炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【W×牙狼】KとR/銀の髑髏と黄金の風・シーン1【スカル×先代牙狼】

 それは、冬にしては妙に生暖かな……否、生ぬるい風の吹く日であった。

 白スーツの男が一人、取り壊しの決まったとある廃ビルの中を歩く。

 綺麗に磨かれた革靴から響く足音のみがこだまする中、男は自分以外に<誰か>が居ることを察し、不意に足を止めた。

「……お前だな。ここに居座って取り壊しを妨害しているのは」

 どこへともなしにかけられた言葉。だが次の瞬間、周囲の空気が揺らいだ。声をかけられた<誰か>が動揺しているらしい。

「落ち着け。何もお前を警察に突き出そうって腹じゃあない。お前にも理由があるんだろう? 聞いてやるからまずはこっちに出てきてくれないか」

 揺らいだ空気が一瞬落ち着く。

「俺が誰か……か? 鳴海荘吉――探偵だ」


   *


 鳴海壮吉に、廃ビルの持ち主である会社から依頼があったのは昨日のことだ。
 曰く、取り壊しにかかろうとすると作業員が「化け物を見た」などと言いだし仕事に取り掛かれないとの事。
 怪談の類も、近隣に心霊スポットもなく、おそらくは何者かによる悪戯であろう、ということになり、荘吉に捜査の依頼がかかったのだ。

(まさか調査を始めて早速かかるとは思わなかったがな……)

 内心で独りごちて、気配のするほうへと足を進める荘吉。と、その方角からジャリ、と地面を擦るような音が聞こえた。

「く……来るなぁっ!」

 甲高い男の声が空気を震わせる。薄暗い闇の向こうで、小柄な人影が、何かを手に握り締めているのが見えた。その<何か>に偶然ピントが合い、荘吉の表情が驚きに固まる。

  -HORROR-

 先ほどの男の声とは異なる、野太いそれが響く。周囲の気温が一気に下がったように感じ、荘吉は革靴を鳴らし跳び退いた。

 刹那、壊れた換気扇のような音が鳴り、先まで荘吉が居た場所が抉り取られた。

「……む」

 荘吉の視界に、ありえないモノが映る。先日風都ミュージアムの企画展で見た、ギーガーだったかガーギーだったか……の描いた絵から飛び出したような<バケモノ>の姿。
 地面を砕いたのはどうやらこいつらしい。

(……また、<ガイアメモリ>か)

 荘吉の眉間に皺が寄る。ここ数年、風都のいたるところで発生した不可思議な犯罪。それらは全て<ガイアメモリ>なるアイテムが引き起こしてきたものだ。
 荘吉自身、すでに幾度となく巻き込まれ、解決してきたが、一向に減る気配はなく、むしろ増える一方であった。

 ふと、自分の右手の違和感に気づく。
 いつの間にか、手の中に黒いガイアメモリが滑り込んでいた。その表面の髑髏のマークが、何かを伝えるかのように視線を荘吉に送る。

(悪いがお前を使うつもりは……無い!!!)

 ぐっと右手を握り締め、化物を睨み付ける。

「来るなっていってるんだよぉっ!!!」

 再び男の声が弾ける。すると荘吉の前に立ちはだかる化物が1匹、また1匹と増殖を始めた。古今東西のありとあらゆる<バケモノ>の姿が無節操に顕れ、それは大きなうねりと圧力を以って荘吉に襲い掛かった。

「っ!!?」

 とっさに自身をかばう荘吉の足元が爆ぜる。風圧が埃を舞い上がらせ、荘吉の視界を奪う。

「………うん?」

 と、荘吉の周囲を囲んでいた気配が突然霧散する。立ち込める埃が晴れると、さっきまでそこにいたはずのバケモノの群れは姿を消し、同時に先ほどの声の主の気配も、忽然と消えていた。

 大きくひしゃげたリノリウムの床の痕だけを残して。


   -つづく-




 ちょっち手元に「MOVIE大戦2010」も「MOVIE大戦CORE」も無いので、おやっさんのイメージがビミョーに揺らぎ気味なような。 

 ところで俺の書く特撮系SSの廃ビル登場率は異常だと思う。昭和特撮の石切り場か!ってレベル。 


 さて、タイトルにまつわるお話。 
 のっけからイニシャルを2個使うという禁じ手に出てますがまぁそれは見逃してもらうとして(ぉぃ 
 「黒い仮面と黄金の風」というタイトルは、牙狼ファンにはおなじみ、あの絵本のタイトルを拝借させていただいています。 

 思いついた後で「ちょっとまてスカルの仮面は黒くねーよwwww」とセルフツッコミをしたものの、語呂がよかったのでそのまま採用。 

 一応仮タイトルなので、コレよりいいの思いついたら随時差し替え予定。 
 ただし、差し替えなく終わる可能性高しw(ぇ


(1/3追記)
 マイミク・小笠原氏より超絶ナイスなタイトルを賜りましたので変更しました。

 新たに題しましたるは「銀の髑髏と黄金の風
 以後、よろしくお願いいたします!