紅魔館、正門前。
「で、どちらへ?」
「博麗神社よ。ちょっと野暮用……と言ったところかしら」
「博麗神社よ。ちょっと野暮用……と言ったところかしら」
夕刻までには戻ると思うわ、と言い残し、よっこらしょと浮き上がったパチュリーは、博麗神社へと飛んだ。
「……野暮用、ですか」
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―――ところ変わって博麗神社。
「紫と連絡を取りたい?」
「ええ。ちょっとのっぴきならない事情ができてしまって。……どこぞの紅白巫女は仕事熱心ではないようだし?」
「ええ。ちょっとのっぴきならない事情ができてしまって。……どこぞの紅白巫女は仕事熱心ではないようだし?」
「……あいつとの連絡方法なんて知らないわよ?」
「え? だって貴女お友達でしょうに?」
「誰と誰がよ……」
「え? だって貴女お友達でしょうに?」
「誰と誰がよ……」
ため息をつく巫女。が、すぐに表情を元に戻す。
「まぁ連絡方法は知らないけど、呼び出す手なら無くはないわね」
「そう。じゃあそれをお願い」
「……仕方ないわねえ。あんまりやりたくないんだけど。アレやったらあいつ怒るんだもん」
「まぁ連絡方法は知らないけど、呼び出す手なら無くはないわね」
「そう。じゃあそれをお願い」
「……仕方ないわねえ。あんまりやりたくないんだけど。アレやったらあいつ怒るんだもん」
ぶつくさ言いつつ、それでも御幣(ごへい)をひょいと振りかざし、肩の力を抜いて深呼吸をする。と、程なく妙な寒気がパチュリーの全身を覆った。
「何をやってるのかしら霊夢?」
「むきゅ!?」
背後からぼんやりしたような凛としたような声がして、パチュリーは驚いて振り返る。そこにはふくれっつらのスキマ妖怪……八雲紫の姿があった。
「貴女、博麗の巫女としての自覚に欠けるんじゃなくて? 以前それで道具屋の店主が“向こう”へ落っこちちゃったことをもう忘れたの?」
「だったら、一応にもあんたと連絡を取る手段を用意して頂戴。できる限り使いたくないけどね」
「むきゅ!?」
背後からぼんやりしたような凛としたような声がして、パチュリーは驚いて振り返る。そこにはふくれっつらのスキマ妖怪……八雲紫の姿があった。
「貴女、博麗の巫女としての自覚に欠けるんじゃなくて? 以前それで道具屋の店主が“向こう”へ落っこちちゃったことをもう忘れたの?」
「だったら、一応にもあんたと連絡を取る手段を用意して頂戴。できる限り使いたくないけどね」
ああ、確かに彼女はたとえ連絡手段があって、それを使うことを強いられる状況下にあってもギリギリまで使いたがらないだろう。
「……今度考えておきますわ。ところで、私が来るのを待っていたようだけど……用があるということかしら?」
「用があるのは私じゃないわ。そこのちっこい魔法使いよ」
「用があるのは私じゃないわ。そこのちっこい魔法使いよ」
自分だって小さいほうだろうに……と内心ボヤきながら、紫と視線を交わす。光の反射で時折紫色を帯びる金色の瞳は、ともすれば全てを見透かされてしまいそうで、パチュリーは僅かに視線をそらした。
「あら。これは珍しい面会者ねえ。用件は……成程」
流石と言うべきか、紫はパチュリーの来た理由を早くも理解したようだった。
「場所を変えましょう。着いていらっしゃい」
すっと紫が手を伸ばす。人差し指が空をなぞると、二つのリボンで結ばれた線が現れ、ゆらり、と広がって空間を割った。
「……まさか、ここを通っていくの?」
「当然でしょう? ほら、怖くないから」
「当然でしょう? ほら、怖くないから」
後ずさるパチュリーの手を取って、紫は優雅に割れた空間の先……即ち<スキマ>へと入り込む。
「~~~~~っ」
得体の知れない世界に、パチュリーは目を閉じ息を止めた。
「…ハイ、着いた」
「?」
「?」
すぐ傍で穏やかな声がした。おそるおそる目を開くと、そこは見慣れた紅魔館の図書館である。
「100年生きてる魔法使いさんでも、怖いものはあるのねぇ」
「……未知のものに対する恐怖心がなければ、それはただの阿呆よ」
「……未知のものに対する恐怖心がなければ、それはただの阿呆よ」
憮然とした表情で、パチュリーが呟いた。
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「……と、言うわけなのだけれど」
改めて紫に今回のいきさつを説明する。話を聞き終えた彼女は、咲夜が淹れた紅茶を一口含み、小さく頷いた。
「私としては早急に手を打つべきだと思う。仮に……万に一つと仮定して、地霊が何もせず、地底の妖怪も現れないとしても、地霊はいるだけで怨念をばら撒いていくわ。その怨念が幻想郷に何の影響も齎さないとは限らない」
「貴女の仮説には同意するけれど……わたくしたちが動くのはあまり好ましくないですわ」
「どうして? ……過去にあなた方地上の賢者と地底の住人達と交した<契約>のためかしら?」
「貴女の仮説には同意するけれど……わたくしたちが動くのはあまり好ましくないですわ」
「どうして? ……過去にあなた方地上の賢者と地底の住人達と交した<契約>のためかしら?」
パチュリーの指摘に、紫は「よく知っているわね」と目を細めた。
「まあ、それ以外にも理由が無いわけではないのだけれど。ともかく、地底界には地底界の<仕組み>というものがあります。あまり派手に動くには賛成しかねますわ」
「でも人間達が動かない。このままでは後手に回ってしまうことになるけれど、それでもいいのかしら?」
「でも人間達が動かない。このままでは後手に回ってしまうことになるけれど、それでもいいのかしら?」
そうねぇ……と紫は少し考え込むそぶりを見せ、小さく嘆息する。
「しょうがないわ。貴女たちに<また>動かれたら面倒だしね」
「またって何の話なのか……」
「またって何の話なのか……」
スキマ妖怪の皮肉にパチュリーはジト目でとぼける。
「それはともかく、とりあえず貴女が動いてくれない? 地底のことも詳しそうだし」
幻想郷に於いて最古参と目される紫である。地底界との契約にも関わっている彼女なら解決策を見つけることも容易であろう。だが、紫は首を横に振った。
「<私たち>は動きません。地底に向かうのは<人間>だけです」
なぜなら――と一度言葉を止め、紫は軽く地面を……その更に下の地底を睨みつける。
「これは私たちを誘き寄せる罠……かも知れませんから」
そう言って、彼女は冷めた紅茶を静かに飲み干した。
-つづく-
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プロローグ(2)て何ぞwwww
まぁ、バックストーリーを膨らませてるわけだからプロローグであることに変わりないわけなのだが。
ちなみに、次回もプロローグですw
ちなみに、次回もプロローグですw
(3)ですねわかります。
霊夢が紫を呼び出した方法とは、幻想郷の根幹をなす「博麗大結界」を意図的に緩めること。コレをすると、紫が注意しに霊夢のところにやってくるという寸法です。
もっとも、ヘタをすると幻想郷がどうにかなりかねない荒業なのですが。
ちなみに、このネタ自体の初出は小説作品の「東方香霖堂」より。作中で彼女が紫を呼ぶために結界を緩めたことで、主人公である霖之助が現実世界に落っこちて(?)しまうのです。
もっとも、ヘタをすると幻想郷がどうにかなりかねない荒業なのですが。
ちなみに、このネタ自体の初出は小説作品の「東方香霖堂」より。作中で彼女が紫を呼ぶために結界を緩めたことで、主人公である霖之助が現実世界に落っこちて(?)しまうのです。
ところでこの「香霖堂」。単行本化が延期に延期を重ねておりますorz
いろんな雑誌を渡り歩いた変遷が、延期の要因のひとつになってるんだろうなァ……などとなどと。