力は無い。

 それは、ただの予感であった。


 ―――ただ、それが本当になることを知るのは、そう遠くない未来のことである。


   -つづく-



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 氷川くんに続き、しょーいちクンが登場。
 本編の時間軸にあわせるならば、37~41話くらいの間。
 シャイニングフォーム習得済みで、まだ記憶が完全に戻っていないとき。
 時期的にはアナザーアギトが暗躍を始めたり、水のエルが復活したりとかなりエピソード的には忙しいはずなのですがw

 あるいは、劇場版「PROJECT G4」の世界観の後日談としてとらえるのも手かもw
 アレは厳密にはテレビシリーズには絡んでないですしねw

 さて、残る仮面ライダーはあと一人。はたして、いかなる邂逅になるのか……?

 待て次回!

<2009年10月15日06:39 mixi日記初出>