炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【W×牙狼】KとR/銀の髑髏と黄金の風・プロローグ【スカル×先代牙狼】

 年の瀬。 
 冬の風舞うある街も、残り数刻に迫った<今年>という時間に追われながら、人々が忙しく駆け回っていた。 
 それは、こちらの探偵事務所も例外ではないようで―― 

 ・ 
 ・ 
 ・ 

「ぶぇっくしょいっっ!!」 

 盛大なくしゃみが響き、床を這っていた埃が舞う。出かかった鼻水をすすり、口の中で小さく「っくしょー」とつぶやくと、青年は再びハタキを戸棚にかけ始めた。 

「知っているかい翔太郎。くしゃみのあとに『ちくしょー』なんていうのは所謂<おっさん>と呼ばれる人種らしい」 

 含み笑いを浮かべながら、本棚を整理している少年が声をかける。 

「うるせぇ。おめーこそ知らねーのかフィリップ。昔はくしゃみすると魂が抜けるっつってな、その魂が抜けたスキをついて悪霊が入り込むってのをこーやって罵倒することで追い払ってたんだよ」 

 得意げに語りながら「まぁ、“おやっさん”の受け売りだけどな」と自分のことでもないのに自慢げにつぶやくのは翔太郎と呼ばれた青年だ。 

「あー。お父さんもよくチクショーとか言ってたわ。さっきの翔太郎が言ってたウンチク込みで」 
「マジか。うわ、そーいうコト言うなよ亜希子! おやっさんのイメージが崩れるだろ」 

 とたんに渋い顔をする翔太郎。その傍でフィリップなる少年が「興味深い……」などとつぶやきながら瞑想状態に陥る。 

「わ、コラ。フィリップ、検索すんな! 掃除してろ掃除!」 

 興味を持った事柄の“閲覧”に没頭を始めたフィリップを、翔太郎と亜希子で必死に揺する。 
 年末の大掃除の真っ最中。ただでさえ少ない人手を失うわけには行かないのだ。 
 と、翔太郎が持っていたハタキが何かをつつく。 

「……ん?」 

 ぱさり、と床に落ちたのは、やや黄ばみがかったレポート用紙。亜希子が拾い上げると、それは事務所の英文タイプで打たれたらしい報告書のようであった。 

「なんじゃこりゃ?」 
「なんで報告書がこんなとこに……?」 

 “おやっさん”こと、師である鳴海荘吉の教えで、報告書の類はきっちりファイリングをしてあるはずだ。いぶかしげな表情で、亜希子の手から報告書をひったくる翔太郎は、表紙のサインを見て目を丸くした。 

「ソウキチ・ナルミ……おやっさん?」 
「どういうことだい? あの鳴海荘吉が、ファイリングをし忘れるなんて想像もできないが……」 

 こんどはフィリップが報告書を掠め取り、表紙を開く。後ろから覗き込む翔太郎が、アルファベットの羅列を口にした。 

「……うぇあ ぜぁず らい……って、ローマ字かと思ったら英語かよ。亜希子、辞書辞書!」 

 亜希子を呼ぶ翔太郎を横目に、フィリップが刻まれた英文を淀みなく口にし始めた。 



 ――where there's light, 

  shadow's lured and fear rains 

  and by the blade of knights, 

  mankind was given hope. 





     仮面ライダーW feat.スカル 
     KとR/黒い仮面と黄金の風 





 年末に呟いた「先代牙狼とスカルのおやっさんのコラボ」 
 はじめてみました。 

 新年早々無節操!びっくりするほどユートピア!(関係ない 

 冒頭シーンが大掃除なのは年末にネタを思いついたから。1月1日に書くSSの始まり方じゃねえよ、という突っ込みは禁止(ぇ 

 さて、半分以上見切り発車で始めた本シリーズ。 
 とある今年の抱負のひとつのきっかけ、という側面もあったりなかったり。 

 はたして今回はどこまでいけるのやら。正直不安要素しかありませんが(ぇ 

 ともあれ、開幕ベルは鳴りました。 
 どうぞお付き合いくださいませ(平伏