ごう、ごうと途切れなく風が地中を吹き抜ける。その音を少々不快に感じたパチュリーは、手元の操作盤を操り、風の音を絞る。完全にカットしないのは、周囲の状況の変化を聞き取るためだ。
時折降ってくる巨大な岩塊や妖精の襲撃をかいくぐりながら、画面の向こうの魔理沙がふと呟いた。
『洞窟の中だってのに風がすごいぜ』
おっとと、という声が聞こえた。突風に帽子があおられかけたらしい。
「……それは地中に巨大な空洞がある証拠ね」
『耳鳴りが聞こえるな?』
「……聞こえるかしら? 私の声」
「……聞こえるかしら? 私の声」
『なんだ? どっから聞こえてくるんだ?』
「貴女の周りにいるソレから」
「貴女の周りにいるソレから」
チカチカ、と存在を示すように手製のオプション……<エブリアングルショット>を点滅させて見せる。
『なんだよ、通信機能つきなんて初耳だぜ?』
「ああ、言わなかったものね」
「ああ、言わなかったものね」
やれやれ、監視されてるってのもなんだかねぇ……と魔理沙がボヤく。と、風切り音に混じってひゅっと何かが走る音が聞こえた。
「……糸?」
白い糸状のものが画面を横切り、刹那、ソレを伝うように影が這い、魔理沙の行く手に現れた。
『おや、人間とは珍しい』
『やっぱり地底のお祭が目当てなの? そんな顔してるし』
胡散臭そうな視線を向けられ、地底の妖怪は眉をしかめた。
『行くんだったら行く、帰るンなら帰る。ハッキリしないと私も手出しし難いよ』
仕掛ける気だろうか。今回の<異変>に関わっているなら、地上から降りてきた者を<止めに来た者>とみなして襲ってくる可能性は高いが……。
「地底の妖怪は、体に悪いわ」
『……食べやしないぜこんなやつ』
『そりゃあ正解。私を食べようなんてとんだ悪食だ。……まぁ、もっとも……食べなくても体にゃ悪いけどねえ』
『……食べやしないぜこんなやつ』
『そりゃあ正解。私を食べようなんてとんだ悪食だ。……まぁ、もっとも……食べなくても体にゃ悪いけどねえ』
どれ、久しぶりに―――
そう呟きながら、地底の妖怪が微笑む。
『人間を病で苦しめてみせるかね』
言うが早いか、妖怪がひゅるっと大きく息を吸い込み、放たれた息と糸が塊をなして弾幕を生み出す。
「瘴気……簡単に言ってしまえば悪い空気、ね。比喩ではなく本当に病気になるわ」
そういえば、あの妖怪は「病で苦しめてみせる」と言っていた。
(病を操る妖怪……その線で調べて見ましょうか)
『とっと!』
『いつまでも避けてばっかじゃないってね!!』
反撃とばかりに、魔理沙が魔力弾を撃ち出した。
彼女が使用する魔力弾の媒介は、極小サイズの化け茸だ。この種類は加工が簡単な上、胞子も豊富で、特殊な溶液に浸した苗床を用意していれば、一株を一気に弾として放っても瞬時に次弾が装填され、ほぼ無制限で連射が可能なのだ。
『むむ、やるねえ人間。いや、魔法使いかい?』
『どっちもさ。私は“普通の魔法使い”ってやつでね!』
『どっちもさ。私は“普通の魔法使い”ってやつでね!』
ふふん、と得意げに笑みを浮かべ、次々に魔力弾を撃ち、妖怪に浴びせていく。
『なるほど……侮って勝てる相手じゃあなさそうだ。じゃあそろそろ本気で行こうかねぇ』
にやり、と妖怪が哂い、懐から小さな紙片を取り出した。
「あれは……符?」
パチュリーが妖怪の姿を拡大し、手元の符を映し出す。それに刻まれた文字と紋を目の当たりにし、彼女は目を丸くした。
『まずはその動きを封じるよ。スバしっこいったらありゃしないからね!』
すぅ、と息を吸い。その口が、言の葉を唱えた。
『糸は我が腕、意のままにからくりて、絡めとる罠は網の如く。
黒谷ヤマメが宣する!』
―――<罠符「キャプチャーウェブ」>!!!
-つづく-
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戦闘前の魔理沙、パチェ、ヤマメの会話は原文には沿っていますが完全に同じではありません、あしからず。
さて、原作ゲーム中では名前の紹介が入るんだけど、劇中で名乗ってるシーンがあるキャラクターってあんまりいないんですよね。ヤマメもそうですし。
いつまでも地の文で「地底の妖怪」と表記も出来ないので、スペカ発動のシーンで名乗ってもらいました。
いつまでも地の文で「地底の妖怪」と表記も出来ないので、スペカ発動のシーンで名乗ってもらいました。
スペルカードは一種の詩歌、という個人的なイメージがありまして。発動シーンやら展開シーンで詩的に表現できたら楽しいかなーとかなんとか。
当分先の話でしょうが、パルスィやさとりのスペカは早く文章化したい。後個人的に書きたいのがレミリアの<神槍「スピア・ザ・グングニル」>
やるとしたらノベライズとかじゃなくて完全な二次創作するときだろうなあ……
やるとしたらノベライズとかじゃなくて完全な二次創作するときだろうなあ……