「……」
金色の鎧。その美しさと力強さに、声を失う荘吉。
左手に添えられた刀身に、魔道輪ザルバが噛み付き、火花が走った。
「……っ!」
一息に跳ぶ。
振り下ろした牙狼剣が、ホラーの身体を抉り、斬りおとす。発せられた悲鳴が廃ビルの窓ガラスを震わせ、ヒビ割れた。
と、斬りおとされたホラーの身体の一片が突然蠕動する。見る間に肥大化したそれは、どこかの国の伝承に出てきそうな怪物の姿を模った。
「なに!?」
『バグロディアにあんな能力はないはずだぜ? ガイアメモリの力ってのはよくよく強大らしいな』
ザルバが歯を鳴らして驚愕を示す。変化したホラーの肉片は数度鼻をヒクつかせると、その牙の矛先を荘吉……スカルへと向けた。
『探偵ッ!』
ザルバの声が飛ぶ。荘吉はたじろぐことなく、抱えていた男を床に横たわらせ、スカルマグナムの引き金を数度引いた。怪物化した肉片はその姿を維持できなくなり、やがて動かなくなった。
「……心配する必要はなさそうだな」
「そういうことだ」
仮面の向こう側で、二人の男が不適に笑う。
『おっと、おしゃべりしてる余裕はなさそうだぜ?』
そんな二人に釘を刺すように、ザルバが口を開く。見ると、ホラーの喪ったはずの肉片がいつの間にか元に戻っている。
そればかりか、両腕が変化し、悪鬼悪霊の姿を模る。
『くるぞ!』
ザルバの声とともに、悪鬼の類に変化したホラーの腕が飛び出し、襲い掛かる。
「はっ!」
それを牙狼剣で斬り払い……
「んっ!」
スカルマグナムで撃ち貫く。
「……探偵。いや……もう一度名前を聞いておこう」
「荘吉……鳴海壮吉だ。あんたは確か……」
「冴島大河だ」
改めて、自己紹介をする。互いの視線は仮面に隠れ見えることはなかったが、考えていることは瞬時につながった。
「討ち漏らしは任せる……荘吉」
それは、“背中を預ける”と同義。
「ああ、任されたぜ……大河」
交わされる、名を呼ぶ声が、二人を更に強く、繋ぐ。
一瞬のアイコンタクトと、ホラーの再度の強襲は同時であった。
全身が隆起し、古今東西あらゆるバケモノの姿をかたどった肉片が一斉に飛び掛る。
それら全てを刃が薙ぎ、弾丸が潰す。
しかし、攻めに転じようにも魍魎の壁は分厚く、あと一手に欠ける。
「あまり時間稼ぎも出来んな……」
魔戒剣を縦横に振りかざしながら、大河が呟く。
魔戒騎士は、その鎧の装着に制限がある。
99.9秒。それを過ぎれば、騎士は鎧に“喰われ”てしまうのだ。
「大河、離脱しろ」
と、背後から荘吉の声。それに呼応し、大河がその場を跳んで離れる。
-SKULL MAXIMUM=DRIVE-
スカルメモリを装填したマグナムから強烈なエネルギー弾が放たれる。
髑髏のヴィジョンがホラーを包み込んだ刹那、ホラーの身体が振動し、その肉体が徐々に崩壊を始めた。
『なんだぁ?』
「ガイアメモリの力が暴走している。人間だろうがホラーだろうが、“地球の記憶”なんてもんはでかすぎるんだ」
曰く、スカルの力を注ぎこんで“きっかけ”をあたえたらしいホラーの身体は、膨大なエネルギーを押さえ込めず、苦しげなうめき声を上げながら全身を崩れさせていく。
『大河、今だ!』
「ん……!」
鎧の装着時限が近づく中、大河がホラーに肉薄する。すれ違いざま、横一文字に金色の軌跡が閃き――
「人の恐怖を喰らう、貴様の陰我……」
俺が、断ち切る。
-つづく-
書いてる当人がびっくるするハイペースでの決着w
まぁ、どちらもプロフェッショナルですからねぇ。つえーつえー。
さて、いよいよこのシリーズもラストスパート。
エピローグ含め、あと2シーン分くらいで終わる予定です。
よし、やっぱ書ききっちゃおうw