炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1幕/第1場

 真っ白い水蒸気の壁を越えると、そこは既に暗黒の世界であった。

 ごう、という風切り音が聞こえ、水晶玉のモニター越しにちらりと映る魔理沙の帽子のつばがぱたぱたとなびいている。おそらく、地下には巨大な空洞があるのだろう。

『おっと、いきなりおいでなすったな。ははっ、こうでなくっちゃ』

 聞こえてきた声に、視界を魔理沙の視線にあわせると、わらわらと集まってくる妖精たちがいっせいに弾をばら撒いてきた。
 たとえ地底と言えど妖精はいるらしい。

「……まぁ、考えてみればおかしい話じゃないわね」

 妖精とは自然の具現である。地底とて自然の一部なのだから、地底の具現たる妖精がいたとて不自然ではないのだ。

 しかし、妖精がこれだけ集まっているのはやはり不自然と言えるだろう。過去の異変の際もそうだったが、こういうとき妖精が群れるのは、何らかの警告であることが多いのだ。

「やはり、この下に何かあるのね……」

 それが何なのかは、まだ核心に至る材料に乏しいのが現状だが。

 と、不意に妖精たちの攻撃が止む。なんとなく薄ら寒い感覚がパチュリーの背中を振るわせた。

『……っうお!?』

 ソレを察したのは魔理沙も同様だったらしく、軽快に飛ばしていた箒を巧みに操りクイックターンする。
 刹那、魔理沙がいた場所に音もなく桶が降ってきた。

『なんで桶が降って来るんだよ!? ……って、なんだ、中に誰か居やがるぜ』

 ……なるほど<釣瓶落とし>か。

 先日調べた書物の中に載っていた妖怪を思い出す。鬼火を落とす怪異、釣瓶火とも解釈される地底の妖怪だ。
 知識を整理している端から、釣瓶落としが鬼火を散らせ、魔理沙の頭上に落としていくのが分かる。

 見かけは小柄だが、地底の妖怪に変わりはあるまい。魔理沙に助言のひとつでも……

『あらよっ……と!』
「……あら?」

 どうやらその必要はなかったらしい。釣瓶落としの少女はあっさりと撃破されていた。

『見た目のインパクトの割には、ちょいと物足りない相手だったぜ』

 ……だそうだ。この人間に、初見の妖怪を恐れるという心根はないらしい。

『ま、奥に行けばもーちょっと面白いことにはなるだろうがね。せっかくの冒険だ。そっちのが面白いや』

 にんまりと笑って、魔理沙は箒の推進力を上げる。一条の光芒が、彗星のように尾を引いて消えた。






  ?b>東方地霊殿・異聞 -An archive doesn't move.

   第1幕-Wind that blows from ungrateful ground-





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 さて、久々に地霊殿ノベライズ再開。しょっぱなはもちろん1面中ボスのキスメなんですが、仕方ないというか、出番が短いorz

 や、これがHard以降ならスペカ披露してくれるんでしょうが、イージーでのクリアすら困難な今の私にはムリです(ぇ


 さて、これを埋める活躍を期待しますよ、ヤマメダーマッ(違