炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

東方SS

東方地霊殿・異聞/第2幕・第5場

魔理沙とパルスィのスペルカード戦は、間もなく佳境に差し掛かろうとしていた。 『や、やるじゃない……態々贋物の方を狙っておいて、その上で攻略するなんて……』 『スペルカード戦に関しちゃ、こっちに一日の長があってね』 ふふん、と鼻を鳴らす魔理沙。パル…

東方地霊殿・異聞/第2幕・第4場

『とっとっとっと!』 焦りを滲ませた魔理沙の声が、水晶越しに届く。それを聞き流しながら、パチュリーは書棚の壁の切り崩しに取り掛かっていた。 (魔理沙に言われたからって訳じゃあないけれど……あの妖怪のことが気になるのは確かだものね) 知らないこと…

東方地霊殿・異聞/第2幕・第3場

「ああ、これね」 ようやくお目当ての本を発見したパチュリーが興味津々とページを捲る。ややあってヤマメと思しき妖怪の情報に行き当たった彼女は、記述を指でなぞりながら黙読を始めた。 『むぅ……』 と、地底の魔理沙が不満げに唸る。 『明かりはないし、…

東方地霊殿・異聞/第2幕・第2場

強風と妖精と落石が舞う地底を、魔理沙が乗る竹箒が淀みなく進む。 自然の具現がもたらす圧力が増すのを水晶越しに感じ、少しずつ核心に近づいていっていることをパチュリーは感づいていた。 『なかなか終点にたどり着かないな。もぐってから随分経つと思う…

東方地霊殿・異聞/第2幕・第1場

扉をノックする音が、パチュリーの耳朶に触れる。 紅魔館の主だった住人の中で、図書館にわざわざノックをして入ってくれる人物は、残念ながら一人しか彼女は知らない。 「パチュリー様、お茶をお持ちしました」 「有難う。すぐに行くわ」 ティーカートを押…

第1幕/第3場

放たれた言葉が、文字が、形を成す。 スペルカード。<命名決闘法>とも名づけられた、幻想郷における戦いの<ルール>だ。 「……まさか地底にまで普及しているとはねぇ」 『まぁ、今更驚くようなことでもないさ。……っと!』 渦巻く弾幕がしなる糸のように広…

第1幕/第2場

ごう、ごうと途切れなく風が地中を吹き抜ける。その音を少々不快に感じたパチュリーは、手元の操作盤を操り、風の音を絞る。完全にカットしないのは、周囲の状況の変化を聞き取るためだ。 時折降ってくる巨大な岩塊や妖精の襲撃をかいくぐりながら、画面の向…

第1幕/第1場

真っ白い水蒸気の壁を越えると、そこは既に暗黒の世界であった。 ごう、という風切り音が聞こえ、水晶玉のモニター越しにちらりと映る魔理沙の帽子のつばがぱたぱたとなびいている。おそらく、地下には巨大な空洞があるのだろう。 『おっと、いきなりおいで…

東方地霊殿・異聞/プロローグ(3)

――八雲紫との対談から1週間。 その間、二人は互いに依頼を課した。 紫は、パチュリーからの提案で、地底にもぐることになる人間と交信するためのサポートアイテム設計し、パチュリーは、紫から異変解決を担う人間に<霧雨魔理沙>を指名され、彼女を地底へ…

東方地霊殿・異聞/プロローグ(2)

「おや? パチュリーさんがここにくるとは……というか、外出されるなんて珍しいですねえ?」 「……似たようなことを、さっきレミィにも言われたわね」 紅魔館、正門前。 パチュリーに言わせれば“珍しく起きている”門番の紅美鈴の声に、やれやれとため息をつく…

東方地霊殿・異聞/プロローグ

――紅魔館地下・大図書館。 光も風も届かぬこの知識の蔵は、たった一人のために用意されている。 「……この本前に読んだわね」 彼女――パチュリー・ノーレッジは、ぱたんと広げた本を閉じ、次なる知識の探究を求め、積み上げた本に手を伸ばす。 彼女にとって読…